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リグル 加入条件:ミスティアで会話 初期装備:キラーランス 初期能力 Lv クラス HP 力 魔力 技 速さ 幸運 守備 魔防 移動 武器レベル 11 ソシアルナイト 26 11 3 10 8 11 9 2 9 剣E 槍C 成長率(%)【試行回数100回】 HP 力 魔力 技 速さ 幸運 守備 魔防 27 33 25 21 22 45 29 4 ステータス上限 クラス HP 力 魔力 技 速さ 幸運 守備 魔防 パラディン 60 25 21 28 25 30 25 ? 特徴 なぜかレベルアップ時に魔力が上がるソシアルナイト。 これは個有能力としてウォームを装備できるため、魔力が上がるようになっている。 魔防もそれなりに上がるので魔導士対策キャラになれるかもしれない。 その分他の能力が伸びないので使いにくい。 頑張って育ててLv20でパラディンに転職すれば力と守備が人並みになって18章のチルノ説得用の出撃時にそれなりに活躍できる戦力になる。 ただレベルアップ時の成長が1ピンや無音が普通にありえるので相当運が絡む。 てつの槍を2本とちょっと使いきれば武器レベルAになってグラディウスが装備できるようになる。 マゾい人はどうぞ。 16章のリグルのすぐ近くにいる弓を持ったジェネラルを上手く誘導して 常に弓で囮キャラが狙われる環境を作ることができたら 安全にレベル上げができるようになる。(そこで槍Aにもできる) 22章でウォームを購入し、リグルに持たせればマップが広く迷路状になっている23章でシューターを潰したり、敵のウォーム持ちを倒したりと活躍できるかもしれない。 支援会話 チルノ (レベル2MAX時)
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ミスティア・ローレライ +1 ミスティア11スレ目 5 1スレ目 759 +2 ミスティア21スレ目 766 +3 ミスティア31スレ目 910 1スレ目 918 2スレ目 308 127 3スレ目 504 4スレ目 222 4スレ目 248 4スレ目 319-320 4スレ目 337-338 4スレ目 397-398 4スレ目 506-507 4スレ目 642-643 4スレ目 677 +4 ミスティア44スレ目 694 5スレ目 4 5スレ目 7 5スレ目 244 5スレ目 314 6スレ目 79 6スレ目 222 6スレ目 740 6スレ目 978 うpろだ233 うpろだ346 うpろだ415・416・417 +5 ミスティア5うpろだ423 うpろだ464 8スレ目 21 8スレ目 50・51 8スレ目 145 8スレ目 644 +6 ミスティア69スレ目 271 9スレ目 446 11スレ目 143 12スレ目 451 うpろだ832 12スレ目 318 12スレ目 861 うpろだ898 +7 ミスティア7うpろだ1031 うpろだ1033 うpろだ1337 +8 ミスティア8新ろだ2-215 Megalith 2010/10/23 +9 ミスティア9Megalith 2011/01/11 31スレ目 421(2011/02/14) Megalith 2012/01/02 Megalith 2012/05/07 Megalith 2016/02/03 +10 ミスティア10 +11 ミスティア11 +12 ミスティア12 +13 ミスティア13 +14 ミスティア14 +15 ミスティア15 長編 もうなにもきこえない(2) レス 1 32スレ目 86より後のレスはミスティア9以降にまとめ
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タイプ:虫/風 スキル:1.蟲を操る程度の能力(HPが1/4以下になると、虫属性のスペルの威力が1.2倍になります。) 2.永夜蟄居(受けるダメージが10%減少します。) HP 攻撃 防御 特攻 特防 速度 合計 リグル 115 110 85 60 80 80 530 ミスティア 105 95 80 105 70 75 530 ばつぐん(3倍) 岩 ばつぐん(2倍) 炎/雷/氷/風 いまひとつ(1/2) 虫 いまひとつ(1/3) 樹/闘 こうかなし 地 玉神楽でも珍しい虫メインのアタッカーでも、さらに珍しい虫物理アタッカー。 虫物理技を持ってるのはADを除いた紫系統とミスティア系統・とりのみで、 物理型と言えるのはDゆかりとNリグルの2体のみ。(他は両刀か特殊より) ただしリグルは種族値の秀でた所が無い、平均的なアタッカーなので過度な期待は禁止。 弱点は炎・風・雷・氷と岩重複の5つと、草単体レベルで厳しい。 耐性は虫と重複で闘・草、地面無効の4つ。 攻撃属性は虫・岩・炎・風の4つなので抜群が取れるのは、炎・樹・氷・闘・風・理・虫・闇・鋼の9タイプ。 余談だけど、とりとNリグルは相手が草タイプなら、もう一つのタイプが何でも 3倍以上で攻撃ができる貴重?なキャラだったりする。 スキル スキル1 蟲を操る程度の能力 HPが1/4以下になると、虫属性のスペルの威力が1.2倍になります。 おまけです。無いものと思ってください。 スキル2 永夜蟄居 受けるダメージが10%減少します。 耐久力の低いリグルにはありがたいですが、これ単体ではおまけに近いです。高火力相手では軽減しきれません。 運用 フルアタなのでアタッカー一択。相手に合わせて技を使い分けよう。 ただし耐性で受けられても、交代読みに失敗しても泣かない事。 耐久面は相手の火力が低ければ、3倍なら一発は耐える。 BP振り H あるなら嬉しい。けどもともと360あるのでお好みで。一応オススメ。 A 物理アタッカーなので基本64振りを推奨したい。 B 闘・闇相手に特化するなら有り。理・草相手はちょっと痛い。 C 特殊は一個だけなのでいらない。 D 理・草相手に特化するならこっち。 S 80は正直悩ましい。プレイスタイルに合わせてお好みで。 装備 火力UP系統 オススメ。できれば勇儀カード以上が欲しい。 状態異常回復 アタッカーなので攻撃できなければ物置。優先したい。 ダメージ軽減 これもオススメ。できれば聖で全攻撃25%カットしたい。 (H64で聖を装備すれば、C64振り・火力上昇なしのAうつほのギガフレアも一発は耐える) 速度上昇 スピードタイプで活用するなら有り。お好みで。 状態異常系 先制技があるので運に自信があればOK。 追加効果発動率上昇 命中ダウンや怯み、火傷があるので相手に合わせてお好みで。 得意なコダマ 耐久力の低い虫弱点のコダマ 言うに及ばす、先制一撃も(相手次第で)できます。 Aレミリア 闇は痛いけど闘は平気。相手に先制もないので、闘受けで後出ししても(急所がなければ)勝てます。 N又はDゆうぎ 相手のメインは押さえつつ弱点を付けます。ただし混乱したら、運次第。 苦手なコダマ 得意以外は大体苦手に近いですが、岩は筆頭。 鋼はメインが通らないので他に任せましょう。 めいりん系統は属性は有利でも読み合いになるので、苦手なら避けてください。 等倍バトルも基本禁止。フルアタだからチャンスを作りにくい。 相性のよいコダマ 水/地タイプ+一部の鋼タイプ お互いに弱点を補完できるので、居ると心強い。 追加効果発動率上昇スキル持ち バニラ技は少ないので相手次第では組ませたい。(怯みは全く警戒されてない) スペル スペル名 属性 分類 威力 命中 消費 詳細 リグル リグルキック 虫 物理 60 100 0 20%の確率で、相手を怯ませます。 初期 リトルバグ 虫 特殊 70 100 10 30%の確率で、相手の特防を1段階下げます。 15 地上の彗星 岩 物理 90 100 20 - 20 ファイヤフライフェノメノン 炎 物理 80 100 10 20%の確率で、相手を火傷させます。 30 ナイトバグストーム 風 物理 100 100 20 30%の確率で、相手の命中を1段階下げます。 40 地上の流星 虫 物理 90 100 25 先攻で攻撃できます。 50 リトルバグストーム 風 物理 70 100 5 20%の確率で、相手を怯ませます。 65 地上の恒星 虫 物理 120 85 40 30%の確率で、自分の攻撃が1段階上がります。 禁呪 スレ47目の205番より
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「今日は給料日でね・・・霊夢に飯奢ってやって・・・・そしたら家の支払い分が給料から引かれててさ」 「それは災難でしたねー」 此処は雀の屋台、雀といっても妖怪雀だが獲って喰われたりはしない 「だから今の俺にはこんな甘露煮を食べる金しかないわけだよ!あぁ、酒に酔えればどれだけ楽か」 「そうですねぇ」 先ほどから俺が愚痴を投げかけている彼女はミスティア・ローレライ( 「・・・さっきから生返事ばかりじゃ無いか、寂しくて泣いちゃうぞ」 「とりあえず周りを見て、私の忙しさを知ってください」 珍しく屋台はにぎわっており10人弱は客がいるようだ 切り株に座って甘露煮を食っているのは俺ぐらいなモンだ、皆楽しそうに酒に酔っている 「・・・八目鰻・・・蒲焼・・・大吟醸」 「あーもー五月蝿いですね!ブツブツ言ってないで手伝ってくださいよ」 「めどい、あーごめんなさいごめんなさい鳥目はもう懲りましたすいませんすいません」 「じゃあこれをあっちの長椅子のお客さんとこに持っていって」 「うぃ」 「はぁぁぁ疲れたましたー」 「ミスティア乙!」 「すいません手伝わせてしまって」 「謝るぐらいなら最初からもう鳥目はry」 「あまり物でよければ何か出しますよ?」 「すまんなー」 少しこげた蒲焼、ちょっと残った焼酎それと焼きおにぎり 「焼きおにぎりなんてあったか?」 「○○さんが前に食べたいって言ってたから・・・」 「おお!ミスティアが俺のためだけに作ってくれたおにぎり!」 「わざわざ口に出さないでください!」 照れて赤くなっているのか、酒のせいか、提燈のせいで赤く見えるのか 「そういえばお金ないって言う割にはしょっちゅう来ますよね」 「お前に会いに来てんだよ」 「へ?」 空気が凍るとはこの事か、○○は自分が言った事に少し後悔する 「え、その、それはどういう」 「ははは!冗談だよ、冗談!からかって悪かったな」 そう言って○○は席を立ちミスティアに背を向けようとした所で腕をつかまれた 「○○さん待ってください」 「ミスティア?」 「なんで私に優しくしてくれるんですか?何で私のところに来てくれるんですか?私はあなたを食べようとしたんですよ!?」 「そりゃ惚れちまったんだからしょうがないだろ?それに喰われかけたっても喰われてないんだから俺は気にしねぇ」 「○○さん・・・でも私」 「ああもう、鳥のくせにいつまでも昔のこと気にしてんじゃねぇよ!」 そう言って俺はミスティアの口を塞いだ 「んんっ!??」 ミスティアはこれといって抵抗はしなかった、だからそのまま強く、強く抱きしめた ずっとこのままでいられればと願いながら 8スレ目 21 ─────────────────────────────────────────────────────────── 居酒屋日誌 ○月狐日 営業場所を移動したので日誌を新しくした。 向こうで事故って幻想郷に迷い込み何冊目になるだろうか。 ここで独力で生きていく内にいつのまにか人間をやめていたので 年月の流れを感じにくくなってしまった。 まあ、人間だろうが妖怪だろうが俺は居酒屋をできるならなんでもいいんだが。 そんなことをいまさら考えてしまうのは、今日も店に九尾の狐が来店したからなのかもしれない。 向こうでもこの幻想郷でも九尾というのは妖怪でも強者の部類にはいる。 その九尾を式にするスキマ妖怪も存在するのだが 俺は昔話みたいに九尾の狐は恐ろしいものだと思ってた。 そんな風に考えていた時期が俺にもありました。 この狐なかなか愛嬌のあるお人で、初めて交わした会話は 「なかなかうまいお稲荷さんだ!隠し味はなんだ?」 である。 自分の式の寿司を頬張る姿を見て鼻血出している姿をみたら恐ろしさとか どこかに吹っ飛んでしまった。 今ではタメ口でお稲荷さん談義をする仲だ。 今日の用事は酒が欲しいとのこと。 なんでも新しい式を鍛えるために必要らしい、酔拳でもしこむつもりだろうか。 そういえば前々から聞きたかったことだがなぜ九尾の狐は店にある「百合・ゲラー」ブロマイドを見ようとはしないのか。 元いた世界では有名な超能力者なのだが、謎でしょうがない。 ○月鬱日 今日は屋台仲間のミスティアと一緒になった。 同じ屋台なので同じ場所になる可能性はあるが、最近その頻度が上がっているような気がする。 八目鰻の屋台と和食専門の屋台が並んでいるといろんな需要に答えられるので売り上げも 倍増になるので喜ばしいことではあるが。 そんな中一人の女性がミスティアの屋台に来た。 酒とツマミを頼んだ彼女はカウンターの端で鬱全開で飲み始めたのだが 鬱オーラに当てられたか他の客は次々帰ってしまった。 彼女のオーラで商売あがったりの俺らがほとほと困っていると今度は一人の男が来店した。 このオーラに慣れているのかは知らないが、彼が来た瞬間鬱オーラが少し緩和されたのはありがたかったので 邪魔にならないように奥に引っ込んだのだが、これがいけなかった。 その後しばらくするとミスティアが顔を赤くして俺の屋台に入ってきた。 何事かと聞くと 「さっきのお客さん達・・・き、きすしながらお酒飲んでるよ~。」 と涙目で訴えてきた。 一応様子を見に行ったのだが・・・日誌には描写し辛いので割愛しておこう。 とりあえず二人は泥酔していたのでお帰り願った。 今朝の新聞にその二人のことが載っていたのでミスティアと苦笑していた。 ○月@日 出会いというものは本当にわからないものだ。 今日は営業場所を白玉楼とよばれるお屋敷の近くに移したのだが、まずお客の多くが幽霊だということに驚いた。 なかには俺と同じ時代を生きたものもいたので久しぶりに人間時代を思い出しながらついついお客と酒を酌み交わしてしまった。 お昼をまわったころ、騒ぎを聞いたかこの屋敷の主人が来店した。 お供に半霊の庭師と人間の料理人が付いてきたがその料理人には見覚えがあった。 向こうも気づいたか2,3言葉を交わしたら確信。俺が人間のころ、まだ駆け出しの修行時代。 俺とそいつは同じ所で包丁を学び腕を磨いた。 才能はソイツのほうが有り俺より一年早く一人前になっちまった。 俺は悔しくてガムシャラに修行したもんだ、懐かしいな。 ソイツが行方不明になったのを知ったのは俺が晴れて一人前になり店を構えるときだった。 神隠しと噂にもなったが75日終わるころには皆忘れちまった。 俺は目標を失って放浪、そして事故に巻き込まれた。まあその経緯でここにいるんだが。 久しぶりの再会に屋敷のお嬢も庭師もほっといて話し込んじまった。 あとでお嬢様がふくれっ面したらしい。こんないい職場で働いているんだ、いい気味だ。 予断だが昔からの癖はいまだ健在らしかった。 白玉楼の厨房に案内されたときだ、屋台を同じ場所にしたミスティアが俺のことを聞いたらしく厨房まで来たんだが 「夜雀が厨房に入るなど禁止ーーーーーーーーーー!!!!!!厨房はいつも清潔でなくてはならなーーーーーーい!!!!!11111」 と怒鳴ってしまった。 さすがにミスティアは同業者なので大丈夫と説得しようとしたのだが止まることもなく結果は二人して惨敗。 あいかわらず厨房では無類の強さを誇っていた。 クソッ、屋台ならあいつにも勝てるのだがなぁ、とミスティアに愚痴ったら笑われてしまった。 ○月山田 今日は珍しく一人での営業だった。 ミスティアには鰻の仕入れで一緒にいけないと断りまでいれられたので、 余計に何か寂しい気持ちがした一日だった気がする。 昼過ぎに閻魔様が来店した。 人間から妖怪になった俺は初めて閻魔様が来店したと聞いたときはは何か罰でも下るのか、と 内心びくびくしていたが別にどうこうするつもりはないと言っていたのを覚えている。 いつもは部下の死神といっしょにいるはずなんだが、と思考したがこっちもいつもと違い 一人だったのでちょっとだけ仲間意識が芽生えていた。 ただ、今日の閻魔様はかなり違っていた。 いきなりうちの店の一番度数が高い日本酒を頼んで一気にあおりだして 「う、ううっ…あの二人っ!別に、私だって好きで一人身やってるわけじゃないというのに…」 と愚痴りだしてしまった。 これはただ事ではないと思って話し相手になったんだが、なんのことはない 部下に先を越されたらしい。 その後も延々と 「人の目の前でイチャついちゃってさ・・・」「私だって恋人はいるんです!でも同業者だからいつもは会えないだけなんです!」 等々聞かされ続けた。 それから閉店時刻まで飲み続けてふらふらになりながら帰っていった。 願わくば閻魔様の恋人よ、とっととくっついてくれ頼むから。 泥酔閻魔は精神的に疲れる。 ○月雀日 いつも通りミスティアと営業。 最近はほぼ毎日いっしょにいる気がする。 朝、目が覚めたら隣の屋台からいい匂いがする。 ミスティアが 「朝食を作ったから一緒に食べない?」 と誘ってきた。ミスティアの飯はうまかった。 昼、開店時間ちょっと前。 仕込みの仕上げでミスティアが指を切った。 焦っていたのかわたわたと指を振り回していたのですぐに指を舐めてやった。 すぐに血は止まったのだがミスティアが今度は顔を真っ赤にして固まってしまった。 はて、俺はなんか失敗でもしたのだろうか。 夜、閉店間際。 本日も売り上げ上々でそろそろ仕入れをしなければと思う。 少し酒が余ったので俺とミスティアで飲むことにした。 俺はあまり酒に酔わないタイプなのだがミスティアが酔いだして 「○○さんはいつも鈍感です。なんで気づいてくれないんで・・・しょう・・・。」 と俺のことで愚痴り出した。 昔から周りから鈍い鈍いと言われるがまさかミスティアにまでいわれるとは思っていなかった。ちょっとショック。 ミスティアは酒が回ったか熟睡していた。 そのミスティアの頭を膝に乗っけて考え事。 つまりミスティアは、俺の料理が食べたいとのことだな。 と、さっきの愚痴られの答えを出してみた。ふむ、明日は俺が手料理を振舞ってやろう。 これからもよろしくな、相棒。 8スレ目 50・51 ─────────────────────────────────────────────────────────── ♪恋心 君へ差し出した言葉 今は答えいらないから ただとっていて ぼくを動かした君の魅力焼き付けて 夢で終わらないように願い続けた町の中で ミスティアー!今は借り物の歌でしか言えない俺だけど いつか自分の言葉でちゃんと言うから、そのときには答えを聞かせてほしいー! 8スレ目 145 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「フェッフェッフェフェイエー、フェフェフェイエー、エー、レブレッキン」 「相変わらずひどい歌ねー」 「こんばんわ、愛しい夜雀嬢」 「なんでいっつもここまで来て歌うのよ」 「里だと妙な歌歌うなって怒られて」 「だからって屋台の前で歌うのもどうなのよ、つばが飛ぶじゃない」 「ごみぇん、それよりみすちーに会いたくて」 「はいはい、わかったから早く手伝って」 「本当だってばー」 「わかったわかった」 「俺客扱いされてねー」 歌って本当にいいものですよね 8スレ目 644 ─────────────────────────────────────────────────────────── よぉ、久しぶりだな、神社での宴会以来か。景気はどうだ? 俺のところか? おかげさまで、相も変わらず繁盛させてもらってるよ、また今度嫁さんと一緒に飲みに来い。 しっかし、夏もそろそろ終わりだってのに、まだまだ暑いな。お前ん所は大丈夫か? ん、嫁さんがバテ気味なのか。お前が無理させすぎてるんじゃないか? 何がって、そりゃ夜の生活に決まってるだろうが(ニヤニヤ よし、悪かった、その拳を下ろしてくれ。…ったく、短気なのは相変わらずだな。 詫びといっては何だが、こいつをやるよ。 ん? 中身は鰻だ。スタミナ満点、これで精力付けて夜に挑めば嫁さんも大満ぞk …何も、殴ることは無いだろう。 そんなことよりお前の方こそどうなのかって? ははは、繁盛してるって所から察してくれ、二人で元気に切り盛りしてるよ。あいつの歌も一日中響いてるしな。 それじゃぁそろそろ俺は行くよ。仕入れの最中でな、あまり遅くなるとまたどやされちまう。 絶対飲みに来いよ? 約束だからな。 9スレ目 271 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今日も今日とて、みすちーは俺の風呂の中でリサイタル。 相変わらず艶めかしくしなやかな両脚とか バスタオルに覆われた膨らみかけの胸とか 少女らしい少し痩せた丸っこい両肩と色っぽい項とか…… ……要するにみすちーの姿全部、未だに直視できないけれど。 そして、俺の家の風呂の中でみすちーが声を張り上げて歌っていた。 「―――― 赤く燃え 見事に散って 星になった命よ~♪ 時を越え その名前を 胸に刻もう……Just Forever~♪」 「おおおお! すごい! すごく熱いよみすちー! 熱すぎる!!」 みすちーはすごい。 歌声が奇麗なことは言わずもがなだが、歌を歌うときには必ず曲のイメージに声を合わせてくる。 ロックを歌うときは、激しく強く荒々しく。 しっとりしたラブソングを歌うときは、優しく切なく。 「みすちーは やっぱりすごいな……! ってか、どんな曲歌っても、曲のイメージぴったりに歌えるってのがすごい!」 「えへへ……曲を選ばないのがプロってものよ♪」 「いやいやみすちー! プロよりもすごいんじゃないかってくらい上手かったよ! 」 「そ、そうかな……」 「そうだって! まださっきの曲の余韻が残っててドキドキしてるしさ!」 「も、もう……口が上手いんだから……」 胸の前で、曲げた両手の人差し指を互いにいじらせながら 僅かに俯いた顔、その色はわずかに赤く染まっている。 「……もしかして、みすちー……照れてるの?」 「え? あ、あの……その……」 焦ってる……確定だ。 みすちーってば照れちゃってるよ。 その時、俺の心に悪戯心が芽生えた。 もっと照れるみすちーが見たいなー……と。 「いや、謙遜することないよ。まるで、ローレライの歌を聞いてるかのように歌に引き込まれちゃうしさ」 「そ、そんなに褒めないでよぉ……」 彼女は持参していたミニタオルを両手で持ち、口元をそれで隠す。 頬は先ほどよりも紅く染まっていた。 子犬のような愛らしい瞳が、俺を上目遣いで見上げている。 背中の羽をパタパタと羽ばたかせ、耳が僅かにぴょこぴょこ動いている。 「みすちーの歌は幻想郷一だね。いや、外の世界でも頂点に立てると思うよ」 「や、やだやだぁ……そんなに褒めちゃダメだってばぁ…!」 背中の羽の動きが“パタパタパタ…!”でなく、“バタバタバタバタ!!”と速くなる。 耳がさらなる速度でにぴょこぴょこ動き、ミニタオルを両手に持ったまま顔全体を隠す。 きっと、彼女の頬はこれ以上ないくらい紅く染まっているのだろう。 ……ヤバイ。 止められない。 みすちーって……時々、思わず襲ってしまいたくなるくらい ものすごく可愛い時がある。 今がまさにそれだ。 照れるみすちーが可愛すぎる、 もっと照れさせたい もっと恥ずかしがらせたい もっともっともっと…… 「すごく安らぐ歌声だもん…… い つ ま で も ず っ と 聞 い て い た い な」 「えっ……?」 ―――― いつまでも、ずっとって……ずっと、一緒に……? 「……――――~~~~ッ!!!」 ボ ン ! ! 「ちょ、ちょっと! みすちー大丈夫か!? ってか、また湯当たり!?」 「はぅぅ~……」 ―――― ああ…私、幸せ……もう、死んじゃってもいい……… 夜雀の意識は幸せな色に包まれたまま、薄れていった…… 近くにいすぎるために自分の淡い想いに気づかない青年と 熱い想いを胸に秘めながらも、自分から告白することができない恋に臆病な少女。 2人は、まだまだ恋愛初心者。 ……その割に互いに結構大胆だったりもするのだがw 9スレ目 446 ─────────────────────────────────────────────────────────── 草木も眠る丑三つ時。 それは闇と妖怪が支配する時刻。 だがその中で、それを照らす光のような歌声が響いていた。 声の主は夜雀、ミスティア・ローレライ。 その歌声は流麗。 それでいてどこか温かさを感じさせるものだった。 少女は歌う。 その身の幸せを。心の内の喜びを。そして溢れんばかりの愛を。 それを木陰で聞くは一人の青年。 彼は目をつむり、彼女の歌を一心に聞く。 今この場は他ならぬ彼のためのコンサート会場。 やがて想いと旋律は最高潮を迎え、歌は終焉へと至る。 一瞬の静寂の後に拍手の音が響き渡った。 「どうかな? 今度の新曲?」 少女は問う。 期待と不安の入り混じった声で。 「うん、すごくいいね。何て言うか胸にジーンて来た」 青年は答える。 その感じたものを素直に。 「えへへ、ありがと」 顔を赤らめ、少し照れた様子で笑う。 二人にとってこのやりとりはいつものこと。 しかし違ったのは青年がある疑問を口にしたことである。 「けど、何かいつもよりしっとりとした歌だね。今度の歌のテーマって何なの?」 それに対し、少女は体を少しこわばらせる。 そして息を大きく吸い、それを大きく吐き出す。 その顔は真剣で、決意に満ち溢れていた。 「この歌のテーマはね……『あなた』なの」 「え? それってどういう……」 少女は目を閉じ、自分の胸に両手を当てる。 「私はあなたのことが好きです」 少女は朗々と言葉を紡ぎ出す。 その想いと共に。 「あなたに会えて良かった。あなたの笑顔を見てると私も嬉しくなれた。 あなたが傍にいないとどうしようもなく寂しくなった。そして私は……あなたと居るだけで幸せだった」 再び目を開け、その視線を青年へと向ける。 「だから……私とずっと居てください」 少女の突然の告白に青年は目を見開いた。 だがその表情はすぐに元の穏やかな微笑へと戻る。 「俺もミスティアのことが好きだよ」 散歩にでも出かけるような気軽さで告げる。 なぜなら、既に彼にとっては彼女と共に在る世界こそが当たり前だから。 「歌う時の真剣な表情が大好きだ。屋台をするときの楽しそうな顔も好きだ。俺は君と君の歌が大好きだ」 だから彼女の願いに対する答えはたった一つしかありえない。 「俺は君と一緒に居たい」 少女の手を引き、その小さな体を抱きしめる。 それは強く抱きしめれば壊れそうで、それでいて何にも勝る温かな強さも持っていた。 少女もまた青年の背中に手を回し、その温もりを感じる。 いつも傍にあった大切な温もりを。 そして二人は歌い続ける。 彼らの大切な想いを乗せて。 いつまでも。いつまでも。 11スレ目 143 ─────────────────────────────────────────────────────────── 食べ物が無い! この部屋にはぞっとするほどに、口に入れられるものが無いのだ。 おまけに、扉には鍵がかかり、目の前には無表情かつ無愛想な男が立ちふさがり、あ、つまり○○なんですけど。 他人行儀な言い方してみたけど結局○○なんですけど。 とにかくそいつが無表情かつ無愛想、更に無言で立ちふさがり、見下ろす両の目。 覗き込んだらそのまま何処か、この世界の何処か、もしくはすぐ傍の外の深い夜の空、それの色が透けて見えそうな、暗い色。夜を含む赤。濃い死んだ色。 好きだったものを飽きたからと無邪気に殺して、後から取り返しのつかない過ちに怯えだす、幼い子供が血溜りに見る色の瞳。 絶望を満遍なく、多量に含む色だ。 手が持ち上がらないから、視線だけでじっと見る。 座り込んだ床が冷たいのは、夏だというのにこの部屋が、病的に冷房が効いて何処にも熱がなく、生きているものの私の中にすら、温度が無いくらいだから。 触れていないから解らないけど、いつもいつも青白い、この部屋と同じく病的な空気を孕んでいる瞳の彼も、同等に冷たいだろうと安易に予想できた。 肌が寒いし、お腹は空っぽだし、全部が全部空虚じみていて、頭が上手く回らない。 腕や足に力が入らないのは、彼の瞳に住み着く悪魔、もしくは彼そのものが、私の事を飲み込もうと企んでいるから? この使い勝手の悪い生白い手足は、恐怖に竦んでいるのだろうか。 食べ物の無い空間で始まること、それは最後、共食いだ。 強い方が生き残り、次の世代に駒を進めるため。 弱いものは食われ、血肉になるのだ。弱肉強食と言えば早いか。 なんとも血沸き肉躍る話だが、自分が弱いほう、血肉にならざるを得ないほうでは、話にならない。 私はまだ飲み込まれたくないし、自分を生かすのに精一杯なのだから、いくら愛する男といえど血肉なんぞになるのは真っ平御免である。 私は漠然じゃない、しっかりとした生命の危機、不安から、曖昧な笑顔を浮かべてそっと後ずさる。 後ずさりながら、何回か瞬きをする。 すると、いつの間にか彼は私の背後に回りこんでいて、無表情かつ無愛想かつ、更に無言で、私の首と胸の中間辺りに、腕を回す。 緩くだけど力が入って、筋張って太い、いかにも男らしい、強者らしい、勝利者らしい腕がぐっと私を押さえつけて捕まえる。 自分の後頭部が彼の胸の辺りに当たっていることに気付いて、驚いた。 心臓の鼓動は当然、私までは聞こえないけど、呼吸の度、微かに上下している。本当に、微かに。確かに。 ああこの人は生きている、と改めて思って、やはり私はこれから彼に食べられるのだろう。と半ば諦めのように、だけど微かに恍惚して、思った。 やたらと大きい手のひらが私の肩を撫でる。 ぎょっとするほどに長い指先が喉元に触れる。 きちんと切られているのに、どうしてこの爪は、こんなにも大きいのか。 飴玉のように艶々と光るそれは、食べられる側の私なのに、うっかり舐めてみたいと思ってしまうほど、極上に素晴らしい代物だった。 食べる側というのは、いつも必ず何処か、あるいは全てが、食べられる側より優れていて、彼らの死に際にうっとりと憧れを抱かせる。 肉食獣なら牙。巨大な魚類なら輝く鱗。彼なら、美しい爪。 本音を言うなら、その全部を。 私はセオリー通り、憧れて、うっとりと目を細める。物欲しそうに。 だって、出来たら、力があれば、私はその爪をひとつひとつ唾液を絡めて舐め上げて、絶望の象徴のようなその瞳を、嫌悪やら、憎悪やら、運が爆発的に良ければ、快楽とかに染めてしまいたかったのだ。 こんな寒さと飢餓に震える何も出来ない今の私では、無理だけれど。 ああ、この部屋には食べ物が無い。 なんにも、無い。 扉には鍵がかかっていて、私の全ては彼の手の中で、胃に詰め込む食べ物を求め里まで走るには、少々障害が多すぎる。 仕方が無いから私は、彼に憧れたままで、血肉に成ろうかと、思います。 私は妖怪だから、優しく上手くしてくれれば生き返れるかもしれないのだし。 鋭い歯が、近づいてくる。 世界中の魅力を独り占めしたような、緻密な手のひらが服を破る。 肩紐が落ちて、帽子が落ちて、髪の毛が舞って、頬にかかった。 どうか、私の周りの皆様、先立つ不幸をお許しください。 一時的とはいえ、私は、愛する男の血肉になるしかないようです。 何故なら、この部屋には食べ物が無いし、鍵はかかっているし、○○は私の首を撫でて、それはもう愛おしげに撫でて、たっぷりと欲を含んだため息を吐くのです。 これはもう、咀嚼されるしかないでしょう。 まさかあのしつこい庭師より大食らいの亡霊より先に、自分の愛する人に食べられるとは思わなかったけれど。 私は、弱者です。弱肉強食で言ったら、肉なのです。 ああ、この部屋に食べ物があれば! そうしたら私も○○も、お腹がいっぱいで、少しは幸せに笑えたでしょう。 私は生白く、彼は絶望の色した瞳で。絵画のよう。もう、それは叶わないけれど。 彼の瞳と同じ、絶望を瞼の裏で見ながら、朦朧とした体を彼に任せていた。 そのとき。 首の後ろに押し当てられた柔らかな唇の感触と、「ミスティア」と微かに掠れた、この部屋で唯一熱を持った声で私を呼ぶ彼に気付いて、私は初めて知る。 食欲を別の欲で満たす方法を。 (乗り切る方法は愛/頂きますなの?頂かれますなの?) 12スレ目 451 うpろだ832 ─────────────────────────────────────────────────────────── 幻想郷に流れ着いて今年で6年目、ここでの生活もすっかり慣れ友達もできた。 しかし、人間以外の友達がほとんどだが…。 〇〇「今日も特にする事無いなぁ。」 普段特に目的意識もなくそこはかとなく生活する俺。NEET予備軍 or NEETである。 と、そこへ現われた一人の妖怪。 ミスティア「あ、いたいたぁ。やっぱりここね。」 〇〇「やっぱりってなんだよ。」 彼女はミスティア・ローレライ、知り合って3、4年になる大の仲良しだ。 ミ「〇〇はいつも家にいるでしょ、他のとこに居ることなんて滅多に見ないからねぇ。」 〇〇「まぁ、否定はしない。で、今日は何の用なんだ?」 ミ「へへ、蒲焼屋の新メニュー試食会よ。ちょっとコンロ持ってきてよ。」 〇〇「炭火じゃなくていいのか?」 ミ「試食だから堅い事言わないの。」 台所からカセットコンロと金網を持ってきてテーブルに置く。するとミスティアは持ってきた籠から商売道具一式を出し始めた。 〇〇「言葉の割には本格的だな。‥‥って、それはなんだ。」 ミ「えへへ、この前人間が置いてったお酒よ。すごく高いんだって。」 〇〇「じゃあなんだ、飲み会でもするのか?」 ミ「もちろんよぉ。だって今日は〇〇と会って丁度4年目よ。ま、試食もやるけどねぇ♪」 〇〇「なんだ、覚えてたのか。」 ミ「あらあら、〇〇も覚えてたとは関心関心。うれしいじゃないの。」 〇〇「去年はやったっけ?」 ミ「去年は〇〇が先に酔い潰れておしまいよ。今年は最後まで残っててよね。」 〇〇「最後っていつまでだよ。」 会話をしながらもミスティアは手際よく下拵えしている。流石、商売慣れしてるなぁ。 ミ「まずは乾杯ね、私の自慢の八目鰻。炭火じゃなくたっていけるんだから。」 〇〇「ん、じゃぁかんぱ~い。」 いつ食べてもミスティアの蒲焼はうまい。たとえガス焼きでも他の人が焼いた蒲焼は食べられそうもないくらいだ。 〇〇「相変わらずうまい!どんどん焼いちゃって!」 ミ「最初からそんなに飛ばしちゃっていいの?最後までもたないかもよ?」 〇〇「いいの、ミスティアが焼いてくれてるんだもん。」 ミ「あら、もう酔ってきた?じゃあ、次は新作よ。」 〇〇「‥‥‥‥なにそれ。」 ミ「カエル。」 〇〇「それは客に出していいのか!?」 ミ「ちゃんと処理してあるわよ。つべこべ言わず食べなさい!」 〇〇「う‥‥むぐむぐ‥‥‥ん!割とイケるかも!」 ミ「ほんと?」 〇〇「まぁ、ミスティアが焼いたからかな。」 ミ「絶対酔ってるわね、でも、ま、ありがとねぇ♪」 その後も新作を食べ続けた。 牛肉、豚肉、魚、昆虫、果ては野菜まで。蒲焼にできるのかと思うような物まで器用に焼いていった。 〇〇「よくもまぁ、こんなものまで‥‥。」 ミ「や、焼ければ大体、蒲焼にできるわよぉ。」 二人ともフラフラに酔いながら作り置きしてた蒲焼を食べながら杯を交わす。ミスティアの持ってきたお酒が無くなったら〇〇の家にあるものを持ってきて終わる事無く飲み続けていた。 ミ「それにしても〇〇~、お酒強くなったわねぇ。」 〇〇「俺が先に潰れたらミスティア一人になっちゃうだろ?」 ミ「な、何言ってんの!ばか‥‥。」 〇〇「あれ?顔、さっきより赤くなった?」 ミ「お酒の‥‥所為でしょ!」 〇〇「そっか、無理するなよぉ。布団敷いとくから今日は泊まっていきなよ。いくらミスティアでもそんなに酔ってたら帰れないだろ。」 ミ「‥‥‥そのつもりで来たから…。」 〇〇「ん、何か言った?」 ミ「な、何でもないわよ!飲み会なんだから最初から泊まるつもりだっただけよ!」 〇〇「強引な、とりあえず風呂作ってくるよ。」 ま、今日は初めから泊まってもらうつもりだったけど‥‥。 そう、何を隠そう俺はミスティアの事が好きなんだ。無邪気で頑張り屋、仕事中は普段とは違った魅力があり、みんなは気付いてないけど周囲への気配りも忘れない。 一緒に居る時間が積み重なるほどこの想いも深くなっていく。 〇〇「ほら、できたよ。先に入っちゃいなよ。」 ミ「覗かないでよねぇ♪」 〇〇「できたらね。」 ミ「まったくぅ。」 ふふ、可愛いなぁ。こんな可愛い子と今夜一緒に寝るなんて。寝顔はもっと可愛いのかなぁ。 そんな事を考えてたらいつのまにかミスティアが風呂を出ていた。 ミ「覗きに来なかったのねぇ、サービスショットで待ってたのに♪」 〇〇「ちょっと酔いすぎじゃないか、ほら、早く寝ちゃいなよ。」 ミ「じゃあ、待ってるから早くねぇ♪ふふふ…♪」 今日は酔い潰れないように押さえておいたが代わりにミスティアが飲み過ぎたみたいだ。こんなミスティアは初めてみる。 でも、たまにはこんなのも‥‥‥。 手早く入浴を済ませミスティアのもとへ向かう。 ミ「あ、きたきた!はい、こっちこっちぃ。」 〇〇「俺は自分の布団があるから一人で寝なさい。」 ミ「冷たいのねぇ、一日くらいいいじゃないのぉ♪」 〇〇「それもそうだな。」 ミ「切り替え早ッ!〇〇こそ酔ってるじゃないの。」 〇〇「ミスティアほどは酔ってないよ。」 なんだ?今日のミスティアは?やけに誘ってくるけどまさかそんな事は‥‥。 とりあえずミスティアの布団に入る。 〇〇「酒臭い‥‥。」 ミ「お互い様ぁ♪」 〇〇「なぁ、今日はどうしたんだよ。そんなに酔っ払って。」 ミ「そうねぇ、じゃあ最初に言っとこうかしら。私と付き合ってぇ♪」 〇〇「はいはい‥‥、ってなんだってぇ!」 ミ「えへへ。だから付き合ってほしいのよぉ♪」 〇〇「やっぱり酔いすぎだ。」 ミ「ちょっとぉ。好きだから付き合いたいってのは自然の道理でしょう?それともな~に?私じゃ不満でもぉ?」 〇〇「不満はないがこういうのは酔ってないときにするもんだろ。」 ミ「酔ってなかったら〇〇に言わせるまでずっと付きまとうつもりだったのよ~。でも、お酒の力借りないと〇〇も言わなそうだけどねぇ♪」 〇〇「今酒の力借りてるのはミスティアでしょ。ミスティアだって酒の力借りないと言えなかったんだろ?」 ミ「むぅ、言ったわねぇ!何の為に私が自腹で試食会なんて開いたと思ってんのよぉ!〇〇は食べるだけ食べて飲むだけ飲んで、それで終わり~?」 〇〇「それはミスティアも同じだろ。それにもうすこしでミスティアの誕生日だろ?それまで待ってれば俺の方から行ったのに。」 ミ「ちょ、ちょっと、今、後半なんて言ったのよぉ!〇〇の方から~?」 〇〇「あ、あぁ。俺もミスティアの事好きだからな。」 ミ「え!!!!‥‥‥‥‥‥。」 急に黙り込んでしまったミスティア。俺の方もまさかの告白で緊張してるがそこは酒力でカバーする。 〇〇「どうなんだ、付き合いたいのか?」 ミ「〇〇はどうなのよ。」 〇〇「俺は付き合いたいよ。ミスティアの事好きだからな。」 ミ「‥‥‥‥‥。」 〇〇「ん、どうした?」 ミ「‥‥‥‥すやすや。」 〇〇「大事なところで寝るなよ。まぁ、今日はミスティアがすごく頑張ってたからな、続きはまた明日って事で。おやすみ。」 ミスティアのほっぺたをぷにぷにしながら眠りについた。やわらかくて気持ちいい。 頬を伝う涙は見なかったことにしてあげよう。 翌朝 〇〇「う~、ちょっと頭痛いかな。」 ミ「大丈夫?飲み過ぎるからよ。」 〇〇「ミスティアの方が飲んでただろ?」 ミ「普段から飲んでる量が違うのよ。」 〇〇「いつもあんなに飲んでるの?それより昨日のことだけど…。」 ミ「え、な、何よ、昨日の事って。」 〇〇「知らんぷりしても顔は正直だぞ、もう赤くなってきたよ。」 ミ「むぅ、仕方ないわね。じゃあ、昨日のことが何?」 〇〇「俺からも頼む、付き合ってくれ。」 ミ「‥‥‥。一つだけ、私と〇〇両方に条件付けていい?」 〇〇「何?」 ミ「別れないこと」 〇〇「それじゃなんか縁起が悪いよ。そういう時はこう言うの。一生一緒に居ることって。」 ミ「〇〇!」 〇〇「ミスティア!」 それ以上の言葉は必要なかった。抱き合って触れ合う肌からお互いの気持ちは伝わっていた。 しばらくして蒲焼屋の店員が一人増えたという噂が流れだした。 12スレ目 318 ─────────────────────────────────────────────────────────── 青年の目の前に巨大な獣が迫る。 獣は腹が減っているのか牙を剥き出しにして、青年に襲いかかろうとしていた。 「く……そぉ!」 「グォォォォォォォ!!」 対し、青年は尻餅をついたまま追い詰められている。 獣の咆哮が響き渡り、青年は恐怖に身を震わせ、瞳を閉じた。 そのまま、青年の人生は終わるはずだったが―――― 「ギャアアアアアアァァゥ!!」 ズゥゥゥゥ………ン!! ――――その前に、獣の人生が終わるほうが早かったようだ。 獣は突如として出現した光の弾に貫かれて、断末魔の咆哮を上げながら絶命する。 「大丈夫? 怪我はない、○○?」 恐怖に歪んでいた青年の顔が、この上なく安堵に緩んだ。 それも当然だ。青年の心強い親友が助けに来てくれたのだから。 「助かったよ……ありがとう、みすちー」 ・ ・ ・ 「にしても、早いもんだよね。幻想郷に来てから もう1年かぁ……」 宵闇の腹ペコお化けに襲われていたミスティアを、○○が助けたのが慣れ染め。 それ以来、この二人は種族こそ違うものの、無二の親友として付き合っていた。 「うふふ……思い出すわね、あなたが初めて私を助けてくれたこと――――」 そして、二人は しばし過去の逢瀬を肴に話をふくらませる。 けれど、楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまうもの。 いつの間にか太陽は西の空に傾き、周囲は闇に覆われつつあった。 「ん……もうこんな時間か。みすちー、今日はお仕事?」 「え? ええ……あ、あの……」 「ん、どうしたの?」 「あの……今日はちょっと忙しくなりそうなんだけど……もし、よかったら――――」 「待った」 「え?」 「皆まで言うなって。水臭いじゃないか」 皆まで言わずとも、○○はミスティアの意図を悟ることができた。 今夜は『忙しくなりそうだから助けてほしい』……というミスティアの意思を汲み取る。 それを断るほど、○○は友達甲斐の無い男では無かった。 「……あ、ありがとう」 「おう、なんでも御座れだ」 「それじゃあ、早速行こう?」 ○○はしゃがみこみ、万歳の要領で両手を頭の上にあげる。 ミスティアは、その手を掴み、翼を羽ばたかせた。 ふわっ―――― ミスティアの身体が、次いで○○の身体が宙に浮く。 普通の人間である○○は空を飛ぶことができないので、屋台のあるミスティアの家まで連れて行ってもらうのだ。 木々の高みを超え、視界が緑から赤に染まる。 沈みゆく夕日が眩しい。 美しい景色を眺めながら、○○はしみじみ考えていた。 ―――― 幻想郷に来てよかった ここは現代社会ほど便利な場所では無い。 けれど、それを補って余りある色々な魅力がある。 なによりも、生涯の親友とも言えるミスティアにも会えたことは、○○にとって人生最高の幸運だった。 けれど、そのことは照れくさいので、ミスティアには言わない。 いや、言わなくてもミスティアもわかっているだろう。 「そういえばさ、みすちー 最近 歌いに来ないよね?」 「え? あ……うん……ちょ、ちょっと……ね」 「どうしたの? 顔真っ赤だよ?」 「な、なんでも無いよ!」 「? ……ヘンなみすちー」 そう長い時間も経たず、二人はミスティアの家に着く。 小さな洞窟の側に建てられた家だ。 ミスティアは、○○を洞窟――――もとい屋台が入っている倉庫の側に下ろす。 「じゃあ、俺は屋台をいつもの場所に出してくるわ」 「う、うん……」 屋台を手伝うのも、週に数回――――このような力仕事はもはやお手のものになっていた。 ミスティアが家から食材を用意している最中に、○○は倉庫から屋台を出す。 大きめの屋台をえっちらおっちら洞窟の外に運んで行くと、ミスティアが食材を用意して待っていた。 「そ、それじゃ始めようかしら……」 「おう」 食材を屋台の上に置くと、ミスティアは一枚の板を屋台に立てかけた。 その板に描かれてある文字を見て、○○は首を傾げる。 「あれ、『貸し切り』?」 「そ、そうよ」 これまで、幾度となくミスティアの屋台を手伝ってきたが、今までに貸し切りになったことは一度も無い。 ミスティアの屋台を貸し切る者が誰なの、少し興味があった。 「へー、客は誰よ?」 「…………」 「? ……みすちー、どうしたの?」 ミスティアは俯きがちに、黙り込んでしまう。 外面は、ただ頬を赤く染めているだけだが、彼女の内心は大喧噪を引き起こしていた。 (言え……言うのよ、みすちー! 大丈夫! きっとうまくいくわ……! 今日こそ、この進展の無い関係から、大きな一歩を踏み出すんだから――――!!) 「……た」 「え?」 しばらく、沈黙した後―――― ミスティアは、強く絞り出すように呟いた。 「あ、あなた……」 再び沈黙が流れる。 今度は長い沈黙。 ○○には、ミスティアの意図がさっぱりわからない。 それも当然だろう。 手伝ってと言われたのに、客が自分自身などとは お釈迦様も想像できないだろう。 「………???」 今、何が起こっているのか、頭を抱えながら○○は考えて―――― ああそうか、聴き間違いか そうか、そうだろ、そうに違いない。 いやっはっは、ダメだなぁ俺の耳も―――― 「き、今日は、あなたの貸切りだよ……」 「へ?」 違った、聞き間違いではない。 だが、理解ができない。 今日は、○○の誕生日でもない。 ミスティアが○○と出会ってから、一周年の記念日は来週だ。 貸し切りになる理由がわからない。 「いや……でもさっき手伝ってって……」 「て、手伝ってもらうの……私の恋心を……ぁぅぅ……」 可愛らしく、俯きながら頬を染めるミスティア。 ○○の貸切である理由を、恥ずかしさから最後まで告げることができない。 この時点に至れば、たいていの者にはミスティアが○○に抱く感情がどのようなものかは理解できたであろう。 けれど、○○はそれに気付けない。 何故か? ○○が“ウルトラ”の上に“超”が付くほどの超ウルトラ鈍感青年だったからだ。 「え? ごめん、聞こえなかった。もう一回言ってくれないかな?」 「だから……その……あのね、○○」 「うん」 「貴方……好きな人って……いる?」 「好きな人? いるよ。みすちー」 「えっ……」 ミスティアは喜色を伴った声を漏らす。 そんな彼女を、○○は―――― 「無二の親友だもん。当然じゃないか」 ――――即 叩き落とした。 全く気付いていないあたり、もはや神が与えた才能と言わざるを得ない。 ミスティアの怒りのボルテージがどんどんと上がってくる。 「ああもう……そうじゃなくて……!」 「?」 「だから! えっと……好きって言うのは、そうじゃなくて!! その……」 今までに、ミスティアはそれとなくアプローチをしてきた。 否、幾度となく積極的の極みとも言えるアプローチまでしてきた。 一緒に風呂に入り、背中を流し ―――― 湯当たりするまで○○の為に歌った。 なのに、全く○○は気付かない。 「うーん、ごめん、みすちーの言いたいことが 良くわかんないや……もっと、わかりやすく言ってくれないか?」 ―――― プツン さすがのミスティアにも我慢の限界が訪れた。 「もうっ! もう! もう! もう!! どこまで鈍感なのよぉ!!」 「え、え?」 けれど、○○は自分がミスティアを怒らせてしまった張本人だと気付いていない。 そもそも、鈍感と言われて気づくくらいなら苦労は無い。 いきなり怒りだしたミスティアに、狼狽しながら混乱しているのがいい証拠だ。 「いい!? 一度しか言わないからよく聞いて!」 「え? あ、うん」 「私が! 私がしょっちゅう あなたの家に行っていたのも!」 ぶん! 腕を振りながら、ミスティアは○○に力説する。 「一緒にお風呂に入ったのも! 歌を歌ってあげたのも!!」 ぶんっ! ぶんっ!! 腕をぶんぶん振りながら、力の限り叫ぶ。 「それもこれも! 全部! 全部ッ…!! 貴方のことが! 好きだからに決まっているじゃない!!」 怒りと羞恥に頬を紅く染めて 目の端に涙を浮かべて 緊張に身体を震わせながら…… ど真ん中ストレートの直球勝負でミスティアは○○に想いを告げた。 「はぁ……はぁ……」 荒い息を吐きながら、ミスティアは目を閉じて○○の返答に震える。 (言っちゃった……!) もし、断られたら もし、嫌われたら どうしよう 私たちはどうなってしまうのだろう……? 今まで、積み上げてきた二人の関係が壊れてしまうのではないか。 嫌だよ そんなの嫌だ 怖い…… 怖い 怖い 怖いよ…… 永遠に続くかのような、長くて短い時間の中、恐怖がミスティアを激しく苛む。 彼女の手も足もカタカタと震え、心はルーミアに喰われるとき以上の恐怖を味わっていた。 ミスティアは固唾をのんで、○○の次の発言を待つ。 ○○の返答は―――― 「え、好きって……ライク? ラブ?」 ブチッ!! 「 ラ ブ に 決 ま っ て い る で し ょ お お お ! ! 」 シュン――――ドゴァッ!! 「ごふぁぁ!!」 どこまでも空気を読めない超ウルトラスーパー鈍感男に、ついにミスティアの幻の右が炸裂する。 人の力をはるかに超えた妖怪の力によって、○○は天空高く吹き飛ばされた。 その姿や廬山昇○破に吹き飛ばされる蟹のようだった。 「 あ じ ゃ ぱ ァ ――― !! 」 ひゅぅぅぅぅぅ~~~~~ぽふっ! 空気を切りながら、落下してきた○○を、ミスティアは両手で受け止める。 さすがに、○○の全身が地面に打ち付けられるのは無視できなかったようだ。 「あ、あんなこと、好きじゃなきゃ……貴方じゃなきゃ死んでもやらないわよ!!」 「いたたたた……ご、ごめん、全然気付かなかった」 「……ッ!!」 この上なくデリカシーの無いセリフが、ミスティアの心を真っ二つに切り裂く。 さすがにミスティアも、もう限界だった。 「うう……酷いよぉ……」 「あ、あの……みすちー?」 ○○のあまりの非道さに、ミスティアは怒りを通り越して、とうとう泣き出してしまった。 「ひっく……一緒にお風呂に入ったりとか……ぅぅっ…ものすごく恥ずかしかったけれど、頑張ったのにぃ……」 「みすちー……」 「バカ……バカバカバカぁ……ふぇぇっ…ぐすっ」 事此処に至って、○○はようやく深い罪悪感に苛まされる。 ……ハッキリ言って、遅すぎるのだが。 「ごめん……今まで、気付いてあげられなくて」 「うぅ……ぐすっ………」 ○○は、ミスティアを優しく抱きしめる。 ミスティアは泣きじゃくりながら、バカ、バカ、と○○をなじる。 そうして、彼の胸の中で子供のように泣き続けた。 子供のように、いつまでも―――― ・ ・ ・ そうして続く長い嗚咽の後、ミスティアはポツリと呟いた。 「……ごめんなさい、ヘンなこと言っちゃって……」 「ヘンなこと?」 「……いいの、わかってるよ……貴方にとって、私は親友でしかないって」 ミスティアが、○○の身体を押し戻す。 彼女の声色は、今まで泣きじゃくっていたとは思えないほどに強い。 けれど、その反面ひどく儚いイメージを抱かせる。 「……みすちー?」 「……でも、ごめんなさい……私、貴方のこと諦められないよ……」 「ミスティア……」 「たった一晩だけでいいの! あなたのこと、大好きだから…… 今夜だけは貴方のためだけに歌わせ――――んぅ……ッ!!??」 ミスティアの声が途中でくぐもったモノに変わった。 何故か? ○○の唇が、ミスティアの唇を塞いでいたから。 「!!??」 今度はミスティアが混乱する番だった 何が起こっているのかも分からない 驚きのあまり思考を纏めることもできない けれど、驚くミスティアとは裏腹に、○○は冷静そのもの。 少し頬が朱に染まっているが、啄ばむようなキスを数度繰り返す。 「ん……」 そのまま、○○はミスティアの唇を本格的に責め始めた。 まず、自身の唇で、彼女の唇の柔らかい感触を、ゆっくり味わう。 凍りついたように動かない――――動けないミスティアの唇をペロリと一舐めする。 さらに、唇で彼女の唇を挟み、緊張を解きほぐすように――――味わい、貪り、嬲る。 それは、どんな上等な食事よりも濃厚で、愛おしくて そして、僅かに淫らな味付けがされていた。 「ふぁ……」 ミスティアは耐えきれずに切なげな声を上げた。 熱い彼女の吐息が頬にかかり、酷く心地がよい。 たまらず、ミスティアの指に、自分の指をするりと絡ませる。 すると、彼女もそれに応えるかのように手を軽く握り返してきた。 「ん……ぅ」 喘ぎ声にも似た、か細い呻き声。 それが、彼女の歌声以上に、○○の心の琴線を震わせる。 ミスティアの身体から、どんどんと力が抜けていった。 しかも、その理由は驚きはもとより、この上ない心地よさによるものだった。 唇を中心に、体中全てが蕩かされるような甘い情欲が身を包む。 ○○は彼女の指を握っていた片手を外した。 そして、彼女の身体を片腕で抱える。 ○○の片腕にかかる重量は全く無いと言っていいほどに軽い。 「ぇ……?」 不意に、ミスティアが小さな声を上げた。 二人の唇が離れたからだ。 ○○の唇は、ミスティアの涙の跡を次のターゲットにする。 彼女の涙の跡に沿うように、唇を這わせ、舌先で小さく舐めあげた。 「ぁ……」 一瞬だけ、二人は互いに見つめあい、静かに目を閉じた。 ○○はミスティアを強く抱きよせ、ミスティアもそれに応える。 堅くなっていたミスティアの身体も心も完全にほぐれた。 だから、今度はミスティアからも求める。 ○○のキスに比べれば、あまりにたどたどしい舌と唇の動き。 けれど、その拙さが逆に○○の心を掻き乱す。 「んっ……!!」 互いを貪りあうような、熱く、濃厚な、甘い口づけ。 互いの唾液が互いの舌に絡み、唇にまとわりつく。 それだけで、甘い電流が脳を痺れさせ、溶けたアイスのようにどろどろに蕩けさせていった。 「……っは……」 10分ほど後、○○はようやくミスティアの唇を解放した。 「はっきり言うよ?」 「ぇ……う、うん……」 「みすちー、君のことが好きだ」 「……え?」 「だから、今夜だけといわず――――ずっと、俺のために歌ってくれないかな?」 ・ ・ ・ 「みすちー、すごく嬉しそうだね……」 「だって……幸せなんだもん」 ミスティアは、○○に体を預けながら 幸せに身をゆだねていた。 甘い甘い一時。 この上なく幸せな一時 きっと、それはずっと続いていくはずだ。 そう考えただけで、ミスティアの心は天にも昇るほどの幸福を味わっていた。 けれど、幸福のあまりに、彼女の心をチクリとした不安がよぎる。 「ね、ねぇ……○○」 「ん?」 「本当に……私で良いの?」 「え?」 「だって……私は歌うことしかできないもの。弾幕ごっこも強くないし、胸もぺったんこだし……」 「おバカ」 「え?」 「関係ないよ。弾幕ごっこが弱かろうが、胸がなかろうがみすちーはみすちーだろ? 俺が今まで、そんなことで親友をやめようとしたことあった?」 「……ない…わ」 「だろ? そういうことだ。大好きだよ、みすちー」 ○○はミスティアの頬に軽く口づけた。 彼女の表情がみるみるうちに和らいでいく。 「……これ、夢じゃないよね?」 「いや、つーか夢だったらむしろ俺が泣いちゃうぞ……」 「うふふ……」 再び、甘く緩やかな時を過ごす。 と、その時……○○は少し気がかりになっていたことを思い出した。 「そう言えばさ……どうして最近ウチに来なかったの?」 「う……き、聞きたい?」 「ああ、聞かせて」 ミスティアは、何故か喋ることをためらっていたが、○○に促されてポツリポツリと話し始めた。 「その……ここ最近ね、あなたと一緒にお風呂入っていると、ヘンなことばかり考えるようになっちゃって……」 「ヘンなこと?」 「う、うん……貴方に……その……触られたらどんなだろうとか、貴方に……抱かれたいとか」 (ヤバイ……この流れは) ○○は聞いてしまったことを激しく後悔した。 しかし、もう遅い。 「あ、あのみすちー? この流れは非常にまずいよ?」 「だんだん、そんなえっちなこと考えるようになってきちゃって……その……あの……」 (ヤバイ……このままでは別スレに行ってしまう!!) 「○○のことを考えると(>A<;)が(>A<;)っちゃって…… でも、何回も何回も(>A<;)ても、(>A<;)が(>A<;)ちゃって……」 ミスティアの瞳は既に潤んで、その頬は羞恥だけでなく 情欲に赤く染まっている。 言動がヤバくなってネチョフィルタがかかってきている。 このままでは、この話がオチなしで打ち切りエンドになってしまう。 けれど、○○はそれ以上に抜き差しならない状況に追い込まれていた。 ミスティアがあまりにイヤらしすぎて、可愛らしすぎて耐えられないのだ。 (落ち着け、偶数を数えるんだ……偶数は必ず2で割り切れる公平な数字……俺とみすちーで、いつでも半分こに出来る……) 「で、でも……本当は、違うんだよ? 私、そんなにえっちな子じゃ――――」 「2、4、6……」 ブツブツと何事か唱え始めた○○を見て、ミスティアの目に怯えが宿る。 「ぁぅぅ……こんなえっちな子は……キライなのかなぁ……?」 「不安そうな顔 & 上目遣い & 涙目」コンボ発動。 しかも、発情した女の顔で―――― ○○の理性は、そこまでが限界だった。 ブチッ!! 「アーイ……」 「え? 」 「キャ――ン……」 「ちょ……ちょっと○○?」 「グレェェェェ――――――イズ!!」 「きゃ、きゃあああああっ!!」 ○○が完全に壊れてしまった。 有無を言わせず、○○はミスティアをお姫様のように抱きかかえ、彼女の家に飛び込んで―――― 「みっすみすにしてやんよォォォ――――!! ア――――ッハハははははァ――――!!」 「ち、ちょっと落ち着いてぇぇ○○~~~~っ!!」 この後のミスティアの運命は、推して知るべし。 12スレ目 861 うpろだ898 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○○「お~いみすちー」 ミスティア「○○?どうしたのー?」 ○○「こんな姿になっちまったー」 ミスティアの目の前には見事にショタ化した○○がいた みすちー「○○……可愛いよ。とっても可愛いよ食べちゃいたいくらい♪」 ○○「食べるのは勘弁してくれ~」 みすちー「う~んその格好じゃお店手伝うのも無理みたいだし……○○、今日は客引きだけやってくれない?」 ○○「わかった~」 その日ヤツメウナギを食べに来る人が絶えなかったというが、そのまま○○をさらおうとした人も後を絶えなかった…… ○○「ふぃ~疲れた~」 みすちー「お疲れ様~とてもたくさん売れたよ~」 ○○「よかったよかった……って俺の姿が元に戻らなきゃ意味ないじゃん」 みすちー「何か変なもの食べなかった?」 ○○「う~……あっ!そういえば昨日は紫さんが来てそれから…二人で飲んでて…」 みすちー「きっとそのときにやられたね。明日になれば元に戻れると思うよ。……多分」 ○○「はぁ、今日は疲れたから家に帰るわ」 みすちー「あ、あのさ、今日泊まっていいかな?○○の家」 ○○「あ~…… うんいいけど」 ○○の家 みすちー「お腹すいてない?何か作ろっか?」 ○○「ああ、頼んでいいかな?」 みすちー「任せてよ!!」 みすちー(ま、○○のおうちだ~勢いで行くって言っちゃったけど、どうしよう……それにやっぱ子供姿の○○は可愛いなぁ♪) ○○「みすちーは今日はなんか嬉しそうだな」 みすちー「へっ?そ、そんなことないよっ!!」 ○○「そうか?っ!!みすちー鍋見て!!鍋!!」 みすちー「あっ!!焦げてる!!」 …… みすちー「ごめんね○○。おかず焦がしちゃって……」 ○○「んにゃ、別に大丈夫だよこのくらいの焦げ。っとと」 ふいに○○の箸からおかずが落ちる みすちー「ほら、いつもと違うんだから気をつけないと。ほ、ほら、あーん」 ○○「え、う、あ、あーん」パクッ みすちー「な、なんか恥ずかしいね……」 ○○「う、うん。…………ふぅ食べた食べた。ごちそう様でした」 みすちー「お粗末さまでした。ねぇ○○、この後どうする?」 ○○「ん、お風呂入って寝るだけだけど」 みすちー「わかった~お片付けしてるからお風呂に入ってていいよ」 ○○「ありがとう、みすちー」 お風呂のなか ○○「ふあ~生き返るな~……まさかみすちーがうちに来るなんてな~」 みすちー「湯加減はどう?」 ○○「ちょうどいいよ~」 みすちー「じゃあ私も入るね~」 へ、……私も入る?why? ○○「ちょ、ちょっと待って!!みすちー!!みすちーは女の子だから……」 ガラガラガラ みすちー「おお、○○の家のお風呂って広いんだね~」 ○○「み、みすちー、入ってきちゃダメだって……」 みすちー「だ、ダメだった……?」 GJです 鼻血が出そうです ○○「せ、せっかくだから背中流してあげるよ」 みすちー「うん!!ありがと!!」 その後は何もないですよ。もちろんR-指定なことなんてしてないですよ みすちー「いいお湯だったね~」 ○○「そうだな~……さて、寝るか。みすちーは俺のベットを使ってくれ」 ギュッ、みすちーが俺のパジャマの裾を握っている みすちー「あ、あのね○○い、い、いっしょに寝てもいいかな?」 ベットの中 ○○「だ、大丈夫かみすちー、狭くないか?」 みすちー「あーうー、だ、大丈夫だよ」 ……………… みすちー「ねぇ○○、○○は好きな人いるのかな?」 ○○「好きな人か~…………うん、おれはみすちーのことが好きだよ」 みすちー「うれしいよ○○、私も○○のこと好きだよ」 ○○「みすちー……」 みすちー「ふふ、ねぇ○○今日は泊めてくれてありがとうね」 ○○「いや、みすちーだけだからね。家に泊めるの」 みすちー「うん……そういってもらえると嬉しいな♪…………」 ○○「みすちー?」 みすちー「すーーー……すーーー……」 ○○「寝ちゃったか……おやすみ、みすちー」 翌日の朝 みすちー「う~~~~ん。ふわああ良く寝た~。あれ?○○ー」 ○○「おはようみすちー。よく眠れた?」 みすちー「あっ元の姿に戻ってる~良かったね!!」 ○○「だな。朝ごはん出来てるぞ」 みすちー「うん。……なんか私たち夫婦みたいだね」 ○○「……みすちーがそれでいいなら、……結婚しようミスティア」 みすちー「う、嬉しいよ、○○。私も○○のこと愛してる……」 二人がキスしようとした瞬間 バタン!! 文「ちわーす。朝刊で……あややややや、これはいいスクープですね!!さっそく記事にしなくちゃ!!」 バタン!! ○○「…………あの新聞記者め……まぁいいか。さっ朝ごはん食べようみすちー」 みすちー「そうだね○○!!」 こうして二人は夫婦になりましたとさ めでたしめでたし 後日、文々。新聞に二人のことが載るのは別のお話 うpろだ1031 ─────────────────────────────────────────────────────────── 後悔先に立たず。彼の周りはすでに真っ暗闇で、辺りはしんと静まっていた。 泣く子も黙ると云われる丑三つ時、闇に包まれ途方に暮れた人間が一人、薄暗い森の中に佇んでいた。 「妖怪ごときに食われてたまるか・・・一発お見舞いして、絶対に生きて帰ってやる」 ファイティングポーズを取って意気込む人間。犬や猫ほどの鋭さもない粗末な聴覚を研ぎ澄まし、必死に敵の位置を探る。 「かかってきやがれ妖怪、そのキレイな顔を吹っ飛ばしてやるぜ」 畜生、なぜこんなにも私の想いは届かないのか。 こちらの後悔も先に立たず。哀れな人間を惑わせ視界を奪った夜雀は、自らの行為をただ省みるばかり。 妖怪が人間に興味を持ったのが間違いだ、と彼女の行為を貶すのは容易い。 しかし彼女は真剣だったのだ。ただ一人の人間に恋焦がれ、それを真っ直ぐに求めた結果がこれである。 今、一人の男は視力を奪われ、妖怪にとってはあまりにも弱弱しく見える拳で虚空を切る。 「さぁ、ここまで暗くなりゃ逃げようがないわ。 妖怪野郎どっからでもかかってきやがれ、俺様の鉄拳でフルボッコにしてやるぜ」 そして今、彼の視力を奪った妖怪は、今まさに自らの行為を激しく後悔していた。 「私はただ、仲良くなりたかっただけで・・・」 視界を奪えば足は止まる。そんな風に考えていた時期が私にもありました。 確かに足は止まったが、早足で森を抜けようとしていた彼は今や臨戦態勢。 不用意に近づけば柔らかい鉄拳が飛んでくるであろう。彼は先ほどからしきりに拳腕を振り回している。 「さぁ、さっさとかかってこい妖怪野郎。人間様をタダで食えると思うなよコンチクショー」 もはやヤケクソだろう。 相変わらずブンブンと、拳が空を切るむなしい音が耳に入ってくる。 「・・・あの、もしもし?聞こえてる?」 とりあえず話しかけてみた。 だって、こんな人間初めてだし。こんな気持ちも、初めてだし・・・。 「聞こえてるぞ、そこにいるんだな?今一発食らわせてやるから覚悟しやがれ」 相変わらずシュッシュッと情けない音が聞こえてくる。 鳥目の彼には私が見えないのだ。鳥目になると、自分の近くのものしか見えない。 だから彼は、私の声が聞こえた方向を向いて、拳を振り回しシュッシュッと風を切るばかり。 ・・・それならば大したことはないだろうと、私はゆっくりと彼に近付いた。 ゴッ 「・・・お、当たった・・・」 左の側頭部に衝撃が走った。 どうやら彼の鉄拳をまともに食らってしまったらしい。 それでも妖怪の私には大したダメージにはならない・・・はずだったが・・・ 「あっ・・・うぅ・・・」 足元がふらつく。 なんだろう、急所にでも命中してしまったのだろうか。 不意を突かれたのがまずかったのか。 私は力なく前に倒れ・・・たと思った。 「うお、おっ、おい、何だお前・・・」 ・・・倒れてない。 何だろうこれ。何やら暖かい、やわらかい感触が私の身体を支えているような・・・ ドサッ 私は耐え切れず、その感触に身体を預けた。 やわらかくて暖かい。まるで天国みたいで・・・。 「え・・・あ、え、女の子・・・?」 「あ・・・うん・・・」 きっと、今の私はこれまでにないくらい無防備なんだろう。 背中には彼の左手。お腹には彼の右手。 もう、頭の中が蕩けてしまっているかも知れない。 「うぅ・・・ん・・・」 頭は回ってるのに声が出ない。 側頭部がジンジン痛む。こんな弱そうな男の拳でこんな目に逢うなんて、悔しいっ・・・!! 「あー、その・・・大丈夫か・・・?」 彼の心配そうな声が聞こえる。 あぁ、録音しておけばよかったわ。この声だけでご飯三杯はいける自身があるのに。 「あ・・・らいじょぶ・・・」 舌が回らない。彼の拳のせいなんだろうけど。 なんだろう、自分がすごく恥ずかしいよ・・・。 「ご、ごめん、その、女の子だとは思わなくって・・・」 「・・・私女の子だけど、妖怪だもん」 言っちゃった私。 盛大にカミングアウトしちゃったわ。 何てこったい。何やってんだ私。ムキになっちゃダメよ私。 「あー・・・妖怪・・・?やっぱり?俺を鳥目にしたのも君の仕業ってこと?」 「・・・うん、ごめんなさい。私・・・」 あぁ。言い訳しようとしてる私。 これはもうダメかもわからんね。 「私はただ、あなたと仲良くなりたくて・・・」 「・・・へぇ・・・」 「私、あなたのことが好きで、それで振り向いてほしくて、私・・・」 「・・・・・・」 ・・・案の定無反応だよ畜生。 あーあ、失恋しちゃったかなぁ。 「・・・取って食われるかと思ったよ」 ・・・そりゃそうだよね。 いきなり森の中で妖怪に視力奪われりゃ、そうだよね・・・。 怖がらせてごめんなさい、愛しい人。 「ほんとに、俺はここで死ぬのかって本気で思ったんだからな」 そうだろう。そうだと思う。 ああ、私は何て愚かなんだろう。 「・・・だから」 「だから、取って食われる気持ちってのをいっぺん思い知るといい」 ・・・えっ? ちょっと、私をどこに持っていくつもり? 降ろしてってば。ちょっと、どこ触って・・・ 「取って食ってやるから覚悟しろよ、可愛い妖怪さん?」 コラ、離しなさいってば!人間が妖怪を取って食うなんて、そんな話・・・ 「うん」 「よし、いい子だ」 「・・・うん」 そんなヘンな話、聞いたことないけど、 ・・・ちょっとアリかも知れないって思った。 だって、月がヘンに見えたから。 うpろだ1033 ─────────────────────────────────────────────────────────── 一人の男がいました。 彼はこの幻想郷とは違う世界の人間でした。 つまり外の世界からきた人間だったのです。 彼は幻想郷に迷い込み一人の妖怪の少女に恋をしました。 最初はその想いに気づかない振りをしていました。 しかし日に日にその思いが強くなっていきます。 そして結局彼は少女に告白をしました。 「ミスティアさん、僕は貴女が好きです」 「ごめんなさい……」 「……そうですか」 だけど彼の想いは届きませんでした。 どれだけ愛おしくても所詮は人間と妖怪。 彼の想いは叶わぬ想いだったのです。 少女は彼に告白されたときとても嬉しく思いました。 しかし彼女は彼の想いに答える事はできなかったのです。 人間と妖怪では寿命が違いすぎました。 その所為で自分だけが置いていかれるのが怖かったのです。 だから彼女は彼を拒絶しました。 大好きな彼を…… そしていつしか彼は少女から離れていきました。 彼女は悲しみました。 大好きな歌を詠うこともできなくなるほどに。 先の事を考えて彼の事を拒絶したのにそのせいでどうしようもなく彼に会いたくなってしまったから。 でももう遅い。もう彼は会いに来てくれない。 だから泣きました。 それから暫くして彼が少女に会いにきました。 彼女は喜びました。ですが直ぐに絶望します 。 「どうして、どうしてこんな事を!」 彼は少女の前で首と腕の動脈を切り裂いたのですから。 「……貴女がどうしようもないくらい好きだった」 彼は言います。抑えきれなかった想いを。 「ならどうして!?」 少女には理解できませんでした。 何故自分の事が好きなら死のうとするのか。 「貴女の隣に居れないのなら、せめて貴女の一部になりたいと思った。ただそれだけですよ」 彼は言います、届かないなら文字通り一つになりたかったと。 それ以外は何もいらないと。 「っ!? じゃ、あ私のせ、い? 私が貴方を拒んだから死んでしまうの?」 「違いますよ。ただ僕がそれを望んだんです」 「でも…でも……!」 彼の言葉を聞いて少女は自分を責めました。 自分が素直になっていたらこんな事にはならなかった。 こんな悲しい結末にはならなかったはずだ。そう思いました。 「ミスティアさん、僕の最期のお願いを聞いてもらえますか?」 「いや! 最期なんていわないで!」 「僕が死んだら…僕の体を食べてください」 自分を責める少女に彼はお願いをしました。 自分を彼女の糧にしてくれと。 「!?」 「せめて貴女の一部にしてください……」 「嫌! そんなの絶対に嫌!」 「お願いです。僕の最期のおねがいを……」 少女は彼の願い事を精一杯拒否しました。 「○○? ○○!?」 しかし彼にその言葉が届くことはありませんでした。 「――」 「いや! お願い起きてよ! 傍にいて良いから! ずっと傍にいていいから!」 「――」 「だから、はやく起きてよ……」 「――」 だってもう彼は事切れていたのですから…… うpろだ1337 ───────────────────────────────────────────────────────────
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ミスティア3 1スレ目 910 今日も一人で夜の道を歩いてる。 そう、私は1人(?)の鳥妖怪(夜雀)・ミスティアを探している。 彼女は気まぐれで歌える場所を探していつも幻想郷中を飛び回ってる。 博麗神社での宴会でたまたま彼女を見たときに、心がときめいた。 そして数日が経って私はいてもたってもいられなくなって、彼女を探すことにした。 しかし私が今知ってることは「彼女はたまに宴会に来て歌うだけ」と「主に夜にどっかで歌ってる」だけだった・・・・・・。 もっと彼女のことを知りたくて霊夢や魔理沙、紅魔館の人々に聞いても居場所につながる情報はもらえなかった。 そこで自分で直接彼女を探してみようと思い、このように夜に歩き探してるのだ。 探し始めてさらに3日が経ち、私は改めて幻想郷の広さを思い知った。 でもその探してる間にも、会った妖怪にいろいろ彼女のことを聞いた。 だけど彼女のことに詳しく知ってる妖怪に出会えることもなく一人さまよい続けてる。 その日の夜のこと、私は彼女に出会った。しかし自分の想像してたこととは違う形で。 ――『何よ!。何時そんなこと言ったのよ』 ――『また忘れたのですね。ではもう1度あなたの体に教え込むとします』 そういう風な台詞が聞こえるや否やいきなり少し先で弾幕戦が始まった。 少し近づくと片方はすぐに分かった。そうあの探していたミスティアだ。 (もう一人は・・・・・・誰だろう・・・?。今まで見たこと無い人だな) -雀弾幕中- しばらくするとミスティアが負けたらしく、そのまま落ちていく。 私はあわてて走った。そうするといきなりもう一人の女性が目の前に立ちふさがった。 『私の名前はヤマザナドゥ四季映姫』 『あなたがずっと見てたことも、あの雀を探してたことも知ってます』 『さぁ行きなさい。それが貴方にできる善行ですよ』 そういわれて私はすぐに彼女の横を通ってミスティアに駆け寄った。 『がんばるのですよ』 とボソッとつぶやいたけど、それは私の耳には届かなかった。 そばに着いて確認したら、ミスティアは気絶していた。 (さすがにあれだけの弾幕を食らったんだからな・・・。) 『待ってろ。今手当てするからな』 そう言ったものの、この場に治療できる物なんて無い。 『ここから一番近いのは紅魔館か・・・・・』 私はそうつぶやいてミスティアを背負って走り出した。 そして紅魔館に着いた。 着いたと同時に門番には叩き飛ばされそうになるわ、メイド長の咲夜さんに「どうしたの?」とか問い立たされた。 経緯を説明して何とか客用の寝室1つと治療箱を借りることができた。 治療箱を持ってきた咲夜さんが 『怪我の手当ては私がしますから、その間ドアの外で待ってください』 そう言われると半強制的に部屋の外に出された。 ドアが閉まったと思いきや、すぐにまた開いて 『手当ては終わりましたので、後はあなたにお任せします』 そう言って咲夜さんはどっかに行った。 時計の音のみが部屋に聞こえる。 しばらくするとノックする音が聞こえる。 私は返事をしてドアを開けると、咲夜さんがいた 『ほら、あなたもここ2・3日探し回って疲れてるでしょ。これでも食べて栄養をつけてください』 そういうと2人分の食事を持ってきてくれた。 『ありがとう』 私は食事をして、ミスティアが起きるのを待った 食事を食べ終えたころにミスティアが目を覚ました 『ここは・・・・』 『ここは紅魔館。そしてあなたは四季映姫という人にコテンパにされて気絶したので、私がここに運んで手当てしてもらった』 『そ~。で、何であの場所にあなたが居て、あたしを手当てまでするの?。別にほっといても問題なかったでしょ』 『それは・・・・・』 『それは?』 『それは、あなたを探し回ってたから・・・・・』 『あたしを?。何で何で』 『前に1度見かけたとき、きみの魅力にひかれた。だからもう1度歌を聞きたくて探し回ったのだ』 『今まで私の歌をそういう風に言ってくれる人は居なかったのに、珍しい人ね』 『私に歌ってほしい。場所が無いなら私の家でもいいから』 『本気なのね。でも今はこの怪我で無理なの。今度気が向いたら行かせてもらうね。そうそう、あたしのことはミスティアでもみすちーでも好きなほうで呼んでいいから』 『ああ』 私はそう言った後に部屋を出て、彼女を紅魔館の人に任せて家に帰宅した。 彼女は忘れっぽいということも聞いてたので心配だったけど、数日後彼女は約束通り歌いに来てくれた。 また数日が過ぎた時、次着たときに私は彼女に想いを告白しようと思った。 そして今日みすちーが来て、いつも通り歌を歌ってくれた。 一通り曲が終わったところで私は話かけた。 『みすちーご苦労様。実は今日は話があるんだ。』 『なんだ~?』 『前からずっと言えなかったけど、みすちー・・・・・きみが好きなんだ』 そう言いながら彼女の手を握り締めた。 『そ・・・・そんな・・・急に言われても・・・・』 彼女は恥ずかしそうに目を外した。 『私は本気だ。きみのためなら毎日でも歌を聞く。ほかの場所で歌いたいなら一緒についていってやる』 『そこまで・・・・じゃぁあたしの飛行に一緒に移動できるようになったらね』 『分かった』 翌日から私は一緒に飛べるようになるために飛行のことと、彼女を守るためにスペルカードというものについていろいろ調べ始めたのだった。 1スレ目 918 今のノリが好きだからドンドン手を広げることに不安を感じる俺ミスチー 愛してるからこそ不安なんだ! お前らに愛を感じたときから僕の心は弱くなってしまった。 癒してほしいミスチー、君の歌で、その熱くて甘い振動で変らぬリズムで僕の心を震わせ続けておくれ! あーなたーーーの燃える手で~~~ アヂーーーーーーーー 慧音「鳥目で気がつかなかったようだが、それはミスティアではなく妹紅の鳥だ」 ゜(゜´Д`゜)゜。ウァァァン 2スレ目 308 「巫女巫女レイム~♪」 どこかで誰かが歌っている。…こんな危ない場所で誰が歌っているんだろう? しばらくその歌声に聞きほれていた。正確には面白い歌だなと楽しく聞いていたのだが。 何曲歌ったかわからなくなった後、妙に聞き覚えのある曲が耳に入った。 「大地を駆け抜ける風に~♪」 (あれ?この曲って…) 俺が好きな曲。いつもカラオケで歌ってたな、この曲…。 「やがて愛するもののすべてに注がれていけばいい~♪」 そして俺は自然に体が動いてしまった。 「ちぎれてはぐれてく雲が―」 元々歌っていた相手は、はじめ少し驚いたようだったがやがて一緒に歌いだした。 …心なしか最初より楽しそうに聞こえた。 そして曲が終わる。 「やがてあなたの心の中に注がれていけばいい~♪」 …歌が終わったあと、歌っていた人物が目の前に現れた。…人物というより鳥だったが。 すぐに妖怪だとわかったが、なぜか恐怖感や嫌悪感を抱かなかった。 「あれ~?よくこの歌知ってるね~?」 「ああ、この曲俺の好きな曲なんだ」 「へぇ~…実はね、この曲前人に教えてもらったんだ~。気に入っちゃった♪」 教えたのはおそらく俺と同じ外の人間だろう。…できれば会ってみたいものだ。 「そいつもこの歌が好きみたいだったみたいでね、なんか仲良くなっちゃって… ほんとは私、人を食べる妖怪だけど、この歌に免じてあなたを食べるのは止めとく♪」 …命拾いしたな、俺。歌ってなければ今頃彼女の胃の中だ。 「あ、そういえば君の名前は?」 「私はミスティア・ローレライ。あなたの名前は…聞いても忘れるから、またその曲歌って呼んで♪」 こっちの世界に来たときはもうお先真っ暗かと思ったが、この笑顔と歌を聴いたらこの世界も悪くはないと思ってしまった。 告白までいっていないけどみすちー書いてみました! みすちー可愛いよみすちー(*´Д`*) 歌はもちろんあの曲です( A`) というか自分で考えるほどのスキルを持っていないのですorz 夢に出てきたらこの続きを書いてみようと思いますw 127 「鳥目にするんなら、鳥目になっても君が見えるように…傍に居てくれないか?」 3スレ目 504 みすちーで花映塚やりすぎて目を閉じるとみすちーが見えるぜ みすちーかわいいよみすちー 4スレ目 222 みすちー。いや、ミスティア・ローレライ。俺は君が好きなんだ 「え、でもそんな……」 嫌なのか?だったらハッキリ『嫌』って言ってくれれば俺も諦めがつく 「違う!違うけど!だって、私鳥頭だし……」 忘れたくない事があったら、俺がそれを覚えていてやる 「それに体もこんなだし……」 女性の価値が体で決まるなら、そんな価値観を壊してやる 「それにあんまり強くもないし……」 強さなんて求めていない、求めているのは君自身だ 「それに、それに!私は妖怪なんだよ!?」 人間と妖怪が相容れないなら、俺は人間を捨てて妖怪として生きてやる 「……本当に良いの?」 本当だ 「ありがとう……」 「それで、その熱々なお相手の人間は何処なんですか?」 「んー、ブンブンになら教えても良いかな。その後彼も妖怪になったんだけどさ」 「うん、うん」 「何を何処でどう間違ったのか、人面樹になっちゃってね」 「つまり森で静かに生えてると?」 「いやー、そのー、実はね、これなのよ」 「これって、屋台ですか?」 「んー、実際に見せた方がいいかな。○○ー」 あいあい、ミスティアが俺の事を誰かに教えるなんて珍しい事だな 「うおっ、屋台が喋った!?」 「ま、こう言う事なのよー。あ、記事にはしないでね?色々五月蝿いの来るから」 「うーん、みすちーの頼みでは仕方ありませんね」 「ありがとー、今日は特別に私が奢るわー♪」 「ところで、夜の生活とかはどうなんです?(ニヤニヤ)」 「えー?それはまぁ、木だしねぇ?(ポッ)」 4スレ目 248 というわけで、家無き子でもないのに野宿を始めた俺だったが……。 「……寒い」 夏になろうかというのにこの寒さはなんなんだ。 毛布に包まっても寒いぞ。自宅前で凍死とか本気で笑い話だ。 「止め止め。俺が持たん」 さっさと結論付けて毛布を脱ぐ。迷いは死を招くのだ。 というわけでいざ鎌倉。我が理想郷へレッツゴー。 しかし、この時間で気軽にいける場所か……。あるか? 「……あるじゃん」 いきなりお誂え向きな場所を思いつき、俺は仕事道具その一、チャリンコに乗り込んだ。 さて、行こうか。アディオス我が家。 ――十数分後。 「ようミスティア。さっきぶ 「夜雀の屋台へようこそー……って○○!? どしたの? やっぱり家が壊れちゃったの?」 ミスティアの屋台に足を運んで、挨拶をした瞬間、思いっきり同情されてしまった。 可哀想な目で同情された。それも見た目年下の少女に。結構きついものがある。これはさっきの皮肉と応酬と同じくらいクる。 「……orz」 「やっぱり……元気出してよ。今日はタダにしてあげるから」 なんかミスティアまで落ち込んでしまった。 俺のせいで少々気まずくなった。これではいかん。 即座に立ち直る。空元気だが。 「いや、本当は壊れてない。ただ、三人ともダウンして俺の家で寝て、俺の居場所がね」 「そっかあ……壊れたわけじゃないんだ。よかった♪」 完全に人事だというのに、ミスティアは本当に嬉しそうに微笑む。 ……全く。そんなにコロコロ表情を変えて。純粋というか、なんというか……。 「可愛いなあコンチクショウ!」 「わひゃっ?」 ……いかん。余りの可愛らしさに思わず抱きしめてしまった。 「まいっか」 「!?!?」 即断即決。可愛いものは可愛いのだ。何が悪い。 驚くミスティアを尻目に俺はひたすら頭を撫で続ける。 ――わしわし。 「ね、ねえ、○○。くすぐったいよ……」 ――わしわし。 「……うぅん」 ――わしわ……ピタッ。 「……ふぅっ、んっ?」 愛でるのにも満足した俺はミスティアを放してやる。 怒ってくるかと思ったんだが、当の彼女は上目遣いで俺を見上げてくる。 「……もう止めちゃうの?」 「なんだ、まだやって欲しかったのか?」 「……うん」 モジモジと照れくさそうに言ってくる。 なんか調教してるみたいだ。愛い奴め。 まあ、俺も断る理由は無い。可愛いし。それに、 「じゃあ、後少しだけな」 「……うんっ♪」 こんな笑顔を見れるならお安い御用というものだ。 ――青年かいぐり中。 というわけで、俺はその日の夜が明けるまでこんな事をして過ごした。 次の日から俺の屋台の代金が「ミスティアの頭撫で」になったのは言うまでもない。 4スレ目 319-320 流れ切って投下してみる… 拙文なのと、恐らく矛盾とかそういうのがあることは事前に謝っておく。 「…うー、さぶ… おーいみすちー、いつものと熱燗ー…」 冷え込みが厳しい冬のある日。 俺はいつもの屋台…と言うよりも、居酒屋に足を運んだ。 以前、偶然見かけた時からずっと通っている。 当初は八目鰻の蒲焼と酒くらいしかない正に「屋台」といった風情だったのだが、 お客から教わった色んな料理やつまみ(無論鳥肉は無い)をメニューに追加していった結果、 料理の品数に関しては比類が無くなったという、「成長する店」だ。 無論、彼女の持つセンスもあるのだろうが。 ちなみに、俺の好物は八目鰻の甘露煮。 こういう手間のかかる料理も用意してあるから助かるんだよな、本当。 「…あれ、みすちー?」 ところが、見慣れた彼女の姿がカウンターにない。 外に出っ張った所に居なかったのはこの冷え込みだからだと納得させたが、 中にも居ないというのはどういうことだろう。 …と、後ろに入り口があり、布団が覗いている。 確かに彼女は夜雀だが、夕方にまだ寝ているという事は無いハズなんだが… 「…みすちー?」 不法侵入なんだろうが、気になったので上がりこんでしまった。 そして当の彼女は、真っ赤な顔で布団に横たわっていた。 「…うー…あー、○○…ごめんね、今日は、屋台は、お休み…」 「いや、それ所じゃないだろ!?一体どうしたんだよ!?」 彼女は複雑な笑みを浮かべて答える。 「あはは…風邪、こじらせちゃって… うつったら、いけない、から…早く、帰ったほうが、いいよ?」 ちょっとの言葉さえ途切れ途切れになっている。 つまりは、そうしなければいけないほど苦しいという事だろうか。 それに、ゲホゲホと咳き込んでもいる。 このまま放っていては、治るのには時間もかかってしまうだろう。 「馬鹿、病人ほったらかして帰れるか!」 そう言うと、急いで近くの井戸から水を汲んできた。 手拭いを浸して、絞って、彼女の額に乗せる。 手が悴んだが、そんな泣き言は言ってられない。 「ごめん、ね、○○…こんなことまで、して、もらっちゃって…」 「謝る事じゃない。 俺がやりたいからやってるだけなんだ、素直に受けとけって。 それじゃ、俺、少し出かけてくるから。」 「…?」 屋台が竹林の近くでよかった、と心底思った。 何をどうやったのかさえ覚えていないが、 驚異的な勘で迷いもせずに向かった先。 「…風邪薬?」 永遠亭・八意永琳の部屋。 「ええ、とびっきり強力なのを。」 「それは勿論あるけれど…どうしたの?貴方はどう見ても健康体だけど…。」 「知り合いが酷い風邪を引いちゃいまして… 出来れば一刻も早く直してやりたいんですよ。」 「分かったわ。はい、それじゃこれ。 これを飲ませてあげれば、良くなるのにあまり時間はかからないわ。」 「あ…ありがとうございます!」 「お礼はいいわ、私は医者だもの。 ほら、早く行ってあげなさい。てゐに近道を案内させるから。」 「…うえー、苦ーい…」 「よし、そんな無駄口叩けるなら大丈夫だな。」 ぽんぽん、と頭を叩いてやる。 が、矢張り叩いた頭はまだ熱を持っており、 また水を汲んできて、手拭いを濡らして冷やしてやった。 「…」 と、彼女は何を思ったのか、徐に俺の手を掴むと、 「!?」 「わー…つめたーい…」 …いや、そっちは冷たくて気持ちいいんだろうけど!? こっちは直に頬に触れてるんだから焦るって! 「ちょ、ま、みすちー!?」 「…あ、ごめん…迷惑、だよね…」 しゅん、と項垂れる彼女を見ていると、 罪悪感と一緒に別の感情も湧き出してくる。 …いや、「思い出して」くる。 …ぎゅっ。 「…!?」 「迷惑じゃないさ、焦っただけ。」 「え、あの、」 「俺、みすちーの事が、その、」 肝腎なときに声が裏返って出てこない。 「…好き、だから。」 出ない声の代わりに、彼女の声が響いた。 「…うん、好き…だから。」 暫く二人で見つめ合った後、 どちらとも無く唇を重ねていた。 そして、疲れが出たのか、彼女は直ぐ眠りについていた。 薬もきいたのか、起きた後の彼女は大分調子が良くなっているようだった。 「…あのさ、○○。ちょっと…」 ごにょごにょ、と最後はあんまり言葉になっていなかったが、 俺にはちゃんと聞こえた。 「ん、了解。」 ひょい、と所謂「お姫様だっこ」をして店の椅子に座らせて、 台所でお粥を作ってやる。 彼女のセリフの最後、『おなかへった』、と『…食べさせて』と言うのが聞き取れたから。 …ちなみに、彼女は本来人を取って食うハズなのだが、 普通の魔法使いにお握りを貰って食べた所「人<米」になったらしく、 以後米を主食にして食べているらしい。 「ほい、あーん。」 「…あーん。」 熱のせいなのか照れなのか、顔を真っ赤にして口を開ける。 「ほらほら、相思相愛なんだから照れるなって。」 ぶほっ、とむせる様を見て、けらけら笑ってやる。 「ちょ、もー!」 「あははは…」 数日後。 「○○ー、小皿3枚取ってー!」 「分かったー!」 俺も彼女の屋台で住み込みで働く事にした。 と言うより、彼女に頼まれたのだが。 彼女曰く、「出来るだけ一緒にいたい」からだとか。 非常に照れたが、勿論快諾した。 何でかって?そりゃ勿論、俺だって「出来るだけ一緒にいたい」からな。 それに、彼女の手料理がいつも食べられるなら、それに越した事は無い。 …え、それはもう同棲か夫婦だって? それ、彼女には言わないでくれよ、照れて料理をめちゃくちゃにしかねないから。 4スレ目 337-338 「…あ゛ー…う゛ー…」 「何と言うか…その…お約束?」 みすちーが枕元で苦笑いしている。 古今東西、風邪の相手といちゃつくと、 遅かれ早かれ手ひどく風邪を引くのは良くあるベタな展開だ。 が、それ故に自分がかかることは視野に入れていなかったが… ここは幻想郷だ。外の世界で幻想になった物… そういう展開も流れ込んでくるのだろうか? …何故か矢鱈潜伏期間が長かった気がするが、 音速と一緒に進行速度まで遅かった事にしよう。 「…い゛ー…」 …とか何とか考えてる間もあまり無く、 繰り返し起こる酷い頭痛と悪寒に耐え切れなくなる。 「んしょ…」 彼女に俺がやったように、 彼女も濡らした手拭いを絞って俺の額に乗せる。 こういうことに慣れていないのか、 少したどたどしい手つきがなんとも愛らしい。 と言うか掛け声が凄まじく可愛い。 彼女の持ち味の一つたる、くりくりした声でああいう声を出されると、 一瞬理性が崩壊しそうになるから恐ろしい。 「んー…困ったな、汗で枕がぐしょぐしょ…」 「あ…ああ、大丈夫、だって。」 「大丈夫じゃない。少しでも悪くする元は失くさないと…」 といって枕を引っこ抜いて干してしまった。 幸いまだ結構日は照っているので、 暮れるまで干せば多少は乾くだろう。 …が、枕を失った俺の頭は若干落ち着きなくゴロゴロ布団の上を転がっていた。 「もー。ほらほら、ちょっと体起こしてー。」 ?と疑問符を浮かべながら体を持ち上げると、 枕元でもぞもぞと動く気配がある。 「いいよー。」 判断能力や思考能力が大分鈍っていたのか、 疑う事も無く頭を下ろした。 多分、代えの枕でも持ってきてくれたのだろうと。 …もう一つの枕も既に干しているのを思い出したのは、 位置エネルギーが粗方落下速度に変わった時だった。 ぼふ、という擬音がありありと頭の中で聞こえた気がした。 「ひゃっ…」 「…へ?」 焦って目を開けると、直ぐ近く…と言うより、 ほぼ真上に若干赤い彼女の顔が見えた。 …って、え、コレ、まさか!? 「…えと、あの…どうかな、寝心地。」 ………膝枕。 「あ、うん、いいよ、すごく、楽…。」 …焼き切れそうになる理性を只管繋ぎ止めながら、 暫く寝てる振りをした。 本当にゆっくりと、時間が過ぎた気がした。 何も邪魔することの無い、二人だけの、穏やかな時間。 …無論、二人とも気恥ずかしさは感じているようだった。 俺は熱より別の要因で顔が真っ赤だったし、 彼女も薄目で確認すると耳まで赤くなっていた。 「…それじゃ、雑炊作ってくるねー。」 「おーう…」 流石に膝枕をずっとしている訳にもいかないらしく、 みすちーは仕方なく、といった様子で座布団を枕にしてくれた。 ぐしょぐしょの枕で寝るのとそんなに差があるかな、とも思ったが、 乾いてるだけいいだろうと納得した。 症状の方は大分収まってきたと思う。 永遠亭から貰った薬が残ってて良かった。 「お待たせー♪」 「待ってないぞー。」 「あ、ひっどーい。」 と、くすくす笑いながら台所から湯気の立つ小鍋を持って戻ってくる。 中身をレンゲで運ばれるままに食べていたが、矢張り美味い。 こういう単純な料理だからこそ、 作り手の腕が顕著に出るんだと思う。 「えへへ、○○に合わせて味付けしてみたんだけど…どうかな?」 「…っ。あ、うん、美味いよ、すごく。」 …訂正。腕と言うより、もうこれは愛だと惚気ていいですか? 「…あ、そうだ。」 ぼけーっと時計を見ていた時に、そんな声が聞こえた。 彼女の声には何処となく悪戯っぽい色が宿っている。 「…?」 ふー、ふー、と冷ます音は聞こえるのだが、 一向に運ばれてこない。 疑問符を浮かべながら横の彼女の方に顔を向けようとした、その時だった。 「むぐ…っ!?」 柔らかい物で口が、肌色で視界がそれぞれ塞がれる。 そして、さっきと少し味の異なる雑炊が口に流れてくる。 ……ナンダコレハナンダコレハナンダコレハ? 頭の回転が一時的に凍りつく。 一瞬後に我に返ると、 風邪を引いている俺よりもさらに赤く、 それこそリンゴかトマトのような顔をしたみすちーの姿。 「え、えへー…」 照れを隠すかのように笑う彼女の口には、一粒の米がくっついていた。 その事実が物語ること、それは、 「口、移、し…?」 「……。」 真っ赤な顔で頷く。 その姿もたまらなく愛らしく、そして愛しい。 そして俺は、躊躇わずに彼女を強く、強く抱きしめる。 「あう…ちょっと、苦しいよ…」 「…悪戯のペナルティだと思え。」 そして少し離して唇を奪う。それも、とびっきりにディープなキスで。 「…むぐ……っぷは。」 「ははは、ざまみろ。 みすちーに主導権握られっぱなしなのは俺の沽券に関わる。」 …が、みすちーはその辺には反応を示さずに、 黙って布団の中にもぐりこんで…って、ちょ、それは待て! 「…。」 「…えと…みすちー?」 きゅっ、としがみついてくる。 「………。」 「…あー、うん。俺の負けだ、負け。 やっぱみすちーには敵う気がしないよ…。」 結局、あの後は一緒の布団で寝ていた。 …といっても、決してRとかX指定が必要なことは断じてしていない。 ただ単に、枕が一つしか残ってないから共用しただけだ。 そしてその後暫く、どっちも風邪は治ったというのに二人して何かと顔を真っ赤にしていた。 世の男どもは常に妙な妄想をしやすいんだろうけれど、 俺としてはこうやってゆっくり進めて行きたいな、と、そう思った。 あ、そうそう。これはあくまで余談だが。 「○○ー、ちょっと中から日本酒取ってきてー。」 「あいよー。」 屋台の方は変わらず繁盛している。 が、メニューに何故か「雑炊」の項目はない。 それについて聞いてみたところ、 「えーっと…愛する人に対する特別な料理って、 やっぱりあるじゃない?」 …みすちーにはいろんな意味で勝てないと、 前にも増して悟った気がする。 でも、勝てなくていいとも思う。 純真で、無邪気で、そして明るくて。 有り触れた形容詞だが、彼女は俺の太陽なんだろうな、と思った。 と言うことで、後日談兼逆バージョン。 自己満足なのかもしれないが、みすちーを動かすのは楽しい… 個人的にみすちーの行動は天然物で、 狙いとかも無くやってると思う。 4スレ目 397-398 冬も本番。 雪のあまり振らない地域だから冬でも客足が激減するということは無いのだが、 それでも矢張り寒いことは寒い。 「うーさむ…おーいみすちー。 調味料とか材料、仕入れてきたぞー。」 トントントン、と包丁が小気味よいリズムを響かせている。 恐らく、開店前の下ごしらえだろう。 「あ、おかえりー。ごめんねー、キツい仕事任せて。」 そりゃまあ確かにこの気温の中、里まで買出しに行くのはちとキツい。 が、 「おいおい、キツいのは俺じゃないだろ。こないだの風邪だって、 こんの寒いなか八目鰻獲るのに気張りすぎたそうじゃないか。」 「え!?し、知ってたの?」 「鰻の冷凍保存の協力者に聞いた。」 「…あうー。冬場が旬なんだよー、八目鰻。」 そうなのである。 一般的な鰻は夏場が基本なのだが、 八目鰻は(少なくとも本来は)冬の味覚なのである。 …それ故に、これの温かい料理と熱燗、という冬ならではの極上の味が楽しめるのだが。 「いや、それは分かってるが。 無茶してもらっても困るからなあ。」 「うん、気をつける。」 「素直でよろしい。 さて、この荷物はどこに仕舞えばいい?」 「えーと、調味料はまだ台所にあったハズだから倉庫行きで… 材料は冷蔵庫かな?」 ちなみにこの冷蔵庫、上の段に氷を入れるタイプである。 本来なら氷代もバカにならないのだが、 氷精を買収してあるのでコストは殆どかからない。 「へいへい、りょーかい。」 てきぱきと整理しながら仕舞っていく。 こういうことが簡単に出来るようになってきたあたり、 この屋台で過ごし始めてから大分時が経ったんだなあと思う。 「さて、これで下ごしらえは大丈夫…と。 それじゃ、開店まで休憩しよっか?」 「おーう。」 ずずずず。 「ふぃー、あったまってきた。」 「うん。あ、美味しいね、この羊羹。」 熱めに淹れたお茶と、買出しついでに里で買ってきた羊羹で一息つく。 「炬燵でもあればもう少し暖を取れるんだがなぁ。」 「んー、マヨヒガか神社くらいにしかないと思うよ?コタツ。」 「だよなぁ…」 どう見ても寒そうな格好をしている巫女から借りるのは絶望的だし、 何より法外なレンタル料を取られそうな気がする。 マヨヒガは…ダメだ。どこにあるかさえ分かったもんじゃない。 行けさえすれば在庫の一つや二つあるかもしれないが。 「となると、やっぱり…」 すたすた。 「?」 むぎゅ。 「~!?」 「あー、あったかい。 鳥は人間より体温高いって言うしな。」 後ろから抱きすくめる格好でみすちーを懐炉代わりにしてやる。 みすちーと一緒に暮らし始めてから結構経っているが、 未だに何かしてやると初々しい反応が返ってくるのがとても愛らしく、愛しい。 「あうー…」 耳まで真っ赤になって俯くみすちー。ふと出来心が芽生えてしまう。 「…こちょこちょ。」 「うひゃっ!?」 敏感に反応している。矢張り腋の辺りは人妖共通の弱点のようだ。 「こちょこちょ。」 「あう、や、やめてぇ~。」 ぶんぶんと腕を振り回すみすちー。 ああもう、可愛いったらありゃしない。 でもまあ、流石にこれ以上暴れられても困るからやめておく。 「~~。」 あらら、どうも機嫌を損ねてしまったようだ。 「あ、うん、悪かった…おーい?」 「…お返し!」 くるっ、と向きを変えて俺に擽り攻撃を仕掛けてくる。 が、俺とて小さい頃はこういう勝負を何度と無く潜り抜けて来た猛者だ。 「わははは、効かん、効かんぞ!」 「このこのー!」 実際は結構ヤバいラインなのだが。 と言うかあの爪で引っかかないように擽ってくるあたり、 やっぱり器用なんだなあと妙な所で合点する。 結局、暫く擽りあいの珍妙な勝負を繰り広げていた。 「…疲れた…」 ぼて、と大の字に畳に寝転がる。 結構長いことやっていた気がする。 四半刻、といったところか? 「ふにゃ~。」 ぼふ、と俺の上に倒れこんでくるみすちー。 少しやりすぎたんだろうか? 「おーい、大丈夫かー?」 「…ぬふふー、いい位置ー!」 げ、このやろ確信犯でいやがった! 「…と言いたいとこなんだけど、冗談抜きに疲れた~。」 俺の上で転がっている。若干苦しいが、悪い気分じゃない。 「えへへー、あったかーい。」 「そりゃまあ人を布団にしてりゃな。」 「んふー。」 ごろごろ、とばかり擦り寄ってくる。 いや、お前さん鳥だろうて。猫とか犬の仕事だぞそれは。 「…すー。」 あら、寝付いてやがる。動くと起きちまうかな…っても、 流石に風邪引くか。 「よっこいしょ…っと。」 極力動かさないように一旦畳に下ろして、 とりあえず手近な座布団を並べて寝かせてやる。 んでもって、 「ほれ。」 ぼへ。 という珍妙な擬音と一緒に、掛け布団を放り投げてやる。 「わっぷ!?」 あ、しまった。顔に当たったらしい。 「悪い悪い。大丈夫か?」 「だ、だいじょーぶー。…あー、でも今ので目が覚めちゃった。」 「そか、そりゃ悪い事したな。」 頭を掻き掻き謝る俺。 「むー、悪いと思ってるなら行動で示してよねー。」 「行動?」 ちょいちょい、と手招きをしてのたまったセリフは、 「添・い・寝♪」 …ダメだ、相変わらず勝てる気がしない。 悶々としながらそういうことを考えたのは、 みすちーに抱き枕代わりにされて身動きが取れなくなってからだった。 初心に返ってひたすらイチャついてみますた。 ついムシャクシャしてやった、 だが反省も後悔もしていn(コーラスマスター 4スレ目 506-507 とことん季節がズレまくりなのを持ってきますた。 続き物っぽくなってると時間の流れとかに制限が… いつもより少し短かった冬が終わり、ようやく春。 八目鰻の旬も終わりはしたが、 屋台のメニューは多彩だからまったく気にせず客は来る。 この近くにも中々見ごろな桜もあり、 花見酒やその肴を買いに来る客でも賑わっていた。 「おーい、味噌田楽と焼酎ちょーだーい!」 「こっち清酒と芋の煮付けー!」 …と、殆ど時間を置かずに注文が飛んでくる。 「は、はらほろひれはれ~。」 「いやいやみすちー、それハーピーだから…」 フラフラになりながらどうにかこうにか注文を捌いて行く。 作り置きがあるメニューをメインに据えたのが良かったか… 「ミスティアー、氷届けに…」 「いいところに来た、ちょっと手伝ってくれチルノー!」 「…へ?」 「料理とか運ぶだけでいい、今手が足りないんだよ。」 「…まったくもー…バイト代はきっちり貰うよ。」 「…ぶはー、物凄い盛況だったな… 繁盛するのはいいけど流石に疲れるぞ。」 「いーのいーの、それだけ焼き鳥から離れてくれる人が増えるかもしれないんだから。」 ちなみにチルノには一升瓶1本と肴少々で勘弁してもらった。 そういえば、多少のミスは覚悟で手伝いを頼んだんだが、 注文とりは兎も角、皿運びをまったくそつなくこなしていたのには二人とも驚いた。 で、俺たちはと言うと、残り物の料理と適当な酒で二人で簡単な酒盛りをやっている。 いつもなら次の日の仕込みをするべき時間帯なのだが、 幸いにして明日は定休日、夕方からは花見と洒落込む予定である。 で、今はその前夜祭、とでも。 「そういえば、明日は弁当とか持って行くのか?」 「勿論。冷蔵庫で保存してあるよー。」 「んー、それじゃ冷えてて硬くなるんじゃないか?」 「あ、そうかも…」 「ま、持って行ってるうちに常温になるだろ。」 「そだねー。」 気楽なもんである。 「ふー…大分酔っ払ってきたー…」 「あー、俺もだ。明日二日酔いで中止ってことにはならないだろうな?」 「ま、そのときはそのときよー… いざとなったら次の日あたりに屋台サボっちゃえばいいんじゃない?」 「やれやれ、マイペースなことで。 ま、そうかも知れないけどな。」 「そーそー。幻想郷では人も妖怪も生きたいように生きるのよー。」 「へーへー。そんじゃ寝ますか…」 「えー、寝ちゃうの?」 「…寝る以外にどうしろと。流石に遅いぞ?」 「えー、せっかくここまで飲んだんだから…ねぇ?」 クスクス、といつもとはまた違う笑みを見せる。 「えーと、それはまた一体どういった意味でせうか?」 「それは勿の論…うふふふ、言わなくても分かるんじゃない?」 そう言うとみすちーは、 ――――――― (Y) ,,..-ー7" `ヽー- ..,, /,,.-ー'"´ ̄ ̄`゙ー-'、ヽ、 /'"i´ |l⌒ヽ、__,ノ´⌒l| ヽ '., l ,.ゝ '、r-、__!r-、__,r-i_ノ_,.イ l ', `γ´ ハ λ ハ ゝ r'"i ヽ; i レイ._,.レハノ.,_レヽノ i ン ノレ´ .i.-─ ─-i. |' 7 从" ¬. ".从 i 不適切な表現になりそうだから 〈./ ri.>r---,.イレ'ヽ 〉 ちょっとスキマ開けさせてもらうわよ __ハ/⌒iイヽニンYー'、 ハイ { -=ニ ̄ ヽゝ、ノY rー'-、ノ  ̄ニ=-  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー'" ̄ ̄ ̄ ――――――― 翌日の夕刻、近くの山の中腹辺り。 「うーん…今までは夜桜か昼間の桜のどっちかだったけど、 黄昏の中の桜ってのもなかなかいいもんだな。」 「でしょ?ここ、私達しか知らないとっておきの名所なのよー。」 「私『達』?」 「そ。もうすぐ来ると思うよ?」 「…なるほど、だからこんな馬鹿でかい弁当を…。」 と、荷物の重さを再確認していると、 急に涼しい風が舞ってきた。 「おーい、ミスティアー。」 「あ、来たね、チルノ。大ちゃんも。」 「えーっと…いいの?私達がお邪魔しちゃって…」 「ほらほら。せっかく呼ばれたんだから遠慮するのは失礼よ?」 「そーそー。お弁当はたくさん作ってきたから、 むしろ私達二人じゃ食べきれないよー。」 「やれやれ、姦しいことで。」 出席者の一人と言うよりは、 三人姉妹の保護者といった様相で眺めている。 …ああ、この時間を使って弁解しておくと、 昨日の晩の行動もRやX指定は必要ないぞ。スキマ妖怪が余計なことをしたが。 俺は昨日、みすちーが飲ませ上戸だということをはじめて知った。 売り物の酒まで引っ張り出してきて飲ませるもんだから、 昨日の晩だけで何度吐いたか… …それで二日酔いが軽かったのは奇跡だけどな。 …とまあ微妙なオチ。 最近ネタが詰まり気味です申し訳ない。 4スレ目 642-643 「おーい、みすちー。」 「…」 「おーい?」 七月…えーと日付忘れた、とりあえず久しぶりに晴れた日。 屋台が定休日なのはいいのだが、 昨日の晩あたりからぼーっと何かを考え込んでいるみすちーが非常に気にかかる。 「…」 「…おりゃ。」 すっぱーん、 と事前に作っておいたハリセンでどついてやる。 気付け代わりにはちょうど良かろう。 「ひゃぁ!?ななななななな何何何ー!?」 おー、絵に描いたようなテンパり具合だな。 「いつまでもぼけーっとしてんじゃない。 何か悩んでんなら相談乗るぞ?」 「あー、うん…大丈夫…」 「どう見ても大丈夫じゃないだろうが。 いつもの明るさが無いと客だって来ないし… まあ、俺も寂しい気がしないでもない。」 「…。昨日、珍しく冥界の庭師が一人で来たじゃない?お使いだったけど。」 「ああ、来てたな、そういえば。」 「えーと…あの人、半分が人で半分が霊…なのよね。 そういう意味で…珍しいじゃない。」 「まあ、そうだな。…だけど、それが…」 「半人半妖、っていうのは…少なくとも私は聞いたことも見たことも無い。」 …嗚呼、成程…そう言うことなのか。 …おおよそ、察しはついた。 「…だから…その…私達の…言ってみれば、「歴史」。 覚えていてくれる人がいるのかな、って。」 「そんなことで悩むってのも…ま、みすちーらしいって言えばそうか。 子孫が残せるかなんて俺にもわからないな。 近くに前例があるわけでもないし、里の歴史学者も教えてくれない。」 「…そう…」 「けど、な。 子供が出来る出来ない以前に、先ずはいろいろ愉しもうや。 悩むのは何時だってできるが、遊べるのは休みの日だけだぞ?」 「…ぷ。」 あ、笑いやがった。 「こんにゃろ、何がおかしい。」 「あはは…、そうかもね。 ま、折角幻想郷にいるんだから、何から何まで愉しまないとね~♪」 「そーそー、その調子だ。よーやく調子が戻ってきたか。」 「んー、まだ本調子じゃないかな。だいぶ吹っ切れたけどねー。」 「うし、んじゃ暫く屋台サボって遊ぶとするか。」 「えー、自分がサボりたいだけじゃないの~?」 あははは、といつもの笑い声が聞こえる。 「お?そういうこと言い出しますか。 まあいいや。好きな所に付き合ってやるから何処でもいいぜ?」 「えへへ~、それじゃ、手始めに…お布団で?」 「…やーれやれ、やっぱ敵わんな。」 口ではそう文句を言っているが、 小悪魔的な笑みを浮かべてにじり寄ってくるみすちーを拒むことはなかった。 ――――――― (Y) ,,..-ー7" `ヽー- ..,, /,,.-ー'"´ ̄ ̄`゙ー-'、ヽ、 /'"i´ |l⌒ヽ、__,ノ´⌒l| ヽ '., l ,.ゝ '、r-、__!r-、__,r-i_ノ_,.イ l ', `γ´ ハ λ ハ ゝ r'"i ヽ; i レイ._,.レハノ.,_レヽノ i ン ノレ´ .i.-─ ─-i. |' 7 从" ¬. ".从 i ちょっと不適切な表現になりそうだから 〈./ ri.>r---,.イレ'ヽ 〉 またスキマ開けさせてもらうわよ。 __ハ/⌒iイヽニンYー'、 ハイ { 若いっていいわねぇ…。-=ニ ̄ ヽゝ、ノY rー'-、ノ  ̄ニ=-  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー'" ̄ ̄ ̄ ――――――― 数日後、盛大な祝福と共に里で婚姻の儀式が執り行われた。 里のワーハクタクや常連である森の魔法使いも参加しており、 珍しい人と妖怪との婚姻とあって天狗も取材に来たらしい。 それから暫く後。 相変わらずの繁盛を続ける屋台に、 相変わらずの姿があった。 相変わらず屋台の女将一行も、常連客も、常に笑っていた。 人々や妖怪達の、分け隔ての無い憩いの場として、長く愛されるであろう屋台。 人々はその屋台を親しみを籠めてこう呼んだ。 『鴛「雀」夫婦の屋台』、と。 余談として、その暫く後。 「産休」や「育児休暇」という看板が出て屋台が休みだったことも、 あったとかなかったとか。 ――――――――――――――――――――― と言うことで、一連のシリーズ…と言えるような物でもございませんが、 みすちー…いえ、ミスティアのシリーズはこれにて幕引きとさせていただきます。 観客の皆様、愉しんでいただけましたら拍手を送ってお帰りください。 お気に召しませんでしたら、どうぞご意見をお寄せください。 魔界神様は、お早めに歩いてお帰りください。 では、またいつの日か。 4スレ目 677 みすちーが俺の家に鰻を持ってきた で、食後に「デザートは、私でいい?」 って言うんだが、皆、俺はどうすれば良いと思う?
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no +信仰 コスト 戦闘力 HP df 労働 知識 探索 特殊能力 028u 0 000000 003000 100 10 6 3 6 暗闇,動物 「暗闇」を持つがルーミアより耐久力が劣るため、戦闘中に落ちてしまうことも多い。 どちらかといえば「真夜中のコーラスマスター」を狙ったり、とりさんトリオに使用したりと、攻撃的な面で使用されることが多いだろう。 文花帖に登場しないことは有名だが、花映塚には登場する。 味方の攻撃力を2倍にする「真夜中のコーラスマスター」を狙っていくなら花映塚独立は候補に入れるべきであろう。 動物でもあるので、「とりさんトリオ」と合わせてさとりペットショップを使えば凶悪な爆撃が起こせるかもしれない。 ver1.00からは味方のHP全回復もついたのでまさに一鳥二石である。 ルーミアと霊夢のような関係がミスティアと幽々子でも起こる。こちらは捕食されるほう 異変でゲットできず、サポカも少ないが、うまく使えれば攻守に優れた存在となるだろう。 攻撃 弱 通常弾幕 単体 戦闘力×0.3 1回 中 鷹符「イルスタードダイブ」 全体 戦闘力×0.2 1回 強 夜雀「真夜中のコーラスマスター」 味方全体 体力全快&攻撃力2倍* 1回 *倒されたユニットは復活しない 関連霊撃 なし 関連サポートカード 142s バカルテット ルーミア×チルノ×リグル×ミスティア 毎ターン⑨%成長 143s バカルテット+3 バカルテット×プリズムリバー 愛、おぼえているのか 147s とりさんトリオ 文×ミスティア×空 先制攻撃 198s さとりペットショップ さとり×動物系 動物は強いスペルが出やすい 273s 恋する夜雀 妹紅×ミスティア 毎日が鰻重 284s プリズムローレライ ミスティア×プリズムリバー 死のローレライ 293s 月の祝福 ルナチャイルド×永夜抄 月光強化(・A・) 298s 2ボスの誓い 2ボス3人以上 修行効果2倍 543s ルミスチは宵闇鳥 ルーミア×ミスティア 味方全員に回避能力 243s 永夜抄は月下の杯 独立宣言:永夜抄オンリー 244s 花映塚は緋色の彼岸 独立宣言:花映塚オンリー 250s 忘れ去られた百鬼夜行 独立宣言:脱人気キャラ 328S ♪もう歌しか聞こえない ミスティアのテーマ 歌しか歌わない 関連異変 真夜中の八目鰻マスター(解決率大幅上昇) 特別な入手方法 なし
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ミスティア No.040 タイプ:ひこう 特性:うたひめ(手持ちの先頭にいると野生人形が出現する確率が1.5倍になる) メロメロボディ(接触技を食らうと相手をメロメロ状態にするときがある) HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早 ミスティア 75 100 70 70 80 115 Hミスティ 90 60 80 80 110 90 Aミスティ 75 80 65 120 65 105 ミスティA 80 50 105 70 70 105 ばつぐん(4倍) --- ばつぐん(2倍) はがね/かぜ/こおり いまひとつ(1/2) ゆめ/けもの/しぜん いまひとつ(1/4) --- こうかなし だいち コスト:25(コスト技の威力:40) ミスティア 解説 覚える技レベルアップ 技マシン タマゴわざ 解説 そこそこの火力に高いSが持ち味の眠りに誘う夜雀の怪 似たステータスのカケラにAときこがおり、突破力・すばやさ共に向こうに分がある また、サブウェポンが貧弱であることも問題。アタッカー起用となるとマインドボム、ハートブレイク、はがねのつばさくらいしかサブ選択が無い 飛行ではミスティア系以外が覚えないうたうが運用のカギ 単調なアタッカーは他にいっぱい居る。使ってあげるなら一工夫必要 覚える技 レベルアップ みすちー ミスティア 技 - 1 うそなき - 1 ふきとばし - 1 こごえるかぜ - 1 がむしゃら - 1 チャージ - 1 エナジーライト - 1 かげうち - 1 ジャミング - 1 みがわり - 1 ブレイブバード 1 - つっつく 5 - すなかけ 8 - うたう 11 - かぜおこし 14 - つばさでうつ 17 - こうそくいどう 20 - ジャミング 23 - かまいたち - 27 じたばた - 30 みだれひっかき - 33 エアスラッシュ - 36 ひしょう - 40 フェザーダンス - 44 ハイパーボイス - 48 ほろびのうた - 52 ブレイブバード 技マシン マシン 技 威力 命中 タイプ 分類 PP 技02 ハートブレイク 80 100 あんこく 物理 15 技06 どくどく - 85 しょうき 変化 10 技07 かまいたち 60 - ひこう 特殊 20 技11 にほんばれ - - ほのお 変化 5 技13 れいとうビーム 90 100 こおり 特殊 10 技14 ふぶき 120 75 こおり 特殊 5 技17 みきり - - ゆめ 変化 10 技18 あまごい - - みず 変化 10 技27 おんがえし - 100 げんそう 物理 10 技30 シャドーボール 90 100 おばけ 特殊 15 技32 かげぶんしん - - げんそう 変化 15 技42 からげんき 75 100 げんそう 物理 15 技43 ひみつのちから 70 100 げんそう 特殊 20 技44 ねむる - - げんそう 変化 10 技45 メロメロ - 100 こころ 特殊 15 技47 はがねのつばさ 75 100 はがね 物理 15 技49 よこどり - 100 あんこく 変化 10 技50 マインドボム - 100 こころ 物理 20 秘02 そらをとぶ 90 100 ひこう 物理 15 タマゴわざ しぜんのねいろ ソニックブーム えんそう いやなおと タマゴうみ くろいきり くすぐる シャドーダイブ
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属性:知恵 レア度:R 水の魔術を操る大魔術師。 彼女の魔術は生まれついてもっている先天的なもので、技術としては確立される事はなかった。 特徴 闘神アルティル・コロシアム コラボイベントII 妖精 ミスティア Lv 1 MAX HP 75 SP 20 力 3 知恵 7 精神 5 素早さ 5 耐久力 4 幸運 5 ミスティア+ 卵保持数:2 Lv 1 MAX HP 83 SP 22 力 3 知恵 8 精神 6 素早さ 6 耐久力 4 幸運 6 ミスティア++ 卵保持数 3 Lv 1 MAX HP 91 SP 24 力 4 知恵 8 精神 6 素早さ 6 耐久力 5 幸運 6 スキル 知恵低下(単) フレイムⅠ(列) 毒解除(単) フレイムソード(単)
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リグル ロダ up0354 ほたるのおんがえし スレネタ ■1スレ目 リグル/1スレ/774 ■4スレ目 リグル/4スレ/994 ■6スレ目 リグル/6スレ/379 ■15スレ目 リグル/15スレ/568-569 リグル/15スレ/851-853 ■21スレ目 リグル/21スレ/176
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ミスティア9 Megalith 2011/01/11 「いたた……また今日はパックリといったな………」 そう呟いてる俺の視線が向かう先には、 赤い筋が数本走っている指の節目。 継続的に伝わってくる小さな痛みには、まだ慣れることができないものだ。 「まぁ、冬の冷たい水であれだけ洗いものしてたら当たり前か」 掻い摘んで行ってしまえば、そういうことである。 手伝うようになって半年ほど経った屋台での仕事。 俺には八目鰻を売り物として出せるほど上手に焼くことはできない。 更に言ってしまえば、人に出せる様な料理も作れる自信もない。 そんな人間が飲食店で確保できる居場所と言えば、専ら注文聞きか掃除か皿洗い位なものだ。 だが手伝っている場所は屋台。 注文を伝えるほどの距離なんてあるわけがない。 結果として残る労働は、洗いものと掃除。 そしてそれらの労働は、水を触らねば始まらないのである。 そうした結果が、目の前に点在する生乾きのかさぶたということだ。 できることならゴム手袋でも使いたいところだが、 残念なことに"こっち"では手に入り辛いものとなっている。 森の外れにある雑貨屋だか古道具屋だかには「探せばあるかもしれないぜ」と聞いたが、 同時に「あいつはふっかけてくることもある」とも言われた。 二人で仕事をしても雀の涙ほどの収入な屋台なのだ。 こんな事で大事なお金を変に使いでもすれば、 文字通り雀の涙を見る様な貧しい生活になるかもしれない。 そうなるくらいであれば、こんな傷どうとでもなるというもの。 と言いたいところだが、小さな悩みの種くらいにはなってしまったようだ。 今一歩のところで我慢が足りない自分に、少々情けなく感じる。 「○○~、そっちはもう片付いたの~?」 「うおぉぅ!?」 突如真後ろから掛けられた声に、俺の口から上ずった声が飛び出してくる。 「何してたの?……って、ちょっとその手!」 「えっと……あぁ、いや、このくらいどうってこと無いから」 屋台の店主-ミスティア-は、俺の手をとり声を荒げ始める。 「こんなに割れちゃって……血もいっぱい………」 「大丈夫だよ、見た目ほど痛くはないから」 そう言いながら、ミスティアへと笑いかける。 なんでもない痛みと、なんでもない痩せ我慢。 そういうことでこの件を片づけるために。 「えっと……あ、そうだ!」 途端に何かを思い至ったのであろうか。 彼女は身につけている割烹着のポケットから何かを取り出した。 差し出された手は、とても屋台で鰻を焼いている手とは思えないほど綺麗に見える。 普段の快活な彼女の物とは想像し辛いほど、肌は白くきめも細かい。 そんな掌を広げた上にあったのは、ガラス製の小瓶が一つ。 一般的な形とは外れ、平べったくやや薄い印象のある形。 意匠などは全く感じられないが、ある種の精巧さを感じる作りが見てとれる。 「それは?」 「今日薬師さんの所の兎さんからもらったの。 火傷とか傷によく効く軟膏だって」 言われてみれば、確かに"外"で見た軟膏の入れ物によく似ている。 素材が器用にガラスで作られていたため、 外にあったのと同じものとは考えも及ばなかった。 「ほら、こっち手出して」 「…え、っとと」 そう言いながら、ミスティアは俺の手を半ば強制的に引き寄せる。 引っ張られた右手の先では、鋭い爪が伸びる彼女の左手が、 いつの間にか開けられていた軟膏の小瓶を器用に摘まんでいる。 そして右手の人差し指で軟膏を一掬いし、それを引っ張ってきた俺の指へと向かわせる。 「もう…こんなひどくなるまで放っておいたなんて……」 どこか悲しそうな、はたまた痛々しそうな眼差しで、 ミスティアは俺の手に軟膏を塗り始める。 彼女の細い指が、優しい動きで傷へと薬を擦り込ませていく。 そっとした力加減で、傷口の周りを優しく丹念に。 「いや、ミスティア、自分でできるって……」 「いいのっ!じっとしててっ!」 気恥ずかしさから交代を申し出たが、 もはや捲し立てる様に大声でそれを棄却するミスティア。 こううまでされてしまえば、こちらとしてはもう何もできない。 言われるがままに手を差し出し、大人しく傷口の手当てを受けることにした。 「…………ねぇ」 ふと掛けられた声は、消え入りそうなほど弱々しく。 「……あんまり、無理しないでね?」 切なそうな、悲しそうな眼差しが、俺を見上げる。 「…けど、俺はこのくらいしかできないからさ。 ミスティアみたく、料理のことはできないし」 「それは、そうだけど……」 苦々しく笑う俺に、少しムスッとした表情のミスティア。 「ずっとお客さんの相手もしながら料理もしている君に比べれば、 俺のやっていることの方がずっと楽だよ」 「…………けど」 幾らか視線をそらし、数泊の間を置いて彼女は次の言葉を出す。 「○○がこんな手じゃ……手、繋げられないじゃない………」 いつも買い出しや材料の調達に行くとき、 人目につかないところで俺たちは手を繋いで歩いている。 彼女から言いだしたことだが、今となっては習慣に近いものとなった。 繋いでいる時の彼女がとても楽しそうに微笑んでくれるため、 俺の方がそれ目当てで楽しみにしているのかもしれないけど。 そんな彼女も、今はうっすらと赤らめた顔を伏せる様に下げ、 それでも手だけは尚薬を塗り込んでくれている。 そんな仕草が、どうしようもなく愛おしくて。 こういう所を見せられるたびに、俺はまた彼女しか見えなくなっていく。 半年前からずっと一緒にいるというのに、 まだまだ俺は深く沈んで行くことができる。 それが、どうしようもなく幸せで仕方ない。 「って、ちょっとぉ………」 既に塗り終わった方の手で、ミスティアの頭を撫でる。 ただただ、何があるわけでもなく、そうしたいから。 ふわふわとした薄紅色の髪が、くしくしと音を立てて揺らぐ。 「手は繋げられないかもしれないけど……」 彼女の頭に乗せた右手を動かしながら、俺は続ける。 「だからって、何も触れられないわけじゃないからさ」 切れたのは指の節目であり、掌の方はなんともない。 手を繋ぐとなると、どうしても指を握らざるを得ないため、 傷口に圧力がかかり、結果として多少の痛みが出てしまうかもしれない。 だがこうして掌で触れる分であれば、何も痛くはない。 「……もぅ…………はい、終わりっ」 少し拗ねたような声を漏らし、ミスティアは薬瓶の蓋を閉める。 幾らか赤みの増した頬を見る限り、照れているという方が正しいだろう。 反らした顔とは正反対に、背中の羽は小さく動き続けているのも、照れ隠しにしか見えない。 薄々ニヤけつつも処置の終わった自分の両手を見てみると、ひび割れにしっかりと軟膏が馴染んでいた。 大して傷に沁みることもなく、既に痛みも引き始めているような気もする。 流石は幻想郷一の薬師ということか。此処まで効き目がすごいと、少しだけ恐ろしくさえ感じる。 「どう?効いてる?」 「うん、流石は八意先生の薬だね。ちょっとは沁みるけど」 「自業自得よ。そんなになるまで放っておいたんだもん……」 「いや、まぁ………うん、ごめん」 そっぽを向いて怒っているようにしている彼女も、 その表情には何処か寂しそうな色が窺えた。 一人だけ変な意地を張って頑張って、結果としてミスティアを心配させてしまった。 彼女の役に立つためと頑張って、結果として彼女に悲しい顔をさせてしまった。 悪いのは俺だ。 そう思った次には、口から謝罪の言葉が出ていた。 「……よしっ!」 突然すっくと立ち上がり、気合を入れるミスティア。 「明日から私も洗い物するからっ!」 「………って、えぇ!?」 一・二拍程の間を挟み、俺の口は驚愕の声を上げる。 「だ、だって君は調理と接客があるじゃないか! その上洗い物までなんて……」 「もとは全部一人でやってたのよ?だいじょーぶっ!」 「いや、だけどさ………」 「いいのっ!その代わり……」 「○○も、明日から八目の焼き方しっかりと覚えてもらうからね!」 太陽と見間違う程の、底抜けに明るい笑顔を向けているミスティア。 ニィと開いた口元からは、鋭そうな八重歯が二つ顔を覗かせている。 「それで、早く料理の方も一緒に手伝ってもらうんだから!」 悪戯っぽい笑みを浮かべて、彼女はそう言い放った。 あぁ。 こりゃ、一手やられたな。 そんな風に言われてしまえば、もっと頑張るしかないじゃないか。 "一緒に"手伝う為。 彼女らしい、実に可愛い提案だ。 「……うん。明日からしっかり教えてもらうよ、ミスティア」 「あいさ!ただし、私は厳しくいくからね~」 「できるなら、手取り足取りしっとり優しく、の方がいいなぁ」 「な、なによそれ!」 「いや、冗談冗談。…ね、冗談だから爪向けないで!?」 互いに冗談めかして、ドタバタとふざけあって、一緒に笑いあって。 今日もまた、いつも通りに時が過ぎていく。 冷たい風が吹く森の一角、小さな屋台でのとある一コマ。 勢いに任せて書き綴っただけの物を読んで頂きありがとうございます。 軟膏を塗る、というシチュが真っ先に浮かんだのがみすちー。 私のイメージとしては、一緒に屋台を手伝って、一緒に笑いながら料理やお酒を出して、 店の準備をしているときにこぅ甘い雰囲気になるっていう感じです。 みすちー可愛いよみすちー。 31スレ目 421(2011/02/14) 去年は何もできなかったけど、今年のこの日はこれくらいはできるようになった。 来年はもっとかわいく嫁を描けるようになりたいってことでバレンタインみすちーです。 文章はかけないが絵は修練あるのみ Megalith 2012/01/02 「ねぇ…どう?」 何かを問われている。それはわかる。 目の前で座っている彼女が俺に意見を求めているのだ。 では、その意見と言うのは何を言えばいい。 何について、俺は言及すればいい。 新年の挨拶を交わして、その次の瞬間には正座を強いられ、 いつの間にやらこうして畳の上で向き合わさせられている。 二人の間に挟まれているのは、広げられた漆塗りの重箱。 広がった二つの額縁に納められていたのは、見事なまでの"作品"。 水気を帯びた鮮やかな光を返す黒豆と、白と黄の対比が映える錦玉子。。 紅白の彩りが目を惹く蒲鉾と、焼き目の色合いが絶妙な加減で付いている伊達巻き。 その隣に飾られているのは、数の子の代わりのとんぶりだろうか。 飾り切りの人参や筍に、大根と里芋が出汁の香りを漂わせる見事な煮しめ。 その存在感を惜しげもなく放っているのは、 輝かしいばかりの照りと甘く香ばしい匂いが食欲をそそる鯉の煮付け。 見事としか言いようがない、幻想郷流のお節料理が広がっていた。 目の前に広がっているものがそれだけであれば良かった。 屋台を抱えている彼女が手塩にかけて作ってくれた御馳走に対して、 先ほどから唸っている胃の感想を代弁すればいいだけなのだから。 だがその少し先に広がる光景に目が行かぬほど、俺は食欲だけに傾倒しきった人間ではない。 大部分を占めるのは、日に焼けた畳の青さとは対照的な、風格の漂う桔梗色。 女性としての淑やかさや奥ゆかしさが、余すところなく引き出される染め具合の絹の生地。 所々に鏤められた金糸がその輝きで縁取るのは、風に浚われゆく桜花の図柄。 桔梗色の濃淡がたゆたう中、その儚さを糸の一つ一つが語りかけてくる。 帯締めは雰囲気を引き締める様な、清らかな新雪の如き銀白。 遠目では気付かないほど謙虚に、しかし精巧にあしらわれた、淡い桜色の菊花と銀糸で織られた大輪の雪花。 銀白の帯地とやや淡い紫とが隣り合い、互いが互いをそっと引き立て合う。 それを一欠けらの不自然さもなく身に纏うのは、いつもいつも屋台で隣り合っている筈の彼女。 普段こそ明るくて、快活で、勝気で、意味もなく強気である夜雀の彼女が、 今は見目麗しいなどと言う表現では最早足り得ぬほどの艶やかな姿ではないか。 決して長くはない薄紅色の後ろ髪を結い上げ、それを留めた一本挿し簪の先で小さく踊る梅の花。 露になった首筋とうなじが、ひどく煽情的で艶めかしい色香を放つ。 薄化粧の施された顔を覗き込むと、頬の朱が増し毛に覆われた尖り耳が忙しなく動き回る。 しゃなりと流れるような姿勢で座った背後から覘く翼も、落ち着きが無いのか時折パタパタと風を切っていた。 世話になっている屋台の店主であり、少なからず好意を寄せている女性であり、 人の視界を奪い狂わせる夜雀、ミスティア・ローレライの圧巻ともいえる艶姿に茫然とせざるを得なかった。 「その、ね……だからあの…どう、かな?」 変わらず、何かを問われている。それはわかるのだ。 だがもじもじと落ち着きを失いながら要領の全くつかめないミスティアの問に、 この状況をたたみ掛けられ混乱している俺の脳味噌では解答するのは困難のようだ。 こういう時にとっさに良解答が出せる者を甲斐性のあるものと呼ぶのだろうが、 残念なことに俺には甲斐性など無いとすっぱり周囲に言い切られている。 だからこうして大切な女性がこうして何かをしてくれている時に、ぼうっと呆けることしかできないのだろう。 段々と不安そうな色に変わってきたミスティアの表情に気付き、そこでなんとか意識をしっかりと立て直す。 ここで言を発し状況を動かすべきは男であり、それができてこそ男と呼ばれるのだ。 一つ息を吐いて腹を括り、動きの鈍い頭を無理やりにでも動かして紡いだ言葉を率直に告げる。 「うん、綺麗だ。本当に。今まで見た何より綺麗だよ、ミスティア」 吐き出した言の葉に多少の恥ずかしさは込み上げてくるものの、 こうして少なからず俺の為に着飾ってくれた彼女の心を思えばこの程度と言うものだ。 ミスティアの努力と思いにきちんと答えるためにも、真っ直ぐに目を見て、真っ直ぐに言葉を発する。 ほんの数瞬の間を挟み、ミスティアは顔を伏せ頬を完全に紅潮させる。 やがて幾らかの時間を挟み顔を戻した彼女の表情は、何処か困ったような笑い顔だった。 「なにさ、やればできるじゃない…この甲斐性なし」 「これでも本当に必死なんだけどね…」 「……まぁいいや。今日は許したげる」 深く、呼吸を一つして、再び顔を上げるミスティア。 「へへ…今年もよろしくねっ」 浮かべていたのは、太陽と見まごうようないつもの明るい彼女の笑顔だった。 Megalith 2012/05/07 暮六つ時、人里近くの湖畔。 いつもの散歩道を歩いていると、僕にとっては聞き慣れた、 しかしいつまでも聞いていたくなる歌声を耳にした。 彼女は今日も来ているらしい。少しだけ歩く速度を早める。 「~♪~~♪ ……ふぅ」 一通り歌い終わったのか、一息ついて水筒を手に取る少女に、拍手を送る。 「いつ聞いても大したもんだね、やっぱり」 「あ、○○……聞いてたんだ?」 「途中からだけど」 すたすたと湖畔を歩き、彼女から少し離れた木の幹にもたれる。 僕と彼女の間に築かれた、微妙な距離。 「もう……言ってくれればよかったのにー……」 「真剣に歌ってる人の邪魔なんて出来ないよ」 ジト目で睨んで来るが、元々目尻が下がり気味の彼女がやってもあまり怖くない。 半分本気で思っていた理由を口にして、やり過ごす。 「別にそこまで気にしなくていいんだよ?○○になら止められても怒らないから、私」 「僕がしたいからしてるんだ。そっちこそ気にしないでよ」 無条件に信頼してくれている事にむず痒さを覚えつつ、定型的な返答をしておく。 彼女との会話も楽しいが、彼女の歌を聞く事もまた楽しみの一つだからだ。 「うーん……○○が聞いてくれてるんだって知ってたら、もうちょっと気合入れたのにな」 「……あれで真剣じゃなかったと仰いますか」 「真剣だよ? ただ何ていうのかな、真剣を注ぎ込む割合というか、うん。そんな感じ」 一人で結論付けて頷くミスティア。彼女の歌はどこまで伸びるというのだろうか。 僕の予想する天井をさらに突き破ろうとする彼女に、思わず苦笑してしまう。 「ただでさえ聞き惚れるくらい上手いのに。 セイレーンよろしく僕を虜にするつもりかい?」 「セイレーン?」 古今東西の異形が蔓延る幻想郷においても通じないのだろうか。 首を傾げるミスティアに軽く悲しき歌姫の話をしてやる。 ※ 「――とまあ、こんな感じなお話なわけ。……ミスティア?」 一通りの逸話を話し終えると、ミスティアは何故か慌てたように僕へと詰め寄る。 「わ、わたしは……っ」 元々木に寄りかかる姿勢だった為、僕には逃げ場所なんてモノは元々無く。 僕と彼女の距離は最早子供一人挟めない程になってしまっていた。 視界に映るミスティアの表情は、どこか必死さを含んでいる。 「わたしは、○○の事を殺したりなんて、しないよ……っ! だって……だって、わたしは、わたしは――」 「あの、み、ミスティア……ちょっと、ちょっと落ち着いて!」 何とかミスティアを押し留めようと試みてはいるが、 彼女の耳には僕の声が届いていないようである。 (歌姫の話だから喜んで聞いてくれると思ったんだけどな……どうしよう) 内心焦り始めた○○に、彼女の口から漏れでた一言が追い打ちをかける。 「――わたしは、○○の事が好き、だから……殺したりなんて、するわけ、ないじゃない……」 それだけ言い切ると僕の胸に顔を埋めて泣き始めるミスティア。 本来なら嬉しさのあまり有頂天になっていても可笑しくはないシチュエーションではあるのだが、 如何せんこうなるに至ったまでの経過で、頭の中は混乱の局地にあった。 (え、ええー……? ちょっと待って、ちょっと待ってってば…… ミスティアが焦ったのは人を引き寄せて殺してしまうセイレーンに例えられた事についてで…… それが僕に何故か繋がり、僕を殺すわけなんてないと否定してくれた、と。 それはとても嬉しいんだけど、殺さないに至る理由が――) 「僕が……好き……?」 半ば呆然と呟いた僕の言葉に呼応して、腕の中のミスティアが頷く。 何かを口にしようとしてはいたみたいだが、ぐしゅぐしゅと鼻声で喋るに喋れなかったようである。 自身の呟きと、彼女の応答。 それは、つまり――。そっと腕の中のミスティアを抱きしめる。 びくりと彼女越しに見える翼が震えたように見えた。 「……ごめん、さっきは嫌な想いさせちゃったね。それと、有難う。 ――こういうのは男から言うもんだって、自分で決めてたはずなんだけどなぁ……先を越されちゃった」 相変わらずぐしゅぐしゅと鼻を啜りながらも、ようやく僕を見上げてくれた。 目元が早くも赤くなりつつあるミスティアに、今出来る精一杯の微笑みを返す。 「言うのが遅れちゃったけど、僕はずっと、ずっと前から君の事が好きだった。 それでその、色々と順番とか、そういうの滅茶苦茶になっちゃったけど。 ……僕と、付き合ってくれませんか、ミスティア」 「……うん……うん!」 その時僕の目に映っていた彼女がどんな表情をしていたかは――僕だけが知り得る秘密である。 セイレーンの話というものは、正確にはもっと違う内容であります。 しかし、○○が知っているのはラノベやゲーム等に付随する改変されたお話や設定。 共通項は、歌う事で個人や船舶を引き寄せ、海の底へと沈めてしまう事。 Megalith 2016/02/03 「この辺で良いかなー」 魔法の森と人間の里の間にある街道沿いで、引いていた屋台を停める。 太陽は西へと沈みかけており、辺りは薄暗く、日が短くなっている事を実感する。 うだるような暑さが続いた今年の夏も、気が付けば秋へと移り変わっているみたい。 「さて、準備準備ーと」 車輪に車止めを噛ませて固定、今日の営業の準備を始める。 「~♪」 歌を歌いながら準備を進めていく。 仕込みは日中にほとんど終わらせているが、日替りの献立はいつも開店準備中に決めている。 今日は山菜が沢山採れたから、炒め物にしようかな。 でもでも、天ぷらも捨てがたい。 こうして悩んでいる時間はとても楽しく、あっという間に時間が過ぎてしまう。 気が付けば日は完全に落ち、周囲は暗闇に包まれている。 そろそろ開店としよう。 のれんを掛けに表に回った所で、人間の里方面からふらふら歩いて来る人影を目にする。 顔は俯いており、表情は見えないが、足取りに力強さは感じられず、今にも膝から崩れ落ちそう。 どこを目指しているのかな。 太陽が落ちた後、多くの妖怪が活動を始める。 このままほっつき歩いていたら、間違いなく妖怪の餌食になるだろう。 まあ、この辺は街道も敷かれており、周囲も開けている為、そうそう妖怪に襲われる事はないと思うけど。 この先森の入り口に近づくにつれて危険は増してくる。 もしかして死にに行くつもりなのかな。 そうであったとしても、自分には関係のない事。 早々にのれんを掛け、調理場へと戻る。 仕込みの続きをしないとね。 歌いながら仕込みを続けている私の耳にも、微かな足音が聴こえてくる。 近くを先程の人間が歩いているのかな。 気にせず仕込みを続けていると、先程まで聴こえていた足音が止んでいる事に気付く。 ふと気になって調理台から顔を上げる。 のれんの先に人影。 さっきの人、お客さんだったのかな? だけどのれんの下から見える足は一向に動かず、立ち止まったままだ。 初めてだから入り辛いとか。 もしお客さんだったとしたら、わざわざ人間の里から歩いて来てくれたんだ。 出迎えなければ失礼というもの。 「よいしょっ……と」 歌を中断し、調理台を離れる。 外に出ると、屋台の前には一人の男性が立っていた。 月明かりに照らされた顔は、頬がこけており瞳に生気はない。 まるで、世の中の全てに絶望してしまっている様な表情だった。 目の前に現れた私に対して、彼は虚ろな視線を寄越す。 よく見ると、瞳に涙が浮かんでいた。 ……どうしよう。 大人の男の人が泣いている場面に遭遇した事がない為、どう対応していいのかがわからない。 と、とりあえず商売の基本は笑顔って言うし、笑っとこうかな。 私が混乱に陥っている最中、不意に彼が言葉を発する。 「さっきの歌は君が歌っていたの?」 「う、うん」 いきなりの質問に驚いてしまい、少し返答に詰まってしまう。 「そうなんだ……」 それきり顔を俯かせ、黙ってしまう。 えぇっ!? 私何か変な事言った? これ以上彼を刺激してはいけないと思い、しばらく立ち止まっていると、 微かに鼻をすする様な音が聴こえてくる。 「……くっ……ひっく」 「!!?」 どうしよう!? 事態が悪化した!! 流れる涙を拭う事もせず、ただ泣き続けている彼と、呆然と突っ立ってる私。 こんな所、誰かに見られたら…… 噂は尾ひれが付きまくった上で、幻想郷中を駆け巡るに違いない。 それだけは何としても阻止しなければならない。 それに、何となくだけど、この人を放っておいてはいけない様な気がした。 まずは人目のつかない所へ連れてこう。 「あの……とりあえず、座らない?」 何とも締らない誘い文句で、私は屋台へと案内した。 客席に座った彼と、調理台を挟んで正対する。 嗚咽を漏らす程に泣いていた彼も、少し落ち着きを取り戻したみたい。 ただ、表情は依然暗いままだ。 「どうぞ」 酒を注いだ徳利を渡す。 「……あ、ありがとう」 何か考え事をしていたのか、少し間を置いてから返事をして、酒を受け取ろうとするが、 「ありゃー」 「ご、ごめん」 彼は手を出す際に目測を誤ったのか、徳利に手をぶつけてしまう。 衝撃で私の手から離れた徳利は、調理台の先にある客席の天板に落下する。 「大丈夫? 服に掛かってない?」 「大丈夫。ごめんなさい、折角注いで貰ったのに……」 「気にしないで良いよー。私のおごりだし」 幸いな事に中身が零れただけで、徳利自体は割れていない。 布巾で濡れた部分を拭いながら、改めて酒を注いで渡す。 「どうぞー」 「ありがとう」 今度はしっかりと受け取り、猪口へと注いだ後、一口含む。 「……おいしい」 「でしょう? この前お客さんから貰ったんだー」 「お客さんに貰ったもの商売に出すのか……」 「えっ、普通じゃないの!?」 「普通ではないかな……おいしいけどね」 余程気に入ったのか、彼は徳利をすぐに空にしてしまう。 「おかわりいる?」 「いいの?」 「もちろん。徳利、取って貰っていい?」 彼は周囲をきょろきょろと見回している。 徳利ならすぐそこにあるのに……って、あ。 自分の能力を今更になって思い出す。 「あのさ、もしかして目が見えづらくなってたりする?」 「!? うん……」 「あーやっぱりかー」 「どうしてわかったの?」 「実はね……」 私は自分が妖怪である事と、私の歌の効果について説明する。 聞いている間、特に驚いた様子は見せなかった。 急に目が見えづらくなったら、もっと動揺するかと思うんだけど…… 元々目が悪かったとかかな? あんまり詮索するのも失礼だと思い、口には出さなかった。 しかし、まさか自分の能力すら忘れてしまうとは…… 鳥頭などと周りからからかわれているが、こうなると認めない訳にはいかなくなってくる。 これも全て紅白の巫女の所為だ。 月が隠れた夜以降、夜に人前で歌う事を禁止されている。 まあ、誰かに聴いて貰う為に歌っている訳じゃないし、聴かせた所で煙たがられるだけだから、困る事はないんだけどね。 ただ、頭ごなしに命令された事が腹立たしかったので、腹いせに人間の里で歌いまくってやったら、 速攻で霊夢に見つかり酷い目に遭わされた。 以降、人間の里は出入り禁止になり、人前で歌う機会は失われた。 それから、この能力を意識する機会はほとんどなくなってしまっていた。 足音が聞こえた時点で歌うのやめておけば良かったな。 霊夢にばれたらただじゃすまないだろう。 「さっきうまく受け取れなかったのも目が良く見えなかったからだよね? ごめん、謝るから霊夢にだけは言わないで~」 泣きそうになりながらに懇願する私に、 「えーと、大丈夫、だよ?」 何とも頼りない語調で、約束をしてくれた。 「そういえば、さっき私の歌について聞いてきたけど、何かあった?」 屋台の外で遭遇した際、開口一番に問われた事を疑問に思い訊いてみたら、 「げほっ、がはっ、ごふ」 おもいっきりむせさせてしまった。 「大丈夫!? ごめん、訊いちゃ駄目な事だった?」 「うはっ、いやっ、全然……」 あらら、お酒が変な所に入っちゃったかな。 「お水いる?」 食器棚から取り出した湯飲みに水を注ぎ、彼に手渡す。 「かはっ……ありがとう」 咳が止んだ所で、水を口に含む。 だいぶ落ち着いてきたみたい。 ただ、彼はそれきり黙り込んでしまった。 あーまずったなー。 普段は一見さんへの干渉は最低限に止めている。 話し掛けられるのが嫌な人も居るしね。 ただ、今回は状況が特殊だったし、自分の歌に関係している所にも興味を引かれて、つい訊いてしまった。 「ごめんね。言い辛いなら無理して言わなくても大丈夫だよ」 少し残念だったけど、無理矢理聞くのは趣味ではない。 私の謝罪に対し、彼は少し驚いた顔をした後、 「ええっと、そうじゃなくって……」 恥ずかしそうに瞳を逸らせながら、 「君の歌声がすごく綺麗で、もっと聴きたいなって思ったから……」 私の歌を褒めてくれた。 私の歌、褒められちゃった。 妖怪達からは疎まれ、人間には聞いて貰う事すら許されない。 そんな生活が続いていた為か、誰かに自分の歌を肯定して貰う事なんて考えもしなかった。 元々誰かに聞かせる為に歌っていた訳ではないから、周りの反応にはそんなに興味がないつもりだったんだけど…… こんなにもまっすぐに、自分の歌を受け入れられたのは初めてだ。 褒められるのって、こんなに嬉しいんだ。 頬の筋肉が言う事を聞かず、勝手に緩んでいくのを感じる。 「あの、えっと……ありがと」 嬉しさと恥ずかしさで胸がいっぱいになってしまい、気の効いた言葉を返せない。 客商売、そろそろ馴れてきたと思ってたんだけどなあ…… 私は恥ずかしさのあまりに黙り込んでしまう。 向こうも同じ気持ちだったのか、しばらく無言で互いの顔をちらちら伺う様な時を過ごす。 いい加減何か言わないと。 うまく働かない頭を無理矢理動かして出てきた言葉は、 「えっと……もし良かったら、もっと聴いてく?」 恥ずかしさを更に助長させる様な内容だった。 とは言え、一度出てしまえば引っ込める事はできない。 どうしよう…… 何とか誤魔化そう、と考えていると、 「うん、是非」 笑顔で頷いてくれる彼。 出会ってから四半刻程。 憂いを帯びていた表情を、ようやっと変える事ができた。 それから、私は歌を好きなだけ歌いながら酒を出したり料理を作ったり、楽しい時間を過ごす事ができた。 いつもは普通のお客さんが居るから歌えないけど、今日は違う。 だって、目の前に居る彼は、私の歌を聞きたがっている特別なお客さんなのだ。 自分の歌を望んでいる人に聞いて貰う。 今まで知らなかった喜びを前に、自然と歌にも力が入る。 こんなに楽しく仕事ができたのは初めてだ。 彼も私の歌を聞きながら笑ったり、聞き入ったりしていた。 時折泣きそうな表情にもなっていたから、感受性が豊かのかな。 彼は最近ご飯もまともに食べられていないという事だったので、沢山の料理をご馳走した。 調子に乗って大量に作ってしまったが、綺麗に平らげてくれた。 相当お腹減ってたんだなあ…… 今日、他のお客さんは誰も来なかった。 開店してからずっと、彼と二人きり。 とっても楽しい時間。 気が付けば、夜半に差しかかろうか、という時間になっていた。 そろそろ閉店しないと。 胸に湧き上がる名残惜しさ。 他のお客さんに対して感じるものとは、同じ様で少し違う感覚。 何が違うのかは、考えてもわからなかった。 「ごめんね、そろそろお店閉めないと……」 折角楽しんでいた所に水を差してしまう形となり、声が段々尻すぼみになってしまう。 「そっか。ごめんね、長居しちゃって」 残念そうな表情を浮かべたのは一瞬で、 「今日は本当にありがとう。凄く、楽しかった」 満面の笑顔を向けて、お礼を言ってくれた。 その表情を見て、少し安心する。 「元気になった?」 「うん。えっと、そんなに元気なさそうに見えたかな?」 「見えたよ。放っておいたら死んじゃいそうだったもん!」 「そっか……ありがとう、助けてくれて」 「なにそれ? へんなのー」 軽口を叩ける程には回復したみたいだね。 彼は上着から財布を取り出し、勘定を払おうとする。 「お勘定は良いよ。今日は私のおごりだから」 「いや、悪いよ……料理もお酒も沢山頂いちゃったし」 「いいからいいから」 元々は私が連れ込んだんだ。 ここでお勘定を頂く訳にはいかない。 「でもなあ……」 「いいから! じゃあさ、今度また遊びに来てよ。その時はちゃんとお勘定頂くから」 「わかった。必ず来るよ」 「うん。私の歌、聴きに来てね。屋台、しばらくこの場所で営業してるから」 「わかった。今日はありがとう。ご馳走様でした」 のれんを掻き分けて外へと出て行く。 「ありがとうございましたー……って、名前、まだ聞いてない!」 大事な事を忘れていた。 急いで調理台を離れ、帰路についた彼を追い駆ける。 これは出会い頭に泣かれるという事件の所為で忘れてしまっただけだ。 私が鳥頭だからという理由ではない。断じて。 屋台から少し歩いた所で、改めて名前を聞く。 「ごめん、忘れてたね。僕の名前は○○だよ。君の名前は?」 「私はミスティアよ。宜しくね、○○!」 去り際の自己紹介。 本来なら一番最初にするべきなんだけど、出会いからして普通ではなかった私達にとって、とてもふさわしい形だと思えた。 「ありがとうございましたー」 今日は珍しく開店からずっとお客さんが途切れなかった。 商売しているとは言え、半分は趣味みたいなもの。 お客さんを積極的に呼び込む努力はしていないから、一日通して誰も来ない日も珍しくないんだけど、今日は特別忙しかった。 久し振りに繁盛したという事もあり、少し疲れたな。 「さて、片付けないと」 お客さんが使っていた食器を片付ける。 水がそろそろなくなりそうだから、汲んでこないと。 あれこれ考えながら食器を洗っていると、お客さんがのれんを潜って入ってくる。 「こんばんわ」 「いらっしゃいませーって、○○じゃん! こんばんわ」 ○○を屋台に連れ込んでから二週間。 あれから週に一、二回程の頻度で遊びに来てくれている。 「ごめんねー今食器片付けるから、お酒先に出しちゃうね」 一升瓶から徳利に酒を移し変え、猪口と共に渡す。 「ありがとう」 にこりと笑って受け取る○○。 初めて会った時に比べて、表情は大分明るくなっている様に見えた。 「最近ちゃんと笑える様になってきたね」 「そうだね。これもミスティアのお陰かなあ」 「えぇ? 私何もしてないよ」 「何というか、ここに来る為に毎日働いている様なものだし」 「うちの屋台、そんなに気に入ってくれたんだ」 「うん。料理もおいしいしねー」 そうなのか。他の屋台に行った事がないから、自分の屋台がどれ位良いものなのかよくわからない。 でも、自分の料理の腕を褒められて、悪い気はしない。 「まあ一番大きな理由は、可愛い店主の歌が聞けるってとこだけどねー」 さらっと恥かしい事を言う○○。 うまそうに酒を飲んでいるその顔は、普段のそれと変わらない。 恥ずかしい事言ってるって、自覚してないのかな? 臆面なく口に出す事が良いかどうかはさておいて、せっかく褒めてくれているんだ。何か反応しないと。 「え、えと……ありがと」 こんな時に限って口がうまく回らない。 なんだよ! これじゃあ私が恥かしがっているみたいじゃん! 仕事をしている上で、酔っ払った客に容姿を褒められるという事は割と多い。 いつもみたいに適当にあしらえば良いはずなんだけど…… なぜか、他の人と同じ対応が、できなかった。 私の様子がおかしい事に気が付いた○○。 心配そうな視線を寄越してくるが、何か思う所があったのか、顔を俯けてしまう。 どうやら自分の発言が今更になって恥かしいものだと気が付いた様だ。 片や無言で洗い物を続け、片や無言で酒を舐める。 以前もこんな事あった様な…… 一向に成長しない自分達に、少し可笑しくなってしまう。 ○○も同じ事を考えていたのか、同じ間で吹き出していた。 場に漂っていたこそばゆい空気が緩和される。 洗い物も丁度終わったし、改めていつもの流れに戻すとしよう。 「お待たせ。さて、今日は何にしますか?」 私の料理をおいしいって言ってくれたんだ。 折角だから、存分に味わって貰おう。 にこにこしながら品書きを眺める○○。 その姿を見て、私の表情も自然と緩んでいった。 「ミスティア、酒が空だぞ~」 「あ、私も」 「あんた達もう少し慎ましやかにできないのかしら」 今日は魔理沙、霊夢の二人が来店している。 二人共たまにふらっと訪れる事があるけど、二人一緒に来るのは珍しい。 態度はふてぶてしいが一応お客さんだ。 徳利に酒を入れて二人に渡す。 「ありがとう。そういや最近店の場所変えないのね。何かあったの?」 酒を受け取った霊夢が何となしにという様子で聞いてくる。 私の屋台は場所を変えながら営業している。 場所の選定に明確な基準はない。なんとなくで決めている。 営業する期間も特に決まっておらず、飽きたら別の場所に移動する、という感じだ。 通常なら遅くても二週間に一回は移動している為、常連の人達は普段と周期が違う事に気づいている様だ。 理由は……○○にしばらくここに居るって言ってしまったから、移動し辛いという所が大きい。 ただ、場所を変える事に拘りはないので、居続けても別に問題はないんだけど。 「どうした? 男でもできたか?」 魔理沙が左手の小指を立てながら、下品な笑みを浮かべている。 一つ問題があるとしたら、ことあるごとに理由を聞かれる事ぐらいかな。 この手の質問はこの一週間で片手で足りない程されている。 以前別のお客さんに○○の事を素直に教えた時は、変な方面に話が行ってしまった。 最近はめんどくさいので、適当な事を言って流しているのだけど。 「だんまりか? 実はなあ、この前見ちゃったんだよなーお前が男と二人で居る所」 「いや、一人で来るお客さんも居るから、よくある事だよ」 常連客の中には、一人で来店する方も多い。 中には、楽しく話ができる関係の人妖も、結構居たはずだ。 私の反論を聞いても、魔理沙はにやついた表情を崩さない。 気持ち悪いなあ…… 「いやー私は屋台の外で二人で話してる所を見たんだよ。お前、普段客が帰る時、わざわざ外に出て挨拶しないだろ?」 「んなっ」 ○○を見送っている所を見られてたのか。 最初の来店の時、たまたま外に出て別れの挨拶をした事が、以降も私達の中で習慣となっている。 さすがに他のお客さんが居る時はしないが、○○は遊びに来た時大体閉店まで居てくれるので、何回もそのやりとりをしている。 その内の一回を、魔理沙に見られてしまったのだろう。 不覚だった……いや、別に何もやましい事はないから良いはずなんだけど。 二人の間の秘密めいたやりとりを暴かれてしまった事が、何故か面白くなかった。 「なんだよ! 見てたんなら声掛けてくれれば良いのに」 心がざわついていたのが言葉に出てしまったのか、少し口調が乱暴になってしまう。 そんな私を見て、魔理沙はおろか、霊夢までにやにやしている。 底意地の悪い奴等だ。 「そう怒んなって。相手は人間? それとも妖怪?」 「相手って何だよ……○○は普通の人間だよ」 「うっわ○○って……名前で呼び合う仲なの!?」 「向こうが○○って名乗ったから呼んでるの! いちいち突っかからないでよ……」 魔理沙が質問して、霊夢が私の発言の揚げ足を取る。 こうなるからこの話題には触れたくなかったのに…… 「そんで、お前はその○○ってえののどこに惹かれた訳?」 「だからそんなんじゃないって! えっと、ここで初めて屋台を開けた時に辛そうな顔して前を通ったから、元気付けようとしたの」 「それからそれから?」 魔理沙、霊夢共に興味津々という感じで質問してくる。 魔理沙はともかく、霊夢もそういう話題に興味がある事が少し意外だった。 「その時に屋台を気に入ってくれて、それからちょこちょこお店に顔を出してくれる様になっただけだよ」 「「へぇ~」」 二人揃って同じ相槌を打つ。 うざったいなあ…… 「じゃあ、あんたはその○○さんの事、悪く思っている訳じゃないのね?」 霊夢が少し身を乗り出し、興奮気味に聞いてくる。 「まあ、そりゃあね……私の料理も好きだって言ってくれてるし……」 「そっかそっか」 魔理沙がにやにやしながらしきりに頷いている。 絶対何か勘違いしてるだろ。 「はいはい! もうこの話終わり! 今日はもう閉めるよ!」 疲れてきたからそろそろ追い出してやろう、と声を上げた所で、のれんが掻き分けて新しいお客さんが入ってくる。 「こんばんわ」 「あ……○○! いらっしゃい!」 噂をすれば、という所か。遅い時間ではあるが、○○が来てくれた。 「ミスティア、今日はもう閉店かな?」 どうやら私の声は外まで聞こえていたらしい。 話がどの辺りから聞こえていたのかは、怖くて訊けなかった。 「ううん、まだ大丈夫だよ。いつものお酒で良い?」 徳利にお酒を注いで猪口と共に渡す。 「ありがとう、ミスティア。あの、お隣大丈夫ですか」 「どうぞー」 うちの屋台は手狭な為、客席は三人入れば一杯になってしまう。 ○○は空いていた霊夢の隣の席に、相伴を断って腰掛けた。 「ミスティア、こちらのお二人は?」 「そっか、○○二人に会うのは初めてだもんね」 先に座っていた魔理沙、霊夢を紹介する。 「私は霧雨魔理沙だ。あんたがミスティアのつがいって噂の○○かい?」 「そんな噂流された覚えはない! んで、こっちが……」 「博麗靈夢よ。里の地鎮祭とかで、顔は見た事あると思うのだけれど」 「ああ、やっぱり博麗の巫女様だったんですね。いつもお世話になってます」 「こちらこそ」 狭い客席で互いに頭を下げ合う二人。 「二人は知り合いだったの?」 「僕の仕事の関係でね。まあ、直接お話するのは今日が初めてだけど」 「ふうん」 そうだったんだ。 そういえば、○○がどんな仕事をしてるか、知らなかったな。 「どうした? やきもちか?」 手酌で並々注いだ酒を一気に煽りながら、魔理沙が口出ししてくる。 「もうその話いいから……それよか、あんた達ももう少し呑んでくでしょ?」 「○○さんが来た途端にこの反応」 「やっぱりあやしいな……」 霊夢と魔理沙が肩を寄せ、ひそひそと囁き合っている。 「……」 距離近いんだから丸聞こえだってのに…… 聞かせるつもりなのか? これ、そろそろ本気で怒っていいやつだよね!? 私が苛立ちのあまり手を震わせていると、二人が生暖かい視線を寄越して来る。 ああーーもーーーっ!! 「あんた達いい加減に……!」 「おおっとそろそろ時間なんだぜ!」 「じゃあ、後は若い二人におまかせして」 「「ごゆるりと」」 勘定を置いて早々に去っていく二人。 あんた達の方がよっぽど年下だろ、という言葉を掛ける間もなく行ってしまった。 逃げやがったな…… 「ごめんねー騒がしい連中で」 「ううん、大丈夫。面白い人達だねえ……」 状況から取り残された○○は、苦笑いを浮かべながら曖昧な感想を述べてくれた。 今日は開店直後に○○が来てくれていた。 最近は仕事の都合で来られる時間が遅かったり、誰かが乱入してきたりで二人で居る時間が取れていなかった。 久し振りに、思う存分歌おう。 ○○も今日はそれを楽しみにして来てくれている様だ。 早速いつもの酒を出しながら、歌を歌おうとしていた時、一人のお客さんが来店する。 「げ……射命丸文」 「げ、とはなんですか! 一応お客さんなんですよ!」 ぷりぷり怒りながら席に着く文。 『文々。新聞』の取材で訪れて以降、たまに顔を出してくれる常連さんの一人。 私は文字があまり読めないので記事は見ていないが、どうやら好意的な内容を書いてくれていた様である。 新聞を読んで来てくれたお客さんも居るので、感謝してはいるんだけど…… 「あなたが○○さんですね! 私は烏天狗の射命丸文と申します。お噂、聞いていますよー」 突然現れて急に名乗りだした文に混乱しながらも、自己紹介をする○○。 ああ、やっぱり。 恐らく魔理沙辺りがあることないこと吹き込んだのだろう。 瞳が「何かあるんだろ? さっさと聞かせろよ」と輝いている。 「あ、一枚失礼しますね」 言うが早いか、私達二人をカメラを向ける。 「うーん、記事の表題は、『夜雀の密会!? 秘めやかに行われる真夜中のコーラスマスター』でどうでしょう!?」 「どうでしょう、って言われても、まず意味がわからない……」 来店して数分も経たない内に、場の空気を引っ掻き回し始める。 関わって良い事がある方が少ない妖怪だ。さっさとお暇願おう。 「あのー、食事されないなら帰って頂きたいのですが……」 「そんなに邪険にしないで下さいよー。ちゃんと頂きますって」 とりあえず、と言いながら酒と八目鰻の蒲焼と筑前煮を注文する文。 「どうぞ」 酒を徳利へ移し、文の前へと置く。 「ありがとうございます。それで~、実際の所、お二人はどういう関係なんですか?」 手酌で酒を注ぎながら、猫を撫でる様に甘やかな声で訊いてくる。 どういうって言われても、屋台の店主とお客さんとしか説明しようがない。 っていうか、今鰻焼いてんだから話しかけないでよ 「じゃあ○○さんにお聞きします。ミスティアさんの事、どのように思ってらっしゃいますか?」 文は私から視線を外し、隣の席に座っている○○へと体を向ける。 黙り込んでしまった私に見切りをつけ、○○に矛先を向けた様だ。 「そうだねえ……歌が上手とか」 「えーあれがですかー?」 「あれとはどういう事だよ! 失礼な天狗だな!」 「そういう事じゃなくって! ○○さんとミスティアさんはお付き合いされてるのかを訊いているんです!」 「あの質問からどうやってそれに繋がるの!?」 内容の飛躍っぷりに、思わず反応してしまう。 本人は面白そうににやにや笑っている。 どうして幻想郷の連中はこんなんばっかりなんだろう…… 「ああ、そういう事ね。お付き合いはしてないよ」 「なるほど。その辺はまだこれからって感じですね?」 「うーん。僕は誰かに好かれる様な、大層な人間じゃないからなあ」 「……」 文は何とか言質を取ろうと質問を繰り返すが、全て同じ様な答えを返されていた。 なんだよ……その言い方。 なんでそんなに、自分を貶めるんだよ。 なんか、胸の辺りが、締め付けられる感覚。 これ以上聞いていたくなかったから、調理に集中し、彼等の会話から意識を逸らす。 黙々と工程をこなしている内に、あれだけ騒がしかった文は質問を止め、押し黙っていた。 期待していた様な話が聞けなかったのかな。 少し気まずい空気が流れる中、丁度良く蒲焼が焼きあがる。 「どうぞ」 文の席に八目鰻の蒲焼を出す。 「ありがとうございます。って、あ……」 私からの助け舟に、文が心底感謝した様な声を上げる。 ただ、何故か私の顔で視線が止まっていた。 「どうかしたの?」 「いいえ……えっと、○○さん、ちょっとミスティアさん借りて良いですか?」 「えっ? いや、僕は別に大丈夫だけど……」 おでんを夢中で頬張っていた○○は、虚を突かれた様な生返事を返す。 借りるって何よ? そもそも、本人に許可取るのが一番最初でしょうが。 「じゃあ行きますよミスティアさん」 「ちょ、ちょっと」 客席を離れた文は裏側に回り込み、私の手を掴んで歩き始める。 「○○さーん、覗いたら二、三日立てない体にしますからねー」 しれっと恐ろしい事を言っている。 ○○が顔を青ざめさせて、高速で頷いているのが見えた。 理由は良くわからないが、私は文に連行される事になってしまった。 「この辺で大丈夫でしょうか」 「いきなり連れ出してなんなんだよ、もう」 文に連れて来られたのは、屋台から一分程歩いた所にある木の下。 こんな所に連れてきて何をするつもりなんだろうか。 「ミスティアさん、顔、すごい事になってますよ」 こんなんなってますと、両手の人差し指で、自分の左右の瞼を思いっきり引き下げている。 「どうしたの? 何か嫌な事でもあった?」 「それこっちの台詞ですよ!! そうじゃなくて、ミスティアさん、○○さんの事好きじゃないんですか?」 「だからなんで皆そういう風にしたがるかなあ……」 「茶化してるんじゃないです。真面目に訊いてます」 普段の様子からは想像もつかない様な、真剣な表情。 そんな顔されたら、こっちもちゃんと答えなきゃいけないじゃん…… 「えっと、正直な所、良くわからないよ……」 出会い方も普通とはかけ離れていたし。 「○○と一緒に居ると楽しいよ。でも、それが好きって事になるのかは、よくわかんないかな……」 私の言葉を聞いた文は、 「……はぁ」 表情にありったけの呆れを含ませながら、溜息を吐きやがった。 「何だよ! 真面目に答えたのに!!」 「全く二人揃ってそんなんだから進展しないんですよ!」 謝る所か逆に怒られる始末。 理不尽だ! 「いいですか良く聞いて下さい!? ○○さんはあなたにベタ惚れです。ほんっとどうしようもない位にあなたの事が大好きです!」 「はあぁっっ!? あんたが作ったあの最悪の流れから、どうしてその答えに行き着くんだよ!」 「あれ程わっかりやすい人間久しぶり見ましたよ。自分は駄目だから~とか言っていたのは、 あなたの事が好きだけど自分からは言い出せないからあの様に言っているだけです」 「ええと……」 「自分から言い出す勇気がないからって、あんな遠回しに好意を伝えるなんて。全く最近の人間は意気地がありませんね」 「あの……」 「あなたに関しては……まあ、浮いた話は今までもなさそうですし、気が付かなくても仕方がないでしょうね」 「失礼だな!」 「事実でしょう」 「む……」 「そんな事はどうでも良いです。ただ、彼に関しては、意気地がない以外にも何かしら事情はありそうですね」 「そうなの?」 「彼の話ちゃんと聞いてました? 彼、あなたの事こちらが引く位に褒めてましたよ」 そうだったのか。私が作業に集中して耳を塞いでいた時、そんな話になってたんだ。 「本人に聴こえる様な状況で周りが引く位に褒めちぎる事はできるのに、好意を伝える事はできない、というのは少しおかしいです」 「え、なんで?」 「一概に言う事はできませんけど、普通は相手が自分の事を褒めてくれたら、その人は自分の事を悪く思っていないって考えますよね?」 「うんうん」 「つまり、褒めるという事は、相手への好意の発露と捉える事ができます」 「ほうほう」 「これをさっきの○○さんに当てはめると、○○さんはあなたに好意を持っていると考える事ができますよね?」 「うん……」 「ここが要点になるんですが、あなたへの好意をあなたが聞こえる状況で話しているんです」 「……というと?」 「つまり、あなたに好意を抱いている事が伝わってしまっても問題ないと考えているんです」 「そうなの?」 「いい加減理解して下さいよ……」 「ごめんなさい……」 「あなたから行動して欲しいから、あえて聞こえる状況で話しているのかとも考えたんですが、それにしては言葉選びが直接的でした。 好きである事を隠さない上に、言葉にもできる。でも、相手に伝える事はしない。 ここから、何かしらあなたに好意を伝える事ができない理由を抱えている、と推測できる訳です」 「なるほど!」 そうだったのか! やっぱり幻想郷最速ともなると頭の回転も速いみたい。 「あなたが彼の事情を垣間見た時、自身の心にどんな感情が湧いてくるのか。ここ大事なんで、覚えておいた方が良いと思いますよ」 ○○の事情か…… 最初屋台に引っ張り込んだ時も、酷い顔してたもんな。 それを知った時、私は何を思うんだろう。 「まあ、何にしても彼の事が嫌いでないのなら、しっかり捕まえておく事をおすすめしますよ」 気づいた時には、どこかに姿を消してしまっているかもしれませんしね、と小声で呟く文。 文としては可能性の一つを口にしただけだったのだろうが、何故かその言葉が耳から離れなかった。 「さて、せっかくの鰻が冷めてしまいます。そろそろ戻りましょう」 伝えるべき事は伝えたと言わんばかりに、私に背中を向け、そそくさと屋台への道を戻る。 勝手に連れて来た上に自分が戻りたいから戻るって、なんて自分勝手なんだろう。 でも、これだけは言っておかなきゃ。 「ありがとう文。私、ちゃんと考えるよ」 先を歩く文に、少し大きめの声で感謝を伝えた。 「どういたしまして。でも、あなた場合下手に考えても良い事がないので、直感に従って進んだ方が良いと思いますよ」 最後まで失礼な奴だった。 「あー酷くなってきちゃったなー」 猛烈に降る雨が、屋台の屋根を強か打つ音が聴こえる。 開店した頃はぱらつく程の小雨だったが、時間を追う毎に勢いを増していった。 風は弱い為、営業に支障はないが、こんな天気じゃあお客さんも来ないだろう。 今日は早めに店じまいしようかな。 のれんを回収する為、調理場を離れる。 傘を差して客席側に回ると、人間の里方面の街道に人影が見える。 その人物は傘も差さずにふらふらとこちらへ歩いてくる。 背格好に見覚えがあるな、と認識した瞬間、身体は勝手に動いていた。 一目散に駆け寄る。 途中水溜まりを思い切り踏みつけ、靴の中に大量の水が入ってしまったが、気にしていられない。 光が失われたと錯覚してしまう様な暗闇の中を走り続け、ようやく人影の下へとたどり着く。 「○○!」 「ミスティア……?」 全身ずぶ濡れになっている○○は、私に呆けた視線を寄越して立ち止まった。 「どうしたんだよ!? こんな天気なのに傘も差さないで!」 のれんをしまう時に傘を持っていて良かった。 ○○の体を傘の下へと持ってくる。 最早下着まで濡れている様な状態だが、何もしないよりはましだろう。 足取りの覚束ない○○を引っ張って、屋台へと連れて行く。 まずは濡れた体を拭かないと。 九月も下旬となれば、朝夕は寒さを感じる程の気温になる。 このまま放って置けば、間違いなく風邪を引いてしまう。 寒い日に備えて、予め火鉢を用意しておいて良かった。 調理用のかまどから、火箸を使って木炭を移す。 熱を発した火鉢を持って、急いで客席へ。 「○○、服脱いで」 「……え?」 「いいから早く!」 もそもそと緩慢な動作で体を動かす。 服が水を吸って重くなっている所為か、思う様に服が脱げないみたい。 このままだと体力は奪われる一方だ。 恥かしがってなどいられない。 私は上衣の裾を掴み、勢い良く引き上げる。 ○○はされるがままに万歳の体勢を取って、どうにか脱がす事ができた。 次は、濡れた体を何とかしないと。 「はい。これで体拭いて」 大きめ手拭を手渡そうとするが、○○は手を出してこない。 ただ、呆けた様に私を見つめている。 生気の感じられない瞳に、初めて会った時の事を思い出す。 せっかく、元気になってきたのに。 一向に動こうとしない○○に痺れを切らし、私は手拭を使って彼の頭を拭う。 体には力が入っていない様で、まるで抵抗が感じられない。 頭を拭き終え、顔を拭い、上半身へ。 一通り拭き終えるまで、彼は一切の言葉を発しなかった。 調理台へと戻り、自身の防寒用として常備している小さい毛布を取り出して、客席へと戻る。 毛布を○○の上半身に巻き付ける。 とりあえずこんなもんか。 さすがに下半身は、自分で何とかして貰おう。 「どうしたの○○? 何かあったの?」 ○○の隣に腰掛け、正面から顔を見て問い掛ける。 「家族が、いなくなっちゃったんだ」 「え?」 「仕事クビになって、実家に帰ったら、もう帰ってくるなって」 「……」 「まともに仕事もできない様な人間は、もう必要ないって事なのかな」 「そんなこと……!」 ○○の瞳から、はらはらと涙が零れる。 その姿を見た瞬間、私の意識は熱病に浮かされた様な感覚に陥った。 両手で○○の頬を挟み、自分の胸へと引き寄せる。 抵抗はない。 額を私の胸に寄せた後、両腕を頭へと回し、しっかりと抱き締める。 なんでこんな事してるんだろう。 自分が取った行動に対して、理由をうまく説明する事ができない。 ただ、この瞬間、○○を離してはいけない様な、そんな気がしただけだ。 今はまだ、それでいい。 ○○がこの場から消えてしまわない様に、自身の手で捕まえていられれば、それで。 「……くっ」 私の胸の中で、震えながら嗚咽を漏らす。 ほんと、いっつも泣いてばかりなんだから。 泣いている○○を私が慰める。 なんか、初めて会った時とおんなじ状況になってるな。 あの時と同じ様に、彼が好きだと言ってくれた歌を歌い上げる。 いつもより曲調はおとなしめで、囁く様に。 私の歌で、どうか元気になって。 ○○を抱きしめながら、泣き止むまで、ずっと歌い続けた。 「落ち着いた?」 「ああ……ごめん。君の歌を聴いて、少し落ち着いた」 「そっか。私の歌が、少しでも役に立ったみたいで良かったよ」 思わず口をついて出た言葉。 今まで生きてきて、誰かの役に立てて嬉しいなんて、思った事あったかな。 毎日暗がりで歌を歌っていた日々。 霊夢に調伏されて以降、人間を襲わなくなったり、屋台を開店したりと生活に変化が現れた。 でも、それらも全て外圧や自分の思惑が大きな理由を占める。 誰かの為に行動を起こすという事は、今回が初めてだった。 どうして○○の為に歌いたいって思ったんだろう。 「ありがとう、ミスティア。君のお陰で、僕はまだ生きていたいって思えるよ」 瞼は腫れ、目尻に泣き跡が目立つ、酷い笑顔。 そうか。 私は○○の事、守ってあげたいんだ。。 彼に仇なす全ての障害から、守ってあげたい。 ○○には、ずっと笑っていて欲しい。 これが、好きって事なのかな? 確信は持てないが、恐らくそれに近い何かなんだろう。 漠然と、そう思えた。 「あ……」 うるさい程に響いていた雨音が聴こえなくなっている。 歌うのに夢中で気が付かなかったが、雨はもう上がっている様だ。 のれんを掻き分けて外へ。 厚く垂れ込めていた雨雲はどこかへと去り、空には大きな月が浮かんでいる。 明日は満月だっけ。 辺りに雲はなく、この調子なら明日は最高の月見日和となりそう。 そうだ、せっかくだから…… 妙案を思いつく。 これで○○元気出るかも、と考えると、つい表情が綻んでしまう。 「どうしたの?」 そんな様子を見られたのか、○○は訝しんだ顔で私を見ている。 少し、恥かしかった。 「なんでもないよ。○○、明日の夜ってお店に来られる?」 「うん、大丈夫だと思う」 「そっか。じゃあ、明日のこの時間にお店に来て」 「わかった。でも、どうかしたの?」 「くふっ、秘密」 どうやって喜ばせてあげようかな。 明日の事を考えると、頬が緩むのを止められない。 そんな私を見て、○○は目を細めて笑っていた。 「こんばんわ、ミスティア」 「こんばんわ。ごめん、少し待たせちゃった? 」 「ううん、大丈夫。丁度来た所だよ」 約束の時間より少し早めに屋台に着いたはずなのに、○○はもう来ていた。 この手の約束事で、時間通りに来られた試しがない為、少し驚いてしまう。 ○○真面目だなあ…… 「今日はお店は休みなの?」 「うん、たまには休まないとねー」 私の屋台は基本的に定休日がない。 やりたければ休みなしで営業するし、面倒だったら休む、という感じだ。 趣味でやってるようなものだし、周りから文句を言われた事もないのでそのままにしている。 「今日は○○に私のとっておきを見せたげる!」 「とっておき? 何だろう、宝物とか?」 「ふふっ、まだ内緒。じゃあ、早速行こう?」 「わかった」 二人で夜の街道を進む。 並んでみて、○○とは身長が頭二つ分も違う事に気がついた。 話す時は、自然と見上げる形になる。 いつもとは違う距離感に、何故か恥ずかしくなってしまう。 道は街道を反れて鬱蒼とした森の中へ。 夜の森は多くの妖怪が活動しており、人間が一人で入ろうものなら、命の保証はできない。 そんな中でも、○○は文句一つ言わずに付いてきてくれる。 私の事、信頼してくれてるのかな。 そんな小さな事が、とても嬉しい。 「さて、そろそろかな」 木々の間を抜けると、 「……すごい」 視界の全てが、鈴蘭の花に彩られた。 月明かりに照らされた鈴蘭畑。 周囲は開けており、視界の全てが鮮やかな白と緑に覆われる。 花が咲き乱れた春に見つけて、幻想的な風景に心を奪われて以来、度々訪れている。 まさに私のとっておきである。 まあ、別に私が管理している訳ではないんだけどね。 一応畑の主みたいな妖怪には、今日来る事は話してある。 私達が来ている最中は、人払いしておいて欲しいとお願いしているから、今この光景は私達だけのものだ。 「どうよ○○!?」 並び立っている彼の顔を見上げると、 「……」 言葉を忘れてしまった様に、目の前の光景を凝視している。 聴こえるのは、虫達の声と、風が草木を撫ぜる音だけ。 自然が作り出す、圧倒される程の美しさ。 私達はしばらくの間、ただ立ち尽くしていた。 「すごい……すごいよ! ミスティア!」 ○○は珍しく興奮しているみたい。 これだけ喜んでくれるのなら、連れて来た甲斐があったってもの。 「でしょ? でもね、まだ終わりじゃないよ?」 「え……?」 「ねえ、目、瞑って?」 顔に困惑の色を浮かべながら、恐る恐るといった様子で目を瞑る。 さて、ここからが本番だよ。 ○○の後ろへと回り込み、背中からお腹の方へと腕を回す。 抱きしめられる様な体勢になった為か、○○が何事かこちらへ振り返る。 「まだ目を開けちゃ駄目」 再び前を向いた事を確認し、 「さあ、行くよ!!」 ○○をしっかりと抱きかかえ、そのまま中空へと体を浮かせる。 さすがに男の人を一人抱えて飛ぶのはきついなあ…… でも、○○に最高の景色を見て貰う為には必要な事。 気合を入れ直し、高度を上げていく。 「みすてぃあ!?」 地面から足が離れ、上昇していく感覚に戸惑い、体を揺らす○○。 「いいから。私を信じて、目を瞑っていて?」 それきり黙って力を抜く○○。 私を信用してくれるのは嬉しいんだけど、体から力が抜けた所為で余計に重く感じる。 「ごめん、やっぱりちゃんと掴まってて!」 その言葉を聞いて、回された腕をしっかりと掴んでくれる。 前の方からは、くすくすと笑っている様な気配。 なんだよ……こっちは必死だってのに。 まあ、私の力不足が原因なんだから、○○に落ち度は一切ないんだけど…… そのまま上昇を続けて、自分が飛行できる限界に到達する。 さて、そろそろかな。 「いいよ○○。目、開けて?」 「うん……」 眼下には風にそよぐ鈴蘭畑、眼前には星空の海、頭上には満ちた月が浮かんでいる。 ○○の息を呑む音が聴こえてくるみたい。 「どう?」 「……すごい」 「さっきからすごいしか言ってないじゃん」 「うん……でも、それしか言えない位、すごい」 「もう」 言葉で飾る事をためらう程の光景。 ○○は微動だにせず、目の前を見つめ続けている。 私もここを訪れる度に見ているはずなのに、心の底が震えるのを止められない。 それほどまでに、目の前の存在は美しかった。 「月、綺麗だね」 「ああ……」 「触れちゃいそうだよ?」 「ああ……」 「もう!」 ○○は心が完全に持っていかれている様で、生返事を返すばかり。 しょうがないなあ。 「えい」 「ミスティア!?」 ○○を抱きしめていた両手の内、左手を離す。 一瞬体がふらつき、○○が不安の声を上げる。 何とか体勢を安定させ、自由になった左手で○○の右手を持ち、前へと伸ばす。 私から見て、右手が月の輪郭を支える様な位置で静止させた。 「月、触っちゃったね」 「……ああ」 私の意図を理解して、○○は輪郭を撫でる様に右手を動かす。 後ろから抱きついている為、表情を見る事はできないが、きっと笑ってくれているだろう。 「ミスティア……」 「何?」 「ありがとう」 「どういたしまして」 「最後にこんな景色が見られて、本当に良かった」 「? また連れて来てあげるよ」 「……うん。楽しみにしてるよ」 「うん。じゃあ、そろそろ降りよっか? というより、私そろそろ限界……」 「ご、ごめん!」 「大丈夫だよー。最悪○○を一回手放して、体勢立て直した後拾いに行くから」 「それだけは勘弁して欲しいかな……」 「よいしょっ……と」 ゆっくりと下降し、地上へと降り立つ。 人を抱えながら空を飛ぶのは中々に疲れる。 でも、無理してでもやって良かったと思える程の手応えがあった。 「……?」 気付いたら、○○の右手が私の左手に繋がれていた。 途中で恐くなって、傍にあった私の手を握ったのかな。 ごめんね、怖い思いさせちゃって。 地に足が着いて安心したのか、彼はその場を動かない。 私も、一心地付く為にその場を動かずに居た。 空に浮かんでいた時と同じ体勢で、しばらく時を過ごす。 よくよく考えたら、結構恥ずかしい事してるな。 飛んでいる最中は、○○を落とさない様に気を張っていた為、気にも留めなかった。 意識した途端、顔が急に熱くなってくる。 彼はまだ動く様子を見せない。 どうしよう、早く離れた方が良いのかな。 でも…… 今日の私は、思考のねじが数本外れてしまっているみたい。 恥ずかしさを自覚してなお、離れる事ができないんだから。 ○○は、嫌じゃないのかな。 繋いだままの左手に、つい力が入ってしまう。 「あ……」 私の不安を察したのか、○○は右手で強く握り返してくれた。 なんか、こういうの、すごくうれしい。 気持ちが通じ合った様な、そんな錯覚に陥ってしまう。 でも、体を離さないでいてくれるっていうのは、嫌じゃないって事だよね? そんな都合の良い解釈を根拠に、私はしばらくの間、○○の背中に引っ付いていた。 気が付けば月は中天へと差し掛かっている。 夜半を過ぎると、妖怪は活動を活発化させる。 道中の安全を考えると、そろそろ帰らないと。 「遅くなると危ないから、そろそろ帰ろ?」 「うん、わかった」 引きちぎらんばかりの勢いで後ろ髪を引かれるが、諦めて腰に回していた右手を離す。 繋いでいた左手も離そうとするが、○○の右手に強く握られていて、解く事ができない。 「○○?」 「手、繋いだまま帰っちゃ駄目かな?」 「……うん!」 私も再度左手に力を込める。 「ミスティア?」 「なに?」 「ええと……その」 「なになに? どうしたのさ」 恥ずかしそうにそっぽを向きながら、○○は何かを言おうと口をもごもごさせている。 しばらく待っても、彼はあさっての方向を向いたまま沈黙している 握られた手に力がこもる。 緊張してるのかな? こちらから問い掛けようか、と思った時、 「ええと、ごめん、なんでもない」 「な、なんだよ? 気になるじゃんか!?」 「ごめん。また今度話すよ」 なんだよー。 手をしっかり繋いでるから、恥かしくなっちゃったのかな。 ま、まあかく言う私も、余裕なんて隙間もない程緊張しているんだけどね…… しょうがないから、また今度、ゆっくり聞こうかな。 それにしても、今日は色々な発見があった。 ○○と肩を並べて歩いたり、体に触れたりすると、息が苦しくなってくる。 でも、それは嫌な感じじゃなくて、わくわくする様な、むず痒い様な…… 今まで経験した事がない感覚に戸惑いを覚えるが、それ以上にこの感覚をもっと味わいたいという欲求が湧き出でている事に驚きを感じる。 もっともっと、○○と一緒に居たい。 もっともっと、○○の事を知りたい。 もっともっと、○○に頼って欲しい。 次々と浮かんでくる想い。 ひとつひとつ叶えた先に、きっと私の気持ちが見えてくるはず。 だから、急がず、ゆっくりと進んでいこう。 まずは、文の言っていた通り、○○がどこかに行かない様にちゃんと捕まえておこうかな。 「○○、明日もお店に来られる?」 「うん、必ず行くよ」 「約束だからね?」 「ああ」 そう、これで大丈夫。 大丈夫だと、思っていたんだ。 翌日、○○は屋台に姿を現さなかった。 以降二週間が経っても、彼の消息はわからずにいる。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 里の中を当てもなくふらふらと歩く。 肩に衝撃が走る。 誰かとすれ違い様にぶつかったのか。 後ろで誰かが怒鳴っている。 怒りたいなら勝手に怒っていればいい。 あなたの事も、僕はいずれ見えなくなってしまうのだから。 目の調子が悪く、医者に診せた所、今後ほぼ間違いなく目が見えなくなると宣告された。 徐々に視界が狭まり、見える部分が段々と少なくなっていって、最後は視力を失う。 原因は不明。 同様の症状を訴えていた患者は、全員が最終的に失明したらしい。 最近目の見え方が少し悪くなり、眼鏡の作成を依頼する位のつもりだった。 予想もしていなかった展開に、思考が追い付かない。 医者からは見えなくなった後の事も考えて行動する様にと伝えられた。 何をどうすれば良いのか。 誰かに相談しようか。 上司、同僚、家族。 まだ誰にも話せていない。 話した所で、どうなるというのか。 仕事場に病気の事が露見したら、間違いなく解雇されるだろう。 家族だって……望まれない子供だった僕は、成人した後、すぐに家を追い出された。 普通に帰省したって歓迎されないのに、病気の話なんてしたらそれこそ勘当されるかも知れない。 どうして僕なんだろうか。 僕が何をしたっていうんだ…… やり場のない怒りは、やがて悲しみへと変わっていく。 鼻の奥に刺々しい違和感、視界が涙に濡れる。 大の男が目に涙を溜めながらふらふら歩いている姿は、さぞ滑稽に見えるだろう。 そんな被害妄想じみた思考すら浮かんでくる。 僕はただ、当てもなく歩き続けた。 「ここ、どこだろう」 気が付けば里の外へ出てしまっていた様だ。 日は沈みかけ、辺りは宵闇に包まれようとしている。 街道は続いているものの、この先は妖怪が跋扈する森へと続いている。 森へはまだ距離があるとは言え、安全の保証はされていない。 戻ろうか、とも思ったが、家に戻った所で陰鬱な思考に囚われ続けるだけだろう。 もういっそ、妖怪にでも喰われてしまおうか。 破滅的な願望が頭を過ぎり、思考能力を奪っていく。 街道沿いを歩いていると、途中で怪しげな建物がある事に気が付いた。 あれは、屋台かな。 こんな辺鄙な所に店を構えるなんて、店主は相当な酔狂者なんだろうな。 店構えからして、恐らく赤提灯だ。 今はもう、何も考えたくない。 酒を呑んで、全て忘れてしまおう。 屋台へと歩みを進める。 近付いていくと、人の声の様なものが聴こえてくる。 これは……歌? 調子っぱずれで、歌詞も理解し難いが、心に染み渡ってくる様な歌声。 聞いているだけで、心の中にわだかまっていた感情が解けていく様な、そんな歌声。 先程とは違う目的で屋台へと近付いていく。 距離が近くなる毎に、よりはっきりと聞こえてくる。 どうやら女の子が歌っている様だ。 のれんを隔てて聞き入っていると、突然歌声が止んでしまう。 終わっちゃったのかな。 もっと聴いていたかったのだが、仕方がないか。 本来の目的を達成すべく、のれんを潜ろうした時、自分の視界がぼやけている事に気が付く。 ああ、僕は今泣いているのか。 意識した所で、次々と溢れてくる涙を止める事ができなかった。 こんな顔で屋台に入るのはためらわれる。 しかし、歌声の主と、一言でも良いから話をしたかった。 そんな折、割烹着を着た少女が屋台の裏手側から歩いてきた。 彼女の背中には小さな羽がある。 恐らく妖怪の類いだろう。 少女は僕の顔を見て静止している。 どうしていいかわからないと、顔に書いてある様な表情だ。 まあ、号泣している成人男性と遭遇したら、普通驚くよな…… この少女が歌を歌っていたのかな。 このまま何も言わないと、追い返されてしまうだろう。 声を掛けないと。 「さっきの歌は君が歌っていたの?」 「う、うん」 こちらの質問に、おっかなびっくりという様子で答えてくれる。 どんな表情をしていいのかわからなかったのか、顔は半笑い。 視線は外されている。 店の前をうろつく怪しげな男に、前置きもなしに質問をされたら、誰でもそんな表情になるだろう。 「そうなんだ……」 恐らく不審がられている。 それでも僕は、彼女に伝えたかった。 あの歌声が、もう一度聞きたい。 あの歌声を聴き続ける事ができるのであれば、この目と引き換えにと言われても、きっと後悔しないだろう。 思いを言葉にしようと試みるが、出てくるのは涙ばかり。 「……くっ……ひっく」 「!!?」 ついには嗚咽さえ漏れる始末。 彼女もこちらを凝視して、瞳には驚きの色を浮かべている。 少女を前にして大人の男が声を上げて泣いている姿は、さぞ情けなく見えるだろう。 でも、どんなに情けなくてもいいから、早く、彼女に、伝えないと…… 喉から声を絞り出そうとした時、 「あの……とりあえず、座らない?」 彼女の方から、手を差し伸べてくれた。 彼女の表情は相変わらず半笑いだったが、相手に対する思いやりが、確かに存在していたと思う。 少なくとも、僕は感じる事ができたんだ。 その後屋台で酒や料理をご馳走になり、歌も存分に聴かせて貰う事ができた。 今後も是非店に来て欲しいとも言ってくれた。 これからもあの歌声が聴けると思うと心が弾む様だ。 しかし、一つ気掛かりがあった。 妖怪である彼女の歌を聴くと、鳥目になってしまうらしい。 僕の場合は病気で視野が狭まっている為か、歌を聴く前後で目の見え方はほとんど変わらなかった。 彼女にはまだ病気の事を伝えていない。 酒を受け取り損ねた時も、彼女は自分の歌で視野が狭まっている所為だと思った様だ。 問題なのは、彼女の歌の能力が、病気の進行に影響があるかどうか。 僕は彼女の歌が原因で進行が早まったとしても構わないと考えている。 しかし、向こうが僕の思いを納得するとは限らない。 もし彼女が僕の病気の事を知ってしまったら、もう歌を歌ってくれないかもしれない。 僕が相手の立場だったら、少なくとも歌う事をためらうと思う。 彼女の歌は、最早僕にとって生きる希望と言って差し支えない。 それが聴けなくなってしまうのは、僕の精神に悪影響を及ぼすだろう。 この件は保留にしておこう。 いつか、必ず伝えられる時が来るはず。 僕は、この時問題を先延ばしにした事を、後に後悔する事となる。 当初考えていたものとは、別の理由を伴って。 それから、僕はミスティアの屋台に通い続けた。 本当なら毎日でも行きたい所だが、幾ら商売とは言えさすがに迷惑だろうと思い止まっている。 それに、自分の目の状態を考えると、少しでも蓄えは残しておいた方が良い。 無理にならない程度に通う様自制していた。 この数週間、ミスティアを通して色々な人と出会う事ができた。 何の能力もないただの人間である僕にとって、妖怪と話す事ができたのは非常に貴重な経験だ。 様々の人達と言葉を交わすのと平行して、ミスティアとも沢山の話ができた。 彼女の素敵な所を、知る事ができた。 日に日に彼女の事を考える時間が長くなる。 同時に、彼女に隠し事をしているという罪悪感が大きくなる。 ただ、罪悪感以上に心に引っ掛かる何かが存在していた。 恐らく、僕はミスティアに対して特別な想いを抱いているのだろう。 そういった経験は少なかった為、明確な答えは出なかったが、僕の心は間違いなくミスティアに惹かれていた。 いっそ想いを伝えてしまおうか、と毎日の様に考える。 しかし、もし断られた時、僕はどうなってしまうのか。 目の病気を抱えた上に、ミスティアという心の支えまで失ってしまったらと考えると、先に進む事ができない。 じゃあ、僕の想いを受入れてくれた場合は? もしそうなったとしても、僕の目は近い将来見えなくなる。 その時、彼女はどう思うだろうか。 それでも共にあってくれるのか、拒絶されるのか。 それがわからないから、恐い。 出会った時から先延ばしにしていた問題に、こんな形で苛まれるなんて。 当初は考えもしなかった。 目が見えなくなる時がわかれば、覚悟が決まるかも知れないとも考える。 心の弱さを病気で埋め合わせ様とする自分に、愚かしさを覚えた。 ああ、ミスティアの歌が聞きたい。 今日も僕は、屋台へと赴く。 止まる事なく近づく刻限から、目を背ける為に。 今日、僕は大事なものを二つ失った。 一つは仕事。 ついに病気の事が露見した。 切っ掛けは日々の積み重ねだった。 視界の狭窄は、日常生活に少なくない影響を及ぼす。 小さな違和感も積み重なれば大きな歪みへと変化する。 不審に思った上司から問い詰められ、ついに白状する事となった。 その後、経営者へと報告が行き、即日解雇となった。 上司は猶予を頂ける様に進言してくれたが、却下された。 一ヶ月近く隠匿していた事が、悪質であるという理由で。 僕は反論する気も起きなかった。 ただ、僕を心配してくれた上司、同僚に対して申し訳なかった。 隠し事をしていた僕に対して、最後まで優しくしてくれた。 もしかしたら同情も含まれていたのかもしれない。 それでも、嬉しかったんだ。 もう一つは家族。 仕事を解雇され、収入の当てがなくなった僕は、実家へと戻る事に決めた。 僕を追い出した母も、事情を話せば家に置いてくれるかもしれない。 距離を取った事で、母も心境が変化している可能性もある。 職場での皆の優しさが、僕の気を大きくさせていた。 そんな浅はかな思惑は、鮮やかなまでに一蹴される。 門戸を叩くと母親が出てきて、こちらの話を聞くまでもなく、勘当を言い渡される。 何とか事情を説明しようと声を上げるが、無情にも戸は閉められる。 数時間粘ったが、二度と戸は開けられる事はなかった。 目的も当てもなく里を彷徨う。 思考が全く働かない。 意識は朦朧とし、これが夢であると言われても疑いなく受入れられる様な浮遊感。 しかし、門扉を叩き続けて腫れ上がった右手の鈍痛が、現実である事を痛切に訴えていた。 事実上崩壊していた家族関係に、明確な答えが提示されただけ。 傍から見れば、その様にしか映らないだろう。 僕としても、もう家族に未練はないつもりでいた。 拒絶される事も、想定していたはずだった。 ただ、そんなものは単なる虚勢でしかなかった事を、今更になって思い知らされた。 気が付いたら、全身が濡れていた。 どうやら雨が強く降っているらしい。 辺りは暗く、豪雨も相まって、一寸先も見えない。 視力を失ってしまったと、錯覚してしまう程に。 どこをどう歩いているのかもわからない状態。 それでも、進むべき道は、体が覚えている。 一つの想いを胸に、ただ歩き続ける。 暗闇の中でぼんやりと光る、その場所へと。 「○○! 「ミスティア……?」 「どうしたんだよ!? こんな天気なのに傘も差さないで!」 ああ、そうだ。 僕にはまだ、生きる理由がある。 慌てた様子で僕の腕を引っ張るミスティアを瞳に映しながら、僕はただ、涙を流していた。 目の前に広がる満点の星、風に揺れる鈴蘭、視界に入りきらない程の大きな満月。 昨日見せて貰った光景は、夢に見てしまう程、僕の記憶に焼き付いた。 最後に素敵なものが見られて良かった。 そんな僕の意識に同調するかの様に、僕の視力は失われた。 目の前に広がるのは、光すら届かない純粋な闇。 昨日ミスティアと別れて帰路に着き、布団に入って就寝したはずだが、視覚情報が全く入ってこず、どこに居るのかもわからない。 「結局、打ち明けられなかったな」 胸に湧き上がる罪悪感と後悔。 最後まで隠し事をしたまま、この時を迎えてしまった。 もう、会う事はできないのだろうか。 でも、今更会って何を伝えるというのだ。 仕事はない、生活の当てもない、目も見えない。 こんな自分に好きだと言われた所で、ミスティアとしても困るだけだろう。 このまま、死ぬまでじっとしていよう。 そうすれば、誰に迷惑を掛ける事もない。 全身から力を抜く。 もう意識が戻らない様願いながら、眠りに就こうとした時、 「○○、明日もお店に来られる?」 「うん、必ず行くよ」 「約束だからね?」 「ああ」 彼女との最後のやりとりが、脳裏を掠めた。 そうか、今日、店に顔出す約束してたんだった。 必ず行くと答えた時の、彼女の嬉しそうな顔。 あの笑顔を、僕は今、裏切ろうとしている。 「ミスティア……」 彼女と出会ってからの出来事が、頭の中で再生される。 その中で、彼女はいつも、僕に向かって笑いかけてくれていた。 あの笑顔を、僕自らが壊すのか。 そんな事、 「許されるはずがない……」 僕は何の為に生きていた? 目が見えなくなると宣告され、仕事を失い、家族にも見放された僕は、何に希望を見出していた? 全てに絶望していた僕を、心配して、元気付けて、寄り添ってくれたのは、一体誰だ? 「ミスティア……!」 このまま全てを諦めて死んでしまえば、彼女に対して不実極まりない。 生きなければ。 地面を這いつくばってでも、泥を啜ってでも。 僕を救おうとしてくれた彼女に、申し訳が立たない。 霞がかっていた思考が、急速に明瞭になっていく。 これからを生きる算段をつけると同時に、ミスティアに会いに行く手段を考える。 会って、今まで助けてくれた礼を言って…… そして、ミスティアに、想いを伝えなければ。 方針が決まった瞬間、体が動いていた。 布団から這いずり出て、周辺を手探りしながら玄関へと向かう。 「誰か……誰か、居ませんか!?」 ミスティアに会いに行く。 たとえどんなに時間が掛かっても、どんなに辛い思いをする事になったとしても、必ず。 僕は、これから為すべき行動を頭に描きながら、大声で助けを求めた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ○○が店に顔を出さなくなって二週間が経った。 始めのうちは、何か都合が悪くなって来られなくなったのかと思っていたけど、時が経つに連れて不安が増していく。 来店するお客さんに知り合いがいないか聞いてみても、色好い返事は帰って来ない。 必ず行くよって、言ってたのに。 ○○の性格から考えると、その場だけ調子を合わせたとは考え辛い。 知り合ってからの期間は短いが、人となりについては理解しているつもりだった。 やっぱり、何かあったんだ。 そう結論付けた私は、自ら行動を起こす。 翌日、太陽が空に顔を出した頃合いを見計らって、私は○○を探し始める。 普段であれば眠りに就いている時間帯。 しかし、○○がどこで何をしているのかわからない以上、早い時間から行動した方が良いと考えた。 睡眠不足で力が入らない体を無理矢理動かし、朝靄の立ち込める空へと飛び立つ。 人間の里には実質出入り禁止になっている。 姿を見られるわけにはいかないから、高い位置からの目視しか探す方法はない。 見つけられる可能性が限りなく低い事は承知している。 それでも、このまま不安を抱えたまま生活するよりかは、行動を起こした方がましだ。 「○○、今どこに居るの?」 空高くから里を見下ろしながら、祈る様な言葉が唇から漏れ出ていた。 捜索を始めてから一週間。 人間が活発に活動する時間帯を中心に探すものの、それらしい影すら確認できない。 夜になれば高度を下げて探す事ができるが、出歩く人間自体が少なくなる。 成果は全く上がっていない。 今日も何の手がかりも見つからないまま、夜を迎えていた。 「少し休もうかな……」 細長く頼りない光を発する月の下、人家の屋根を借りて体を休める。 やっぱり、無理だったのかな。 空から探すのが難しい事位理解はしていた。 里に潜り込んで探す事も考えたが、人間に見つからずに探すのは困難だろう。 もし妖怪である事が露見すれば、何をされるかわからない。 どうしよう。 朝早く棲家を出て、一日中飛び回り、夜遅くに帰る生活を繰り返す。 それだけで、自分の体にも少なくない疲労が溜まっていた。 どうしてこんな思いをしてまで、○○を探してるのかな。 彼との関係は、あくまで屋台の店主と常連さん。 こんな血眼になって捜す程の関係性ではないはず。 お店に顔を出してくれると約束はしたけど、強制ではない。 ○○にも事情があるだろうから、少し位顔を出せない時期があってもおかしくはない。 だから、わざわざ辛い思いをしてまで探しに出なくても良いんじゃないかな? もしかしたら明日にでもひょっこり顔を出すかもしれないし。 この一週間は屋台も営業していないから、入れ違いになってる可能性もある。 当てもなく探したって、見つからなければ意味はない。 だったら、普通にお店を営業して、待っている方が賢明なはず。 十月半ばの涼やかな夜風が、私の頭を冷やしていく。 一人で勝手に盛り上がって、騒ぎ立てて、無駄な事しちゃったな。 今日はもう帰ろう。 そんで、明日はゆっくり休んで、明後日から屋台を再開して…… 頭の中で明日からの行動を考える。 よし、じゃあ今日は帰ろう。 帰ろう。 早く……帰ろう。 早く…… 早く…… 「早く……○○に会いたいよ……」 頭ではこんな事しても意味がないって、無駄だってわかってるのに。 心が、全く言う事を聞かない。 早く、○○に会いたい。 会って、顔を見て、何でもいいから、話したい。 ○○声が、聴きたいんだ。 会えなくなってもう三週間も経っている。 妖怪の永い永い生涯からすれば、一瞬とも言える時間。 だけど、今まで過ごした時の中で、最も長く感じられた時間だった。 ○○と過ごした日々を思い浮かべる。 尋常な雰囲気でなかった出会い。 守ってあげたいと思った笑顔。 約束を破られた時の衝撃。 時を追う毎に増してくる焦燥。 そして、会いたくなる気持ち。 自己主張する様に脈動する心臓。 瞼の裏が熱くなる感覚。 そうか、 これが、 「好きって事なんだね……」 私の頬に、涙が一筋伝っていった。 ○○の捜索は諦められない。 でも、このまま闇雲に探し続けていても、体力を消耗するだけだ。 何か、次の手を考えないと。 そんな事を考えていた折、どこからか弦を爪弾く様な音が聴こえてくる。 音は対面の建物から聴こえてくる。 どうやら酒場の出し物として演奏をしている様だ。 独特の調子に合わせ、歌声が聞こえてくる。 「そうか、歌だ」 ○○が好きだと言ってくれた私の歌。 歌が聴こえれば、どこに居ても私を見つけてくれるかもしれない。 歌を、歌おう。 里の敷地内で歌うなんて、自らの存在を喧伝する様なものだ。 恐らく、霊夢の耳にも届いて、また私を調伏しに来るだろう。 それでも、もうこの方法しか、私には残されていなかった。 だるさを訴える体に鞭を打ち、勢い良く空へ飛び立つ。 なるべく広い範囲に聴こえる様に、思い切り息を吸い込んで下腹部に力を込める。 今日は月明かりが穏やかだから、星が良く見える。 あの人に届く様祈りを込めながら、私は空に向かって声を張り上げた。 「とぅいんくーとぅいんくーりーるすたー」 ○○、聴こえてる? 「はうあーわんどゅーわっとゅーあー」 もし聴こえているなら、顔を見せに来て? 「あっぷあーばぶだ、をるどそぉはーい」 ここから私は、歌い続けているから。 「らいかーだいめん、いんだーすかーい」 想いを声に託し、星空へ祈り、願う。 「とぅいんくーとぅいんくーりーるすたー」 届くと信じて、この空に歌声を響かせる。 「はうあーわんどゅーわっとゅーあー」 あなたに聴こえるまで。 人間の里で歌を歌い始めてから数日。 予想していたよりも早く、事態が動き始めた。 早朝、棲家から出た私を、霊夢が尋ねてきた。 「おはようミスティア」 「おはよう。こんな朝早くにどうかしたの?」 用件なんて聞かなくてもわかっている。 恐らく里から苦情が入ったのだろう。 「あなた、夜に人間の里で歌を歌っているのは事実なの?」 前置きなしに問い質される。 まあ予想はしていたし、驚く事でもない。 ただ、思っていたより早く来られちゃったから困ったものだ。 まだ、○○がどこにいるかわかってないのに。 「沈黙は肯定と受け取るわよ」 終わらない夜の騒動以来見ていなかった、巫女としての一面。 声の調子は普段と変わらないのに、恫喝されている様な恐怖を覚える。 交戦もやむなし、かな。 私がどんなに頑張った所で、霊夢を退ける事はできない。 ここで下手に逆らって怪我をしたら、○○の捜索に遅れが生じる。 ならば、事情を話して、霊夢に見逃して貰う様頼んだ方が賢明だ。 「聞いて! ○○が最近店に顔を出さなくなったの!」 「それと里で歌う事に何の関係が?」 表情を全く変えずに切り捨てられる。 霊夢は両手に針と札を大量に握り締め、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。 何だよ! まるで私がしょうもない言い訳をしようとしてるみたいじゃん! 「だから聞いてってば!!」 おっかない顔をしてこちらへと向かってくる霊夢を何とか宥める為、私は大声で説明を始めた。 「なるほどね。それで歌を」 説明する事十数分、霊夢はようやく矛を納めてくれた。 辺りは木々が倒れ、危険を察知して逃げ出した動物達の阿鼻叫喚が木霊している。 私自身は何とか無傷で切り抜けられた 抵抗しなくて本当に良かった…… 「やっとわかってくれたね……」 「まぁ、あんたの言う事だしね……」 「どうして私の評価ってそんなに低いのかな……」 「まぁ、あんただしね」 「さっきと言ってる事が変わらない上に理由になってない!」 「まぁ」 「もういいから! それより、里で歌う事、見逃して欲しいんだけど……」 「それは駄目よ」 「えぇ!」 さっきは何か事情を理解してくれていた雰囲気だったのに。 「当たり前でしょ。鳥目になったって苦情がひっきりなしに届いてんだから」 「やっぱり駄目?」 「駄目よ」 まあ、そうだよね。 でも、これからどうやって探そう。 また空から地道に探すしかないのかな。 落胆を隠せずに肩を落としていると、 「あんたが自分で探しに行かなくても、私が見つけてきてあげるわ」 思わぬ所から、救いの声がもたらされた。 「いいの!?」 「いいもなにも、人間の事は人間に任せておきなさい。というより、何であんた早く相談しないのよ?」 「だって……自分の事は、自分でやらないと……」 「変な所真面目なのね……あんたみたいに群れをなさない妖怪は、誰かに助けて貰うっていう感覚が理解できないのかしら」 「そうなの?」 「そうなの。だから、あんたはここで待ってなさい」 「私も行きたい!」 「あんた話聞いてたの? あんたが里でどんな目にあっても、私は助けられないんだから」 「でも……」 「あんたの身に何かあったら、○○さんだって心配するわよ」 「……わかった」 「わかったのなら、大人しく待ってなさいな」 「うん。でも、ここじゃなくて屋台の方で待ってても良い?」 「里に近づかないのならどこでもいいわ。見つけたら、屋台に連れて行けばいいのね?」 「うん!」 「今日中に見つかるかはわからないわ。二、三日猶予を頂戴。あと、夜はさすがに探せないから、 陽が暮れてしばらくしたら棲家に帰りなさい」 「うん。ありがとう、霊夢」 「大人しくしてなさいよ」 そう言い残して、霊夢は人間の里方面へ飛び立っていく。 霊夢に助けて貰おうなんて、今まで誰かを頼った事がなかったから、全く思いつかなかった。 頼りにできる相手がいるっていうのは、とっても素敵な事なんだね。 胸の中に感じた事のない暖かさを抱きながら、私は霊夢が飛び去った方向を見つめ続けていた。 夜になった。 私は屋台の前に椅子を引っ張り出してきて、二人が来るのを待つ。 霊夢に捜索を依頼してから半日、未だ姿を現していない。 今日はもう無理なのかな。 そろそろ帰ろうか考えている時、 「待たせたわね」 「!!」 声が聴こえて振り向くと、霊夢が誰かの手を引いて歩いて来ていた。 「霊夢!」 思わず声を挙げながら全速力で近づく。 あの手を引かれている男の人……○○だ! 良かった、無事だったんだ。 彼は相変わらず顔を俯けながら、霊夢と共にゆっくりと近づいてくる。 まず何を話そうかな。 私との約束破った事、謝ってもらわないと。 それから、それから…… 頭の中に次々と話したい事が浮かんでくる。 久し振りに会える期待感で、心がどうにかなってしまいそうだった。 「止まりなさい!!」 「……え?」 もう少しで顔が見られる、という距離に差し掛かった所で、霊夢に静止させられる。 聞いた事もない様な、大声で。 霊夢は○○を守る様に、私と○○の間に立ち塞がっていた。 「どうしたんだよ……○○と話がしたいんだ」 「落ち着きなさいミスティア」 霊夢は理由を説明せず、ただ私を諭すばかり。 どうして邪魔するんだよ! ○○が目の前に居るってのに!! 苛立ちを隠せない私に対し、霊夢は冷静に話し掛けてくる。 「いい、ミスティア? あなたはそこから動いては駄目よ」 「なんでさ!?」 「理由は今から○○さんが説明するわ」 そうだ、○○は…… 霊夢の後ろに佇んでいる彼は、ただ前を向くばかりで、こちらとは目も合わせ様としない。 どうして……? 彼と過ごした日々が、頭の中に次々浮かんでくる。 もう、顔も見たくないって事なのかな……? 全身を駆け巡る血が、急速に冷やされていく感覚。 私は、その場から一歩も動けなくなっていた。 こちらの様子を見て、飛び出して来ないと判断したのか、霊夢が○○の前から退く。 そのまま、私を一瞥した後空へと飛び立って行った。 残されたのは、立ちすくんでいた私と、眼前を見据えるのみの○○。 どうすればいいんだろう。 私から話しかける事は、できそうもなかった。 「ミスティア……」 止まってしまった様にも感じられた時間を、○○が動かした。 「ミスティア……そこに居るの?」 ○○は私の居る方向から、少しずれた所を見ながら、呼びかけている。 どういう……事? 「ミスティア?」 「○○!!」 背中に氷柱を差し込まれた様な寒気が走る。 先程とは、別の理由を持って。 「ミスティア、聞いて欲しい」 「うん」 早鐘を打つ心臓。 彼の状態から、一つの推測が頭を過ぎる。 どうか、間違いであっていて。 「ミスティア、僕は今、君の姿を見る事ができない」 ああ、やっぱり。 「目が、見えなくなったんだ」 私の予想は、裏切られなかった。 「初めて会った時から、僕は目の病に冒されていた」 出会った当初を思い出す。 「視界が徐々に狭まっていく病気で、やがて光を失ってしまう」 酒を渡した時、鳥目になっていただけではなく、元々目が悪かったからなんだ。 「大事な事を隠していて、本当にごめん……」 頭を垂れて、一心不乱に謝罪する○○。 驚愕、怒り、落胆、安心。 私の胸に様々な感情が去来する。 それら全てに答えを出す為に、どうしても聞いておきたい事があった。 「ねえ、○○」 「……うん」 「○○は、どうして私に病気の事、話してくれなかったの?」 「君に、迷惑を掛けたくなかった」 その言葉を聞いて、 「なんだよ……」 心を押し止めていた堰が壊れ、感情が奔流となって溢れ出した。 「なんだよ……○○にとって、私はその程度の存在だったって事?」 「ミスティア?」 「心の内も見せられない、大事な事も打ち明けられない、上辺だけの付き合いだったって事なの?」 「ミスティア、違うんだ」 「違わないじゃん!! 屋台に通ってくれたのも、料理とか歌とかが目的で、私の事なんて別になんとも思ってなかったって事なんでしょ? なんだよそれ……私、一人で舞い上がって馬鹿みたいじゃん……」 「ミスティア、聞いほしい」 「聞きたくないよ!! ○○は私の歌が聴きたいだけだったんでしょ!? お店で話をしたり、一緒にお月見に行った事も、 全部、全部、迷惑だったんでしょ!? 「聞いてくれ!! ミスティア!!」 「っ……」 初めて聞いた○○の大声に、私は身を竦ませてしまう。 「ミスティア、僕は、君の事が好きだ」 「ふえええぇっっ!!?」 話の流れをぶった切る告白に、変な声を上げてしまう。 先程まで私を支配していた黒い感情達が、一瞬でどっかへ行ってしまった。 「君の歌声が本当に好きだったんだ。毎日聞いていたい程に」 「う……うん」 「でも、君の歌を聞くと鳥目になってしまう。もしかしたら、僕の目に悪影響を及ぼすかも知れない」 「……」 「それでも、僕は聞いていたかったんだ。君の歌が聞けるのなら、僕の目がどうなっても構わないと思った」 「そんなの……!」 「そう。君は優しいから、僕の目の病気を知ったら歌ってくれなくなると思って、言えなかったんだ」 「あ……」 そうだったんだ。 もし病気の事がわかっていたら、影響があるかも知れないと考えて、歌う事を拒否していただろう。 「伝えるのが遅くなってしまって、本当にごめん、ミスティア」 ○○は私の方へ一歩一歩、確かな足取りで近づいてくる。 まるで、私の姿が見えているかの様に。 「目が見えなくなった時、ようやく気が付く事ができたんだ。君が支えてくれたお陰で、僕は生きる意味を見出せた」 顔がはっきり伺える距離まで近づいてくる。 その瞳は、蝋燭の様に白く濁っていた。 「僕は、君の事が好きだ。多分、初めて君の歌を聞いた時から、ずっと」 「~~~~~っっ!!」 目の前ではっきりと好意を伝えられる。 あまりの嬉しさと恥かしさに、脳が沸騰しそうだ。 でも、一つだけ気がかりがあった。 「約束……明日もお店来るって」 月見をした後に交わしたささやかな約束。 そして、その後の音信不通。 会えなくなってからの三週間、どうしていたのかが知りたかった。 「店に顔出すって約束、破ったままにしてごめん。翌朝起きたら目が見えなくなっていて…… それから、身体障害者の寄り合いで職業訓練を受けてるんだ。ここで手に職を付けてから会おうって思っていたんだけど、 時間が掛かってしまって……」 ○○は私から二歩程の距離を開けた所で静止した。 改めて顔を見る。 こけた頬、窪んだ目。 表情は、初めて出会った時のそれより酷くなっていた。 目が見えなくなった事や、私との約束を破ってしまった事が、彼の精神に大きな重圧を与えてしまったのだろうか。 また、こんな顔にさせちゃった。 守ってあげたいって、ずっと笑っていて欲しいって、思っていたのに。 ○○を守る為には、どうすれば良いんだろう。 私が傍に居て支えてあげれば良い? それは当然だ。もう彼の事を離すなんて考えられない。 それだけでいいの? まだ足りない。この世の全ての害悪、苦痛から、彼を遠ざける必要がある。 それを叶える為には? …… 私の中に一つの案が思い浮かぶ。 でも、これを実現させれば、○○の自由を全て奪う事になる。 しかし、私にはそれしか思い浮かばない。 ○○は私の事を好きだって言ってくれた。 だから、私を、受入れてくれるはず。 「○○!」 「ミスティア!?」 地面を強く蹴り、離れていた距離を一気に詰める。 棒立ちになっていた○○を、正面から抱きすくめた。 「私、○○を攫う」 「えぇっ!?」 「○○はもう何もしなくて良い。私が生活の全てを面倒見る。お金だって私が稼ぐ。だから、○○は私の傍で、ずっと笑っていて?」 二人分の食い扶持位なら、私の屋台で稼げる。 目が見えなくたって、その分は私が支える。 決して不自由はさせない。 「おねがい、だから……」 「……」 「お願いだから……私の傍に居てよ!!」 「……ごめん、その提案は受入れられない」 「っ……」 明確な拒絶の意思。 心臓が鷲掴みされた様な狭窄感を覚える。 「どう、して……?」 絶望と焦燥が血流と共に全身へと広がる中で、何とか最低限の問いを言葉に出せた。 「ミスティア、僕は、君と並んで歩きたいんだ」 「……」 「しっかり働いて、お金稼いで、君と一緒に暮らしたい。胸を張って、一緒に生きてるんだって、実感したいんだ」 「でも、それじゃあまた辛い目に遭っちゃう……」 「それは仕方がない事だと思ってる」 「だって○○、今まで酷い目にいっぱい遭ってきたんだよ? もう、○○の悲しそうな顔、見たくないよ……」 「辛い事は沢山あったけど、そのお陰で今ミスティアとこうしていられるんだと思うんだ」 ○○の両手が私の背中に回される。 抱きしめた事は数あれど、抱きしめられる事は初めてな気がする。 「目が見えなくなった時は本当に絶望したよ。でも、その時一番最初に頭に浮かんだのが君の事だったんだ。 君に想いを伝える為に、もしかしたら必要な事だったのかなって、今はそう思えるよ」 「何でそんな所だけ前向きなんだよ……泣き虫の癖に」 「そんな事もあったね」 「なんだよ! ○○の馬鹿! バカ! ヘタレ!!」 「全部事実だから返し様がないな……」 さっきまでの緊迫した雰囲気が、嘘の様に霧散していた。 背中に回されていた両手が肩に移動し、体が離される。 緊張した様な面持ちで、○○が口を開いた。 「ミスティア、ありがとう。君が居てくれたから、僕は今生きていられる」 「うん……」 「改めて、ミスティア、君の事が好きだ。伝えるのが遅くなってしまって、本当にごめん」 「本当だよ……」 「で、ミスティア。その……」 私の肩を掴んでいる○○の両手が、微かに震えている。 「どうかしたの?」 「えっと、君の答えが聞きたいんだけど……」 そっか、まだ言葉で伝えてなかったんだっけ。 というより、ここまでしてるのに気が付かないのかなあ…… 「○○、鈍感さん?」 「ミスティアには言われたくないかなあ」 「なにそれ、失礼だよ」 「ごめんって。それで……」 「もう……」 いっつも暗い顔しててすぐ泣いて、大事な事言わないで一人で抱え込んで、女の子待たせて。 素直で優しくて、私の歌を誰よりも愛してくれる、そんなあなたが。 「大好きだよ。○○」 「……ありがとう」 目尻に涙を湛えながら微笑み、再び私の頭を胸に抱いてくれる。 やっぱり、泣き虫なのは変わんないね。 「そろそろ時間よ」 背後から聞こえてきた声に、思わず高速で振り向く。 「うえぇ、霊夢!? いつからそこに?」 私の後ろから五歩程離れた距離に、霊夢がしかめっ面で仁王立ちしていた。 「最初っから近くに居たわよ。もとより、あんたが変な事しない様に見張ってるつもりだったしね」 じゃああんな紛らわしい去り方しないで欲しいかな…… 「はい。霊夢さん、色々ありがとうございました」 何事もない様に返答する○○。 気付いてたのなら教えてくれればいいのに…… 「いいのよ。これで厄介事が一つ片付いたのなら、安いものだわ」 「あの……」 「ミスティア、あんたいつまで引っ付いてるの? ○○さん里に送らなきゃいけないんだから、さっさと離れなさい」 「えぇっ!? ○○、一緒に住みたいって言ってくれたじゃん!」 「それは仕事が見つかった後の話だよ……」 「そうなのっ!?」 「話の流れからわかるでしょ……」 霊夢が辛辣な横槍を入れてくる。 折角会えたのに、もうお別れしなくちゃいけないなんて。 そんなの、辛すぎるよ。 「やだ」 「え?」 「いーーやーーだっ!」 私を離そうとする○○の背中に手を回し、頑として抗議する。 「もう○○と離れるのやだ! ずっと一緒にいる!!」 ○○の胸に頭を擦り付けると、くすぐったそうに笑う声が頭上から聞こえてくる。 なんだよ! 笑い事じゃあないんだよ! 「いい加減にしなさい」 「あいたぁっ!!?」 後頭部に鈍い衝撃。 あまりの激痛に背中に回していた腕を離してしまう。 「○○さんの話ちゃんと聞いてたの? 仕事が見つかったら一緒に暮らせるんだから、我慢なさい」 「わがまま言ったのは謝るけど、さすがに握り拳で殴るのは酷いと思う……」 「馬鹿は殴って言う事聞かせろって、昔の人も言っていたわ」 「昔の人乱暴だな……あと馬鹿じゃないし!」 「大丈夫?」 霊夢に涙目で抗議をしていると、見かねた○○が頭を擦ってくれる。 殴られた場所とは違う位置だったけど、それだけで痛みが引いていく様に感じた。 「大丈夫だよ! うへへー」 ○○に慰めてもらっただけで、殴られた怒りも霧散してしまう。 やっぱり私馬鹿なのかな? 「さて、そろそろ行くわよ」 霊夢は○○の傍まで近づき、彼の腕を掴む。 「はい」 「……」 「じゃあ、またね、ミスティア。必ず迎えに行くから」 霊夢に引かれて歩き出そうとする○○。 もう、いっちゃうの? でも、また会いに来てくれるって約束してくれたから、我慢しないと。 相反する思考がせめぎ合う中で、私の手は反射的に彼の上着の裾を掴んでしまう。 「ミスティア……」 「ごめん、ごめんね○○。わかってるよ、次はちゃんと来てくれるってわかってる。でもね……」 また、会えなくなってしまったら。 今度こそ、本当に攫ってしまうかもしれない。 「大丈夫だよ」 「ふぁ……」 裾を掴んでいた私の手を優しく握り、もう片方の手で頭を撫ぜてくれる。 「大丈夫」 ○○の両目は、まるで見えているかの様に、しっかりと私の瞳を捉えていた。 たとえ視力を失ってしまっても、私を見つめてくれているんだ。 心にわだかまっていた不安が、ほろほろと解けていく様な感覚。 強張っていた私の手から、自然に力が抜ける。 「わかった、待ってるからね、○○」 「うん。必ず迎えに行くよ」 霊夢に手を引かれて、ゆっくりと歩き出す。 私は、二人の姿が見えなくなるまで、その場に立ち続けていた。 「ありがとうございましたー」 今日最後のお客さんを見送って、店を閉める。 「ううっ、今日寒いなー」 辺りに林立する木々は徐々に葉を減らし、本格的な寒さの到来を予感させる。 身に染みる様な寒さは、屋台の営業からすれば大歓迎だ。 あったかい料理と酒を求めて、赤提灯に引き寄せられる季節。 本来だったらこれからが繁盛する時間帯だ。 稼ぎの事を考えたら営業した方がもちろん良いんだけど、今日はもう閉店。 私の屋台は、二月程前から営業時間を変更している。 理由はごくごく個人的なものだったので、お客さんの反応が恐かったが、事情を説明したら皆あっさり納得してくれた。 寧ろ、屋台なんてやっている暇じゃないとか言われる始末。 食い扶持も稼がなきゃいけないし、好きでやってるからやめないけどね。 食器を片付け、余った食材を保存用の器に移し替える。 これは今日の晩御飯かなあ。 店内の清掃をしていると、のれんを分けて人が入ってくる。 あ、のれんしまい忘れてた。 「ごめんなさい、今日もう終わりなんだー」 声を掛けた後、入ってきた人影に顔を向けると、 「こんばんわ」 「なんだよー帰ってきたらちゃんと声掛けてよー」 私の最愛の人が、嬉しそうに笑っていた。 私達が再会した日以降も、○○は里の寄り合いで職業訓練を続けた。 週に二回程霊夢や魔理沙に連れられ、私の店を訪れる生活が一月程続き、ようやく仕事を得る事ができた。 目が見えない感覚への慣れや、新しい仕事を覚える事に苦労していた様だけど、お店に来た時はいつも楽しそうにしてくれていた。 やっぱり、○○は笑っている顔が一番かわいい。 その事を本人に伝えたら、真っ赤になって俯いてしまった。 そんな所もかわいいんだけど。 これを伝えたら顔を見せてくれなくなりそうなので、黙っている。 晴れて手に職を付けた○○は、約束どおり私の棲家で一緒に生活する事になった。 誰かと一緒に暮らすのは初めてなので、中々思い通りに行かない事は多い。 目が見えない人に対して、生活面で何を手伝う必要があるかについても、まだまだ試行錯誤が必要だ。 それでも、私は今、すごく楽しい。 一人では知る事のできなかったもの、体験できなかったことに溢れる毎日。 何より、○○といつも一緒に居られる事が、嬉しくてたまらない。 ○○は、どう思っているのかな? 少し、聞いてみたくなる。 「ねえ、お仕事今日はどうだった?」 「うん、今日はね――」 はちきれそうな笑顔で、今日あった出来事を話してくれる。 私は、お店の掃除をしながら耳を傾ける。 こういうの、良いな。 これは、○○が頑張って仕事を勝ち取ったから、実現しているんだ。 もし私のわがままで彼を連れ去っていたら…… 恐らく、彼の笑顔を二度と見る事ができなくなっていたと思う。 ○○がどう思っているかなんて、こんな笑顔みたら、聞かなくてもわかっちゃうね。 「そうだ○○、帰ってきたらまずなんて言うんだっけ?」 「え? えっと……何か、恥かしいな」 「いいから! 早く、ね?」 「ただいま、ミスティア」 「おかえりなさい、○○」 軒先に隠れて見えないけれど、今日は綺麗な弓張月が空に浮かんでいる。 私は、満ちない月に祈りを捧げる。 こんな素敵な日々が、いつまでも続きますように。